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    知っておくべき“制御盤の安全”に関わる基礎知識

    本記事では制御盤に関わる作業者、技術者が知っておくべき制御盤の安全に関わる基礎知識を紹介します。設備を使用するユーザーのためのみならず、自分の身を守るためにも安全の知識は必須です。これから制御盤に関わっていく人はもちろんのこと、既に経験や知識がある技術者でも復習だと思って是非ともご覧ください。

    制御盤とは?

    制御盤とは、機械や設備を電力でコントロールするための電子機器や部品を収納した箱のことです。プラント、工場などの産業設備、ビルやマンションなどの建造物の管理に至るまで、幅広く活用されています。どの分野の制御盤にも共通して言えることは、機械や設備を稼働させるために盤内で大きな電流を扱っているということです。つまりそれは、誤った作業や運用、設計が行われていると大事故に繋がる恐れがあるということを意味しています。

    制御盤の安全確保の重要性

     制御盤が原因で起きる事故は大きく分けて2つあります。感電と火災です。日本で起こる労働災害の内、感電による災害は約0.1%程度と少数です。感電の可能性がある部分には危険防止措置が取られていることが多いため、発生件数自体は多くありません。しかし、発生した際の死亡率は他の災害に比べても非常に高く、対策を誤ると非常に危険です。また制御盤の火災は、設備や工場そのものに燃え広がる可能性が高く、プラントなどの引火性の物質を扱っている設備ならなおさら危険です。したがって、制御盤を扱う技術者にとって安全に関する知識は極めて重要だと言えます。

    安全に関する設備・機器

     制御盤の安全確保に関わる代表的な機器についてその役割や種類を解説します。

    インターロック

    インターロックの役割

    インターロックとは、一定の条件を満たさないと他の動作ができなくなるロック機構のことです。例えば、エレベーターのドアが空いたまま動作してしまうと危険なことは、想像にたやすいでしょう。そのような動作が起こらないのは、ドアが開いた状態では動作出来ないようにインターロックが掛けられているからです。制御盤においても、作業者・利用者の安全を守るためのインターロックを用いた安全装置・安全機構が重要となります。

    インターロックの種類

    ドアスイッチ

     ドアの開閉を検知し、開いているときには設備の動作を停止するスイッチです。ドア状態の検知に加えて、施錠・開錠に電気信号が必要な製品を使用すれば、ドア内の安全が確保された場合のみ開錠できます。制御盤の扉などの場合、感電を防ぐためにブレーカーOFF時にしか開錠しないような仕組みが必要です。

    安全プラグ

    安全プラグもドアスイッチと同様にドア状態の監視に使用します。ドアが閉まっている場合のみプラグが接続できるように設置し、ドアを開けるためにプラグを抜くと駆動電源が遮断され作業者の安全を確保します。ドアスイッチと違い、ドアを開くためには人が意思をもってプラグを抜く必要があります。制御盤の扉などでは、ドアの上部にプラグを仕込み、ドアを開けた瞬間に強制的に動力遮断を行うという安全対策が実施されることもあります。

    非常停止ボタン

    非常停止ボタンを作動させることで設備を緊急停止します。設備は停止していますが、点検作業時はこれだけでは安全とは言い切れません。それは、点検者とは別の作業者が非常停止を解除して、稼働を再開してしまう可能性があるからです。このような事態を防ぐために、点検作業中は非常停止ボタンを解除できないように南京錠を取り付けます。そうすることで、点検者は設備の停止を確実なものとして、点検作業に取り組めます。このように他の作業者に安全回路を操作されないように鍵をかけることをロックアウトといいます。

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    アース線

    アース線の役割

    アース線は地面と電気回路を繋ぎ込むことで、万が一電流が漏れてしまった場合に、その電流を地面に流す役割を果たしています。通常、電流が漏れ出した機器を人が触った場合、電流が人体に伝わりより低電位に流れるため、感電してしまいます。しかし、アース線が地面に接続(接地)されていれば、電流は人よりも電気が流れやすいアース線を通って地面へと伝わります。結果として、人が感電するのを防ぐことができるのです。

    アース線の種類

    アース線は系統別に3種類に分けることができます。種類によってアースに対する考え方と、漏電を検知して電気を遮断するために使う装置が異なっています。

    TT 接地系統

    日本およびイタリアの一部で使用されている方式です。電源系統のうち一か所を直接アースへと接続します。さらに露出導電性部分となる機器からの接地を、電源系統とは別に、独立してアースに接地させます。日本では分電盤の中にある漏電遮断器が電源系統の接地を担い、エアコンや洗濯機などから伸びる緑色のアース線が機器からの接地となります。

    TN 接地系統

    主に欧米で使われている方式で、雷サージに強いのが特長です。電源系統のうち一か所を直接アースへと接続します。また露出導電性部分も、電源系統の接地部分と同じ場所に接地させます。

    IT 接地系統

    地域や国を問わず、特に漏電に対する安全性が求められる電源系統において使われる方式です。電源系統も機器も、どの部分も接地されていません。電源系統を接地する場合には、地面との間に抵抗を入れます。心電図や脳波計のような医療機器、水中で使う照明やヒーター、特に安全性が求められる制御用の機器などで使われている方式です。

    アース線の注意点

    日本ではエアコンや洗濯機など一部の家電製品を除き、家庭のコンセントには通常、アース線は設置されていません。しかし海外では、一般家庭のコンセントにアース線がついている地域も多くあります。その理由には漏電を検知して電気を遮断する装置の違いのほか、一般家庭用コンセントの電圧の高さが挙げられます。日本では100Vが標準なのに対して、他のアジア諸国、ヨーロッパや中東などでは200V~240Vが一般的です。このような地域では、安全のためにコンセントにアース線用のコネクタが設置されていることがあり、アースに対する考え方や方法が大きく異なります。電気製品を輸入する際や、海外で使用する電気機器を設計する場合には、コンセントの形や電圧などの違いだけでなく、それぞれの国のアースの方式や考え方を事前に調べておく必要があります。

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    アース線の役割と種類(海外設置版)

    サーマルリレー

    サーマルリレーの役割

    サーマルリレーは熱によって動作する保護継電器です。異常電流による温度上昇を検出し電磁接触器を動作させ、電路を遮断するのがサーマルリレーの役割です。三相モーターを含む誘導電動機でよく活用されます。モーターが過負荷状態で運転すると巻線の温度が過昇します。この状態が続くと、巻線の温度は許容範囲を超え絶縁不良を起こすことになります。こういった異常電流のトラブルから電動機自体を保護するために利用されます。

    サーマルリレーの種類

    サーマルリレーは、熱を感知して動作します。熱の感知方法によって2種類に分かれます。

    バイメタル式

    バイメタル式は、金属の熱膨張を利用して物理的に接点を切り離します。電源側と負荷側の接続線にヒーター線が使われています。ヒーター線はその途中で、バイメタルにコイル状で巻かれており、異常電流が流れたときにはバイメタルを加熱します。それによりバイメタルが熱変形を起こし、接点が離れるという仕組みです。

    電子式

    電子式では、回路に流れる電流値を読み取って、許容値外の電流が流れたときに接点を切り離します。主にインバーターモーターの保護に用いられます。

    サーマルリレーの注意点

    サーマルリレーが働いた状態を、「トリップした」状態といいます。どの種類であってもサーマルトリップした状態では、リセットをしなければ再び通電させることができません。サーマルリレーのリセットを考慮して、制御盤の設計を行う必要があります。

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    サーマルリレーの選定・設定方法―過負荷から電動機を保護するために

    配線用遮断器

    配線遮断器の役割

    配線用遮断器は電路を遮断する装置です。規定を超える過電流が生じたときに電路を自動的に遮断して機器を保護するのが配線遮断器の役割です。配線用遮断器は反限時特性と呼ばれる特性を持っており、定格を超える電流の大きさによって遮断動作時間を調整できます。負荷の抵抗が変動したときや、電動機の始動時には、瞬間的に定格を超える電流が発生することがありますが、このような短時間の過負荷電流では、不用意に遮断しないような仕組みになっています。

    配線遮断器の種類

    安全ブレーカー

    小型の遮断器であり、単相100Vの場合にのみ使用できる2極1素子タイプ、その他の場合に使用する2極2素子タイプの2種類があります。主には分電盤などの分岐ブレーカーとして活用されます。

    モーターブレーカー

    モーターの焼損保護機能を持つ遮断器です。上述したサーマルリレーと役割が似ていますが、サーマルリレーはモータ自体の保護を目的としたものです。一方で、モーターブレーカーは回路全体の保護を目的としており、保護対象が異なります。

    単3中性線欠相保護付ブレーカー

    単相3線式配線において、中性線が欠相したときに過電圧を検知して瞬時に電気を遮断できる遮断器です。異なる電圧の規格となっている機器を同時に扱う際に用いられます。

    協約形ブレーカー

    電灯分電盤に用いられる遮断器です。JIS C 8201-2-1:2011による協約寸法が定められています。

    漏電遮断器

    配線用遮断器に漏電遮断機能を加えた遮断器です。漏電を感知すると、即座に回路を遮断します。電気が電路の外に漏れ出てしまう現象(漏電)を検知して遮断することで感電や火災、機器の損傷を防ぎます。

    配線遮断器の注意点

    配線用遮断器を使用する際には、取り付けと接続の向き、周囲温度による作動特性の変化、遮断器の定格電流の範囲の確認などに注意する必要があります。適切に選定し、さらに正しい状態と環境で使用することで安全を確保することができます。

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    配線用遮断器の役割と選定方法―過電流から回路を守る

    非常用電源

    非常用電源の役割

    非常用電源は、停電になった場合に備えとして機能する予備電源のことです。発電所や病院など、重要な設備や機器の制御において停電時の電源のバックアップは必須です。近年では、一般家庭向けにも蓄電池が常備されることも珍しくありません。蓄電池は停電に備え満充電を維持する必要がありますが、常に充電しておけば良いというものではなく、過充電による引火や爆発などのリスクを考慮し、充電方法を工夫する必要があります。充電方式は大きく分けて2つあります。

    充電方法の種類

    浮動充電(フロート充電)

    浮動充電は、蓄電池に対し充電回路と負荷が常に並列接続されたままの状態で充電する充電方式です。充電電源だけでなく負荷とも常に接続されているため、切り替え時にも瞬断することがなく、切り替え回路が不要です。負荷に一時的な大電流(突入電流・始動電流)が流れた場合も、蓄電池がクッションとしての役割を果たし電源は過電流とならないという点でも、安全性に優れているといえます。

    しかし、浮動充電では蓄電池の最大充電電流に負荷電流を加えた電源出力が必要になるため、電源に余裕が必要となります。また、停電時は充電電源にとって逆流になるため、逆流防止回路が必要です。以上のように電源設計に注意しなければならない点はあるものの、瞬断が発生しないという大きな利点があるため、多くの非常用電源・予備電源で浮動充電方式が採用されています。

    トリクル充電

    トリクル充電では、常に微小な電流によって充電を続けることで満充電を維持します。電流が微小なため過充電の障害が起こりません。一度満充電となると蓄電池の充放電がないため、蓄電池の負担が少ないという特徴もあります。ただし、微小電流による充電という特性から、放電した状態から満充電になるまでには時間を要します。また、停電時には供給電源の切り替えのための回路が必要です。電源の切り替え時にはリレー回路による切り替えが行われますが、リレーの接点が動く瞬間に物理的な瞬断が発生します。そのためトリクル充電は、瞬断による影響のないような場所で使われます。

    非常用電源の注意点

    多くの設備や機器で安定性に優れた浮動充電が採用されていますが、蓄電池の品質維持のためには均等充電という処置が必要です。均等充電を行う際、充電中または充電後は電解液の補水が必要で、水素ガスの充満を防止するため換気を行う必要もあります。均等充電は定期的に実施する必要がありますが、適切な頻度や充電出力は蓄電池の設計によって異なります。そのため、メーカー推奨値を確認して充電方法を決定します。近年では、鉛蓄電池でも制御弁式のシール型蓄電池が使われることも多く、こういったタイプの場合、均等充電は不要です。均等充電が不要なことで、充電回路の簡略化ができ、同時に保守管理の負担も軽減できます。

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    地絡過電圧継電器

    地絡過電圧継電器の役割

    地絡事故が起こった場合に回路を保護する継電器です。継電器とは、電流や電圧が急激な変化をしたときに電路を遮断して電気回路を保護する働きをするもので、そのなかでも地絡過電圧継電器とは「地面に電気が流れてしまい電圧に大きな変化があったことを検出して作動する継電器」を言います。よくOVGR(Over Voltage Ground Relays)と表記されます。太陽光発電設備の分野で使用されることが多い機器です。

    地絡過電圧継電器の補助器具

    地絡過電圧継電器が単体で使われることはほとんどなく、次のような機器とセットで使われます。

    地絡方向継電器(DGR)

    地絡過電圧継電器は過電圧のみを検出して作動します。このとき、過電圧が発生しているのが電源側なのか負荷側なのかは判別しません。そのため、対象の太陽光発電設備内だけでなく、外部で発生した過電圧、いわゆる「もらい事故」により作動してしまう可能性もあります。そこで、地絡方向継電器(DGR)も併用されるのが一般的です。地絡方向継電器は地絡電流だけでなく電圧の位相も同時に検出するため、事故電流の方向が違う場合には作動しません。地絡方向継電器を負荷側に設置することにより、他の場所からの過電圧はシャットアウトします。これによりもらい事故を防いだうえで、地絡過電圧継電器で対象設備内の過電圧を検出して電路を遮断、誤作動することなく回線を保護することが可能になります。

    パワーコンディショナー(PCS)

    パワーコンディショナーは、パワコン、またはPVインバータとも呼ばれます。太陽光パネルで発電した電力を家庭で使用可能な電力になるように、直流から交流へと変換する装置です。同時に系統連系保護機能も有しており、異常検出時に出力を遮断する役割も持っています。パワーコンディショナーも太陽光発電設備には欠かせない機器であり、地絡過電圧継電器とともに使われています。

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    安全対策

    制御盤を設計、設置する上で考慮すべき安全対策について解説します。

    等電位化

    接地を行う箇所の電位差をなくす処置です。近い場所や同じ建物で使われている接地線同士の電位差をなくしたり、接地点となる地面で電位差が生じないようにしたりするために行われます。

    等電位化の目的は、電流の回り込みの防止です。電流は電位の高いところから低いところへと流れるため、接地の電位差が生じた場合に本来流れるべきでない場所に向かって流れる恐れがあります。そうなると絶縁破壊を起こす原因となり、機器の故障だけでなく漏電による周囲への影響も引き起こす可能性があり、危険です。

    このような接地の電位差が生じることによって起こる事故を防ぐため、各設置の電位を等しくするような処理をするのが等電位化です。

    等電位化の方法

    等電位化のために行う処置として、次のような方法があります。

    接地間を直接導体で接続する方法

    各機器から接地点へと向かう接地線を並列接続する方法です。シンプルな方法ですが接続された接地は確実に等電位化されます。接続するための電線は、その各接地で使われる接地線の中で最も太いものよりさらに太いものを使います。この方法は、ノイズの発生や電流の回り込みなど問題が発生した場合は使うことができません。

    各機器にSPD(避雷器)を使う方法

    電気機器や通信機器などそれぞれの機器の接地線にSPD(避雷器)を取り付けて接地する方法です。SPDはサージ保護の役割を持ち、サージ進入時のみ短絡(ショート)するよう動作します。直接接続することのできない機器の間も等電位化が可能です。接続方法としては、SPD経由後の部分で接地線同士を接続することにより等電位化します。

    接地間用SPD(アースバランサー)を使う方法

    各機器の接地極同士を接地間用SPD(アースバランサー)で接続する方法です。接地線同士は直接接続されないため、想定外のノイズや回り込みといったトラブルを回避できます。

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    雷サージ

    雷が電柱や電線、避雷針に落ちると、非常に高い電圧の電気が電線を伝っていきます。また雷の直撃を受けなくても、近くに落雷した影響により電線に異常な誘導電流が発生する場合があります。このように、落雷により異常な電流や電圧が瞬間的に発生することを、雷サージと呼びます。電話線や電線を伝い雷サージが侵入すると、さまざまな被害が発生します。異常な電圧の電流が発生したことにより、電線が過熱して発火したり、電子機器を破損させたりすることがあります。また、近くにいた人や動物が感電するなどの被害も起こりえます。

    雷サージの対策

    一般的な雷サージ対策

    雷サージ対応の電源タップや電話線、通信ケーブル保護用の機器を使用することで対策が可能です。サージ対応のタップなどには大きく分けて2種類があり、ひとつは雷サージを吸収する素材(バリスタ)が内蔵されているもの、もうひとつがバリスタに加えて雷サージをアースに逃がす機能を備えたものです。バリスタは雷サージの規模や、発生の頻度によっては劣化して破損してしまいます。通常、バリスタ搭載製品にはバリスタの破損状況を知らせるランプなどが備え付けられていますので、破損がわかったら速やかに機器を交換しましょう。アースを備えたタップはバリスタのみのタイプに比べて高機能ですが、アースを正しく設置しなければ期待する効果が得られませんので、設置に手間がかかります。

    分電盤の雷サージ対策

    分電盤に使われる雷サージ対策用の機器は避雷器(アレスタ)やSPD(低圧用避雷機器)と呼ばれています。バリスタ、またはバリスタと同じ働きをするガス入り放電管やダイオードなどが使われ、異常な電圧がかかった際に、バイパス回路からアースへと電気を流して、盤内にある機器を保護する役割を持ちます。分電盤の内部に配置するタイプと、分電盤の隣に専用の盤を用意するタイプがあるため、設置の際には目的や使用にあわせて機器を選択するようにしましょう。

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    絶縁破壊

    絶縁体の絶縁性能が何らかの原因で破壊され、絶縁状態が保てなくなることを絶縁破壊と言います。電気回路等の保護を目的とし、導体と導体の間に絶縁体を設置してそれらを隔離しています。しかし、限界値以上の電圧が絶縁体に流れたとき、その電気抵抗は急激に低下し、本来絶縁されるべき箇所に想定されない大電流が流れることになります。このような現象が起きると機器の損傷だけでなく火災や思わぬ事故の原因となり、大きな被害につながる可能性があります。

    絶縁破壊の対策

    設計者のミスによる絶縁破壊の予防策

    絶縁破壊は、設計上想定していた電圧より実際に流れる電圧が大きかったという設計ミスが原因で発生することがあります。このような設計上のミスをなくすため、設計する際にチェックすべき項目をまとめたチェックシートを作っておくと、効率的な確認作業が可能です。

    経年劣化における絶縁体の損傷による絶縁破壊の予防策

    機器は使用するうちに必ず劣化していき絶縁抵抗が低くなり、電気が漏れやすくなります。経年劣化による絶縁破壊防止には、適切な点検が重要です。点検用のチェックシートを作成し、適切な定期点検を行いましょう。また定期点検だけに頼らず、日常的にもできるだけチェックや清掃を行うと、異常の早期発見につながります。

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    短絡電流

    電気回路において、二つの点が低いインピーダンスで電気的に接続されてしまった状態を短絡、ショートといいます。このときに流れる電流が短絡電流です。一般的に短絡電流は許容電流を超える大きな電流となります。短絡電流が発生することで、設計上で想定されている許容電流を超えるため、短絡電流が流れる機器やケーブルは異常発熱します。これにより電気回路や接続されている機器が焼損する可能性があり、発熱が大きい場合には発火により大規模な火災につながる恐れもあります。短絡電流は大きな事故につながる可能性のある、非常に危険なものです。

    短絡電流の対策

    遮断器による保護

    遮断器によって電路を遮断する方法です。遮断器の定格遮断容量以下の短絡電流であれば、この方法で保護できます。しかし、定格を超える短絡電流が流れた場合には遮断器が作動しない場合があり、短絡状態が継続してしまいます。この場合は、さらに一段回上位の遮断器で遮断することになりますが、遮断される回路も同時に一段階広範囲になります。

    限流ヒューズによる保護

    短絡は大きな衝撃や発熱を伴うことが多く、電線や遮断器に大きな負担をかけます。これを未然に食い止めるのが限流ヒューズです。限流ヒューズは短絡電流が最大になる前に溶断することで電路を遮断するため、各部に大きな負担となる前に電路から切り離すことができます。保護協調を考慮した場合、変圧器やコンデンサごとに限流ヒューズを設け停電範囲を狭く抑えるよう設計する場合もあります。

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    作業の注意点

    制御盤の組立、据付作業において安全上、注意すべき点について説明します。

    アンカーボルト(制御盤の据付)

    アンカーボルトは建物の壁や床、外壁、舗装された地面などに機器や設備などを固定する際に使用するボルトのことで、制御盤の設置・固定の際にも使われます。床や壁面からおねじが突出した状態を作り、機器や設備の固定用穴を通してナットで固定します。

    アンカーボルトの種類

    埋設アンカー

    あらかじめ定めた場所に、コンクリートを流し込む前または流し込んで固まる前にボルトを設置し、コンクリートの固化によって固定するアンカーボルトです。抜け防止のためL字型やJ字型のボルトが埋め込まれます。

    ケミカルアンカー

    施工してあるコンクリートにアンカーボルトより大きな径の穴を開け、接着材によってアンカーボルトを固定する方法です。カートリッジの接着剤を専用ガンによって注入してボルトを設置する方法や、薬液の封入されたカプセルを穴に設置しアンカーボルトで突き破る方法などがあります。

    メカニカルアンカー

    機械的な構造によって固定するアンカーボルトです。先割れのアウターに芯棒を打ち込むものが主流となっています。ボルトサイズごとに指定されたサイズの穴をコンクリートに開け、アウターをセットし芯棒を打ち込みます。これにより、穴の奥側で先割れ部分が広がりコンクリートに固定されます。

    アンカーボルトの注意点

    制御盤をアンカーボルトで固定する場合、耐震計算を基準として、必要なボルトの太さ長さ、本数、施工方法などを決めていきます。十分な埋め込みの深さや本数がなければ、引抜き方向の力に耐えられず抜ける恐れもあります。また、制御盤の重量によるせん断方向の力に対し、必要な本数とボルト太さも確保しなければなりません。安全で確実な固定のため、制御盤を固定する際には耐震計算を行い、必要なアンカーボルトの太さや長さ、本数や取り付け位置を求めるようにしましょう。

    制御盤の設置・固定に必要なアンカーボルトの種類と計算方法

    PLCの組み込み(制御盤の組立)

    PLCとは、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller)の略称です。もともとは、リレーの組み合わせによってつくられていた制御回路(シーケンス回路)を、内部にプログラムすることでモジュール化した制御装置がPLCです。大部分の制御盤にはPLCが組み込まれています。

    PLCを制御盤に組み込むときの注意点

    PLCを制御盤内に収めるときには、次のような点について再確認しましょう。

    サイズとレイアウト

    PLCは年々小型化が進んでいます。その一方で、制御盤に求められる仕様が複雑化しているのが現状です。PLCは入出力点数が多いものほど物理的なサイズも大きくなる傾向にあります。制御盤の複雑化に伴いPLCの入出力点数も必要数が増えるため、盤内に設置する際のサイズに注意しましょう。

    熱対策

    PLCの使用温度は、内部の素子部品の使用温度の関係から5℃~40℃程度が適しているとされています。ただし近年の小型化が進む制御盤では、盤外に対し10℃以上の温度上昇が見られることがあります。このとき、外気温が30℃に近ければすでに許容範囲の限界に達していることになります。そこで、PLCは盤内の熱気がたまりやすい盤の上部や発熱量の大きい機器の上には設置しないようにしましょう。

    耐久性

    PLCにはメーカーの想定する有寿命部品が複数使われています。PLCはこれらを定期的に交換しながら、使い続けていくことになります。しかしPLCも機械である以上故障は発生し、機器そのものの寿命も必ずやってきます。できる限り寿命を伸ばすため、しっかりとしたメンテナンス計画を立て実行しましょう。

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    まとめ

    電気という目には見えない危険を扱う制御盤だからこそ、安全に関わる機器や注意事項が多くあります。本記事では紹介しきれなかった制御盤の安全に関する知識もあります。「安全は1日にしてならず」という言葉があるように、安全確保のためには継続的な研鑽と情報収集を欠かさないようにしましょう。



    技術ライブラリ1
    規格に適合したスイッチギア及びコントロールギアの製作 IEC61439の適用
    技術ライブラリ1 規格に適合したスイッチギア及びコントロールギアの製作 IEC61439の適用



    規格の企画_海外向け制御盤製作に役立つIEC 61439とULの基礎知識
    海外向け制御盤製作に役立つ 『IEC 61439』 と 『UL』 の基礎知識