1. HOME
    2. /
    3. 制御盤
    4. /
    5. アース線の役割と種類(海外設置版)

    アース線の役割と種類(海外設置版)

    漏電による感電から人体を守ったり、定格以上の電流が流れたことによる破損や火災から機器を守ったりする役割を持つアース線。電気の安全に使用するためには欠かすことができないものですが、国によって規格や仕組みが少しずつ異なっているのも特徴です。海外におけるアースについて紹介します。

    海外におけるアース線

    日本ではエアコンや洗濯機など一部の家電製品を除き、家庭のコンセントには通常、アース線は設置されていません。しかし海外では、一般家庭のコンセントにアース線がついている地域も多くあります。その理由には漏電を察知して電気を遮断する装置の違いのほか、一般家庭用コンセントの電圧の高さが挙げられます。日本では100Vが標準なのに対して、他のアジア諸国、ヨーロッパや中東などでは200V~240Vが一般的です。このような地域では、安全のためにすべてのコンセントにアース線用のコネクタが設置されていることがあります。旅行や出張で海外に滞在する際、コンセントの形に注意を払わなくてはならないのは、このためです。

    アース線の種類

    日本と海外で設置されるアース線をみてみると、系統別に3種類に分けることができます。種類によってアースに対する考え方と、漏電を検知して電気を遮断するために使う装置が異なっています。

    系統は2文字のアルファベットによって示されます。1文字目は電源系統とアース(大地)へのつなぎ方、2文字目は露出導電性部分(設備が故障したときに人への感電の恐れがある部分)とアース(大地)へのつなぎ方を表します。

    TN 接地系統

    主に欧米で使われている方式で、雷サージに強いのが特長です。

    電源系統のうち一か所を直接アースへと接続します。また露出導電性部分も、電源系統の接地部分と同じ場所に接地させます。TN接地系統は、単相3線式という配電方法で用いられる中性線とのつなぎ方によってTN-C、TN-S 、TN-C-Sの3種類に分類されます。TN-Cは中性線とアースに使う保護導体を共有するもの。TN-Sは中性線と保護導体が別になっているもの。そしてTN-C-Sは中性線の一部を保護導体として使用するものです。

    過電流保護機器を使用し、絶縁不良発生時には自動的に電源を遮断します。

    電線の基礎知識・規格と欧州の制御盤製造動向

    TT 接地系統

    日本およびイタリアの一部で使用されている方式です。

    電源系統のうち一か所を直接アースへと接続します。さらに露出導電性部分となる機器からの接地を、電源系統とは別に、独立してアースに接地させます。日本では分電盤の中にある漏電遮断器が電源系統の接地を、エアコンや洗濯機などから伸びる緑色のアース線が機器からの接地になります。

    漏電遮断器を使用します。電源の遮断は、電源系統から露出導電性部分に絶縁不良が発生したときと、電源系統と接地の間に絶縁不良発生したときに自動的に行われます。

    IT 接地系統

    地域や国を問わず、特に漏電に対する安全性が求められる電源系統において使われる方式です。

    電源系統も機器も、どの部分も接地されていません。電源系統を接地する場合には、大地との間に抵抗を入れます。心電図や脳波計のような医療機器、水中で使う照明やヒーター、特に安全性が求められる制御用の機器などで使われている方式です。

    TN方式やTT方式と異なり、漏電が起こった際に自動的に電源を遮断する装置は使用しません。絶縁不良が発生したときはアラームを出して電源遮断を促す監視機器を使ったり、機器の内部に漏電保護機器が使用されていたりします。

    まとめ

    国や地域によって、アース線に対する考え方や方法が大きく異なります。電気製品を輸入する際や、海外で使用する電気機器を設計する場合には、コンセントの形や電圧などの違いだけでなく、それぞれの国のアースの方式や考え方を事前に調べておく必要があります。

    参考:


    関連記事▼

    知っておくべき“制御盤の安全”に関わる基礎知識


    リタールの技術ライブラリ

    「規格に適合したスイッチギア及びコントロールギアの製作IEC 61439適用」
    本冊子は、新規格IEC 61439 準拠に必要な様々な対策を講じる上でのお手伝いをするために作成しました。リタール製規格適合システム製品の利用に関するご相談から貴社機器の要求設計や日常検査のご提案まで、幅広くご利用ください。
    ※新規格IEC 61439における変更点の他、「設計検証報告書」の作成方法などについて、85ページにわたって解説しています。

    Dlダウンロード