電動機を使用する制御盤には、必ず組み込まれるサーマルリレー。制御盤のなかでサーマルリレーはどのような役割を持っているのでしょうか。サーマルリレーの動作原理とリセット方法、選定や設定の注意点を解説します。
サーマルリレーは熱によって動作する保護継電器です。これがどういった目的で使われ、どのような原理で動作しているのか詳しく見てみましょう。
サーマルリレーがよく使われるのは、三相モーターに対してです。
三相モーターを含む誘導電動機は、過負荷状態で運転すると巻線の温度が過昇します。この状態が続くと、巻線の温度は許容範囲を超え絶縁不良を起こすことになります。さらに、温度の上昇が続けば、部品の焼損を招く恐れもあります。
こうしたトラブルから電動機を保護するために、異常電流による温度上昇を検出し電磁接触器を動作させ、電路を遮断するのがサーマルリレーの役割です。
電磁接触器が電気によって作動するのに対し、サーマルリレーは熱によって作動します。この熱による作動原理において重要なのが、内部のヒーター線とバイメタルです。
サーマルリレーの内部では、電源側と負荷側の接続線にヒーター線が使われています。ヒーター線はその途中で、バイメタルにコイル状で巻かれていて、異常電流が流れたときにはヒーター線が発熱するようになっています。熱はバイメタルへと伝導し、バイメタルが湾曲することによって接点が離れる(オープンする)のがサーマルリレーの作動原理です。
熱によって接点が作動する機械的な機構をヒートエレメントと言い、バイメタルとヒートエレメントによって電路の開閉をするのがサーマルリレーの仕組みなのです。
一般的にはサーマルリレーが作動するための接点を電磁接触器のコイル端子に接続し、サーマルリレーが作動することで電磁接触器の接点が作動するように使われます。サーマルリレーの接点を大きな電流が直接流れるわけではありません。
では、実際にサーマルリレーが作動したときにはどのような対応をしたらいいのでしょうか。
日本電機工業会規格JEM 1357では、サーマルリレーの作動条件を次のように規格しています。
規格に適合しているものであれば、このような条件でサーマルリレーは働きます。そこで注意しなければならないのが、始動電流の大きさと時間です。電動機の始動時には、必ず大きな電流が発生し、過負荷状態となります。この始動電流が発生している時間は、電路遮断が起こらないように整定する必要があります。
サーマルリレーが働いた状態を、「トリップした」状態といいます。トリップした場合は、サーマルリレーのリセットをしなければ再び通電させることができません。
サーマルリレーのリセット方式には次の二つがあります。
この二つの方式を選択できるように設計されているものもあります。使う環境・条件によってどちらを使うか検討しましょう。
サーマルリレーを選ぶ際には、接続する負荷の定格電流をもとにします。一般的には、負荷の定格電流に対し105%までは動作せず、120%で動作するようなものを選びます。
また、電動機の回転が物理的要因で止められてしまった場合のような高負荷・大電流発生時には2~30秒で保護動作する電流範囲のものを選びましょう。
範囲に見合ったサーマルリレーを選定した後は、サーマルリレーについているダイヤルをドライバーで回すことにより、整定電流の調節ができます。
また、始動電流が長時間発生するような大型の電動機を使用する場合には、別の方法を考えなければなりません。通常のサーマルリレーでは、電動機が始動するたびにサーマルリレーが働いてしまうからです。この場合は次のような方法があります。
このような方法で、大型の電動機にもサーマルリレーを使い過負荷から保護することができます。
サーマルリレーの動作原理を簡単に解説し、リセットの仕方、サーマルリレーの選定と設定の仕方に触れました。
過負荷や拘束による損傷から電動機を保護するサーマルリレーは、電動機を使用する機器の制御盤に必要不可欠とも言える存在です。ミストリップや不動作による損傷事故が起こらないよう、使用する電動機の定格電流に適したサーマルリレーを選定し、適切な設定にしましょう。
参考:
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