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    制御盤の設置・固定に必要なアンカーボルトの種類と計算方法

    コンクリートの壁や床に機器や設備を固定する際に活躍するアンカーボルトは、制御盤の設置でも使われます。このとき、制御盤の取り付けにどれくらいのサイズのアンカーボルトを何本使えばいいのでしょうか。アンカーボルトの役割と種類や規格、取り付けに際しての必要数の計算方法などをご紹介します。


    アンカーボルトの特徴と役割

    アンカーボルトとはどういった場所に使われるものなのでしょうか。その用途と目的からご紹介します。

    構造物に機器や設備を固定する

    アンカーボルトは建物の壁や床、外壁、舗装された地面などに機器や設備などを固定する際に使用するボルトのことです。床や壁面からおねじが突出した状態を作り、機器や設備の固定用穴を通してナットで固定します。アンカーボルトに対し、めねじを埋め込むものはアンカーナットまたはただアンカーと呼ばれます。

    アンカーボルトは施工が容易で壁面に機器を取り付ける際に位置合わせしやすく、施工と固定に関してメリットがあります。一方、アンカーナットは機器を取り外した際にも床や壁に突起物が残らない点がメリットです。

    アンカーボルトは壁面の床から離れた高さにものを固定する場合や、転倒・位置ズレ防止のために床に固定する場合に使われます。また、振動のある設備が移動しないようにする場合にも使われています。

    制御盤を設置・固定するときには

    アンカーボルトは制御盤の設置・固定の際にも使われます。

    壁掛けタイプのキャビネット、自立式のキャビネットどちらの場合にも、構造物に固定する場合はアンカーボルトでの取り付けが必要です。ただし、小型で軽量の樹脂製の制御盤を木造建築物の壁面や薄鋼板に取り付ける場合は、木用ビスやタッピングビスによって固定されることもあります。

    どういったアンカーボルトを何本使って固定するのかは、耐震性や保持力、ボルトや取り付け面の強度を元に計算する必要があります。

    アンカーボルトの種類と規格

    アンカーボルトにはどういった種類があり、どういった規格によって規定されているのでしょうか。

    固定方式によるアンカーボルトの分類

    アンカーボルトは固定や施工の方法によって次のように分類されます。

    • 埋設アンカー
      あらかじめ定めた場所に、コンクリートを流し込む前または流し込んで固まる前にボルトを設置し、コンクリートの固化によって固定するアンカーボルトです。抜け防止のためL字型やJ字型のボルトが埋め込まれます。コンクリートは接合部がなく一体成型され、アンカーとの密着度も高いことから高い強度があります。建物建造時に設置場所が決まっているような大型機器の設置に使われます。
    • ケミカルアンカー
      施工してあるコンクリートにアンカーボルトより大きな径の穴を開け、接着材によってアンカーボルトを固定する方法です。カートリッジの接着剤を専用ガンによって注入してボルトを設置する方法、薬液の封入されたカプセルを穴に設置しアンカーボルトで突き破る方法などがあります。
    • メカニカルアンカー
      機械的な構造によって固定するアンカーボルトです。先割れのアウターに芯棒を打ち込むものが主流となっています。ボルトサイズごとに指定されたサイズの穴をコンクリートに開け、アウターをセットし芯棒を打ち込みます。これにより、穴の奥側で先割れ部分が広がりコンクリートに固定されます。設置が簡単で乾燥時間も不要というメリットがありますが、穴サイズが不適切、既存のコンクリートの強度不足などの原因により抜けてしまうこともあります。

    制御盤固定で使われるアンカーボルトの種類

    壁掛けタイプの制御盤固定で使われることが多いのは、メカニカルアンカーの一種で心棒打込み式アンカーです。このタイプのアンカーボルトは、すでに施工済みの壁や床に対して短時間で設置できるため多用されています。

    サイズとしては、ネジ径M12とM16のものが一般的に使用されます。ネジピッチは並目で、並目のナットなら使えますが、初期付属品のユニオンフランジが付いているナットが固定力や適正な締め付けトルクを維持する意味でも最適です。

    自立式キャビネットの場合は床への固定となるため、移設の可能性を考えアンカーナットが選択されることもあります。移設後に床から突起しないためです。

    キュービクルのような屋外設置の大きなものの場合、埋設アンカーを前施工する場合もあります。

    配電盤や制御盤で使用するキャビネットの固定について、使用するアンカーボルトの種類や本数の規格化が進んでいます。日本国内では、日本配電制御システム工業会、キャビネット工業会、日本軽装工業会などいくつかの団体が規格化に取り組んでいます。

    制御盤固定アンカーボルトの強度基準と計算方法

    制御盤をアンカーボルトで固定する場合、耐震計算を基準として、必要なボルトの太さ長さ、本数、施工方法などを決めていきます。

    耐震計算の方法は、キャビネット工業会が「施工上の注意事項」としてまとめています。

    施工上の注意事項(トラブル・対応事例)|キャビネット工業会P57

    耐震計算により十分な耐震性が確保できるかを求めるためには、次のような情報が必要です。

    • 制御盤の重心位置
    • 制御盤の重量
    • アンカーボルトの本数
    • アンカーボルト固定位置の上下左右間隔
    • アンカーボルトの軸断面積

    これらを元に、公式に当てはめてアンカーボルトが引抜きやせん断の方向に働く力に耐え得るかを求めます。計算方法は、床から離れた壁面に設置する壁掛形、床に設置する自立型、壁面と床に接する壁支持自立型の3つに分かれています。それぞれのケースに適した計算方法を選び、そこから必要な設置方法を求めます。

    制御盤の設置は基準を満たした安全な固定を

    制御盤の固定に必要なアンカーボルトの概要や種類、設置時に必要なアンカーボルトの計算方法についてご紹介しました。

    アンカーボルトは強固な固定が可能ですが、十分な埋め込みの深さや本数がなければ、引抜き方向の力に耐えられず抜ける恐れもあります。また、制御盤の重量によるせん断方向の力に対し、必要な本数とボルト太さも確保しなければなりません。安全で確実な固定のため、制御盤を固定する際には耐震計算を行い、必要なアンカーボルトの太さや長さ、本数や取り付け位置を求めるようにしましょう。

    参考:


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