制御盤は自動車や電気製品の製造ライン、金属加工機械などさまざまな機器に使われています。この制御盤製作に欠かすことができないのがPLC(プログラマブルロジックコントローラ)です。PLCとはどのような機器なのでしょう。PLCとは何か、制御盤設計にどのように関わってくるのか紹介します。
PLCは制御盤のコンパクト化に貢献する機器
PLCはどのような機器で、導入により何が実現できたのでしょう。
PLCとは
PLCとはプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller)の略称で、制御装置の一種です。リレー回路の代替装置として開発されました。PLCはスイッチやセンサなどの機器から入力信号を受け取り、事前に設定されたプログラムに従い出力機器を制御します。シーケンサと呼ばれることもありますが、これは三菱電機製PLCの商品名です。三菱電機製PLCが広く流通していることから、通称として用いられるようになりました。
PLC開発により制御盤はコンパクトに
PLCが開発される以前、制御盤はリレー回路やマイコンボードにより制御されていました。しかし、リレー回路やマイコンボードで制御盤を製造すると、回路の複雑化や大型化が進み、工場内に制御盤の設置場所が確保できない事態が生じました。そこで開発されたPLCによって、制御盤のコンパクト化が実現したのです。
制御盤へのPLC導入はコンパクト化だけでなく、メンテナンス性向上にもつながりました。制御にリレー回路やマイコンボードを用いていた時代は、先述のとおり回路が複雑化し、設計変更が大変困難でした。しかしPLC導入により、複雑な回路ではなくプログラムでの制御を実現したことで、設計変更も容易に行えるようになったのです。
PLC出力の種類。その違いは
PLCの出力にはリレー出力とトランジスタ(シンク・ソースタイプ)出力があります。その違いを説明します。
リレー出力
- 機械的な接点によりONとOFFを切り替え
- トランジスタ出力より一般的に使われることが多い
- 直流負荷でも交流負荷でもONとOFFを切り替え可能
- トランジスタ出力より定格電圧と定格電流が大きい(過大な電流発生時に接点が焼損する場合あり)
- 機械的な動作で制御するため、基本的にはトランジスタ出力より寿命が短い
トランジスタ(シンク・ソースタイプ)出力
- 半導体素子のトランジスタにより、直流負荷のONとOFFを切り替え
- 交流負荷の切り替えはできない
- リレー出力より定格電圧と定格電流が小さい(電圧はDC12~24Vが一般的、電流は数10mA程度)
- サージ電流やサージ電圧に弱い
- 動作温度がリレー出力より狭く、温度に弱い
- 高速でONとOFFの切り替えが可能
- リレー出力タイプよりコンパクトサイズ
制御盤設計におけるPLC出力の使い分け
上述のとおり、リレー出力とトランジスタ出力では長所と短所があり、設計により使い分ける必要があります。
トランジスタ出力は入力に直流負荷を使用し、コンパクトな制御盤を設計する必要がある場合、また、高速制御に適しています。しかし、電圧や電流、使用温度について、リレー出力より厳しい制限があるため、設計には注意が必要になります。
一方で、入力に交流負荷を使う場合、高温環境や大きな電圧・電流が生じる場合は、リレー回路が適しているでしょう。
リレー出力とトランジスタ出力、どちらを使うかは設計者の判断次第
以上のように、制御盤設計においてPLCは重要な機器となっています。そのためPLCの理解を深めることは、制御盤設計の能力を大きく向上させることにつながります。制御盤設計を行う際にはPLCをどのように組み込んでいくかが電気設計の大きなポイントになるでしょう。
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参考:
リタールの技術ライブラリ
「規格に適合したスイッチギア及びコントロールギアの製作IEC 61439適用」
本冊子は、新規格IEC 61439 準拠に必要な様々な対策を講じる上でのお手伝いをするために作成しました。リタール製規格適合システム製品の利用に関するご相談から貴社機器の要求設計や日常検査のご提案まで、幅広くご利用ください。
※新規格IEC 61439における変更点の他、「設計検証報告書」の作成方法などについて、85ページにわたって解説しています。