浮動充電と均等充電―安定性が求められる非常用電源の管理方法

機器や設備の非常用電源として設置されている蓄電池は、停電になった場合に備え常に充電されていなければなりません。このとき、蓄電池の充電方式にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。ここでは「浮動充電」を中心に2つの充電方式と、蓄電池の品質維持のために行う「均等充電」についてご紹介します。

蓄電池の課題

機器や設備に備えられている蓄電池にはどういった条件や機能が求められるのでしょうか。まずは、その要件と課題から考えてみましょう。

充電を維持しなければならない蓄電池の用途

例えば家庭で使う充電式の掃除機や充電式電動工具などは、充電が切れたら再度充電して使用すれば特に大きな問題はありません。

しかし蓄電池の用途によっては、例えば以下のように停電に備え満充電を維持していなければならない場合があります。

  • 発電所や変電所の操作用電源
  • 病院の非常用電源や非常灯電源
  • 防災設備の非常用電源
  • ネットワークシステムや電気機器操作用の電源

こういった場所で使われる蓄電池は、災害やトラブルの発生、メンテナンス時の非常用電源として充電されている状態を保たれていなければなりません。

また、満充電であることに加え、主電源が遮断された場合に蓄電池に供給源を切り替える機能が必要です。一時的な停電により障害が起こるような設備や機器では、電源が瞬断することなくシームレスな切り替えも求められます。

単純に充電を続けられない理由

満充電を維持するために常に充電し続けていればいいのではないかというと、そうではありません。単純に充電し続けられない理由があります。

一般的に使われている鉛バッテリーのように補水が必要な蓄電池では、過充電になると電解液が減少していき、最終的に不足します。これは、蓄電池寿命の短縮、ガス発生による引火・爆発のリスクなどを招きます。

そこで、これらの過充電のデメリットを充電の方法を工夫することで防いでいます。よく使われているのが、浮動充電とトリクル充電という2つの充電方式です。

浮動充電とトリクル充電

蓄電池の過充電によるデメリットを生じさせない、または最小限に留める2つの充電方式には、どういった特徴があるのでしょうか。

浮動充電(フロート充電)

浮動充電は、蓄電池に対し充電回路と負荷が常に並列接続されたままの状態で充電する充電方式です。フロート充電またはフローティングチャージとも呼ばれます。

充電電源だけでなく負荷とも常に接続されているため、切り替え時にも瞬断することがなく、切り替え回路が不要です。また、バッテリーは常に満充電を維持するため、鉛バッテリーの場合長寿命化します。

負荷に一時的な大電流(突入電流・始動電流)が流れた場合も、蓄電池がクッションとしての役割を果たし電源は過電流とならないという点でも、安全性に優れているといえます。

しかし、浮動充電では蓄電池の最大充電電流に負荷電流を加えた電源出力が必要になるため、電源に余裕が必要となります。また、停電時は充電電源にとって逆流になるため、逆流防止回路が必要です。

以上のように電源設計に注意しなければならない点はあるものの、瞬断が発生しないという大きな利点があるため、多くの非常用電源・予備電源で浮動充電方式が採用されています。

 

トリクル充電

トリクル充電では、常に微小な電流によって充電を続けることで満充電を維持します。電流が微小なため過充電の障害が起こりません。一度満充電となると蓄電池の充放電がないため、蓄電池の負担が少ないという特徴もあります。

ただし、微小電流による充電という特性から、放電した状態から満充電になるまでには時間を要します。また、停電時には供給電源の切り替えのための回路が必要です。

電源の切り替え時にはリレー回路による切り替えが行われますが、リレーの接点が動く瞬間に物理的な瞬断が発生します。そのためトリクル充電は、瞬断による影響のないような場所で使われます。

 

均等充電の必要性

多くの設備や機器で安定性に優れた浮動充電が採用されていますが、蓄電池の品質維持のためには均等充電という処置が必要です。

セルが直列接続された蓄電池は、浮動充電を続けることでセルごとに電圧のばらつきが発生し、電位差による循環電流が悪影響となります。このとき、セルの電位差を均一化するため、充電出力を上げることですべてのセルに対し一時的に過充電状態にします。こうすることでセルの電圧を均等にするのが均等充電です。

均等充電を行う際、充電中または充電後は電解液の補水が必要で、水素ガスの充満を防止するため換気を行う必要があります。

均等充電は定期的に実施する必要がありますが、適切な頻度や充電出力は蓄電池の設計によって異なります。そのため、メーカー推奨値を確認して充電方法を決定します。

近年では、鉛蓄電池でも制御弁式のシール型蓄電池が使われることも多く、こういったタイプの場合、均等充電は不要です。均等充電が不要なことで、充電回路の簡略化ができ、同時に保守管理の負担も軽減できます。

 

いざというときのため、浮動充電とトリクル充電、均等充電について理解しよう

蓄電池の2つの充電方式、浮動充電とトリクル充電、また均等充電の必要性についてご紹介しました。

発電所や病院など、重要な設備や機器の制御において停電時の電源のバックアップは必須です。非常用電源として使われる蓄電池は長期間使用できることと、スムーズな電源の切り替えが求められます。いざというときに蓄電池を活用するには、その代表的な充電方式である浮動充電とトリクル充電、また、蓄電池の品質維持のための均等充電についてしっかり理解しておく必要があります。

 

参考:

 

規格の企画_海外向け制御盤製作に役立つIEC 61439とULの基礎知識
海外向け制御盤製作に役立つIEC 61439とUL規格の情報を分かり易くまとめました。規格の企画(Rittal).jpg

 

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