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    量子コンピューターの現状と将来性

    コンピューターが発展した現代において、コンピューターの処理能力は重要な要素です。従来のコンピューターでは処理速度の高速化に限界がくるとされている中、注目を集めているのが量子コンピューターです。長年研究開発が進められてきましたが、未だ本格的なビジネスへの応用にまでは至っていません。本稿ではこの量子コンピューターについて、現状や課題、将来の可能性をご紹介します。 量子コンピューターの紹介 量子コンピューターとは 量子コンピューターとは量子力学の現象を情報処理技術に利用することで、複雑な計算を可能にしたコンピューターです。詳細な説明は割愛しますが、量子重ね合わせや量子もつれなど量子力学に特有の現象があり、この現象を利用することでコンピューターの並列計算を可能にしています。 従来のコンピューターとの違い 量子コンピューターと従来のコンピューターとの違いは計算速度です。従来のコンピューターでは処理速度の高速化にいつかは限界がくるとされていましたが、量子コンピューターではその限界を超える可能性が期待されています。従来のコンピューターだと膨大な時間が必要となる計算も、量子コンピューターでは短時間で解けます。計算速度にこのような差ができる理由は計算方法の違いです。従来のコンピューターは0か1のどちらかの値であらわすビットを最小単位として計算しています。一方、量子コンピューターでは0と1が重ね合わせの状態にあり、この0でも1でもあるものを量子ビットとして計算に使用しています。ビットを使用する従来のコンピューターではすべての入力に対しその都度計算が必要です。しかし、量子コンピューターは量子ビットの重なり合いの性質を利用することで、すべての入力に対し一括で計算が可能なのです。 現在の状況と今後の課題 2021年現在の状況 量子コンピューターは問題の解き方の違いにより量子ゲート方式と量子アニーリング方式の2つに大きく分けられます。さまざまな企業や研究者が研究開発を進めてきましたが、本格的なビジネスへの応用はできていません。その理由は扱える問題のサイズの小ささと計算のエラー率にあります。現在の技術では従来のコンピューターに搭載されているビットの大きさと同等の量子ビットを量子コンピューターに搭載する技術がありません。従来のコンピューターのビットと違い一括計算が可能な量子ビットでも、搭載される規模が小さければ複雑な計算はできません。また、従来のコンピューターに比べると計算でエラーを出す確率が高くなります。上記の理由から、現状はベースの計算は従来のコンピューターで行い、量子コンピューターが得意な部分のみ切り出して計算させる方法がとられています。2019年にはアメリカグーグル社より従来のコンピューターでは1万年かかるとされる計算を約200秒処理する量子コンピューターの開発が発表されました。この発表により今後のさらなる実用化が期待されるようになっています。 今後の課題 今後の課題は、量子ビットを増やすことで扱える問題のサイズを大きくすることと、計算の精度を高めることです。そのためにはエラーを随時訂正する仕組みを構築せねばなりません。量子ビットは熱のような外部要因によりノイズや量子ビット同士の干渉などが起こすことから設定通りの動作をしないことがあり、その結果として演算に誤りが生じてしまいます。このような事態を防ぐには、計算の途中で誤りを検知し訂正することで正しい計算を続けられる仕組みを作らねばなりません。 実用化により見える将来性 量子コンピューターの得意分野は最適化問題であり、その技術を利用することでビッグデータの解析技術が向上すると言われています。そこで具体的にどのようなことができるようになるか、その一部をご紹介します。 交通渋滞の緩和 量子コンピューターは自動運転のシステム構築にも役立ちます。交通状況を判断し、交通量の少ない道路を選択して運転するので、交通渋滞の緩和が可能です。また、訪問先が複数ある時にも効果的で、効率的にすべてを巡回するルートを見つけられます。 新薬開発のスピードアップ ビッグデータの解析技術向上はシミュレーションを行う際に膨大なデータを掛け合わせることを可能にします。分子の構造分析を通じて新薬開発の飛躍的なスピードアップが期待されています。 AI能力の向上 機械学習の分野には組み合わせに量子コンピューターの得意分野である最適化問題を含む要素が多くあります。そのため、量子コンピューターによってAI開発が飛躍的に発展するとされています。 暗号の解読容易化 金融分野を中心に広く採用されている暗号の解読が容易になる可能性が示唆されており、近い将来には現在暗号に採用されている方式が役に立たなくなると言われています。そのため、新しい暗号方式やセキュリティ対策の開発が進められています。 量子コンピューターの進歩はまだまだこれから 長年の研究開発の結果、量子コンピューターはここ数年で大きな前進を見せました。2021年以降のさらなる進歩を期待されており、さまざまな分野への利用が検討されています。これからの量子コンピューターの進化に期待しましょう。 参考: 量子コンピューター | NRI 量子コンピューターとは?メリット・デメリットを解説 | 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト 【誰でも分かる】「量子力学」ってなんなの? 詳しい人に聞いてきた【入門編】 | パーソナルテクノロジースタッフ 世界的に準備が進む「量子コンピューター」の現状は? | 東証マネ部 量子コンピュータの実用化加速へ | 理化学研究所

  • グリーンエネルギーの普及が重要な理由とは―認証制度や現状の課題をご紹介

    グリーンエネルギーの普及が重要な理由とは―認証制度や現状の課題をご紹介

    グリーンエネルギーは、エネルギー政策を考える上で欠かすことのできないテーマの一つです。特に東日本大震災以降、エネルギー政策の一翼を担う存在として認識され、近年の環境に関する課題とともに重要性は高まっています。グリーンエネルギーとはどのようなもので、他のエネルギーとはどう違うのでしょうか。その意味や定義、国や団体による取り組み、発電事業における現状の課題についてご紹介します。 グリーンエネルギーとは グリーンエネルギーとはどのように定義され、どういった意味を持つものなのでしょうか。 グリーンエネルギーの意味 現代のエネルギー政策は、環境負荷を抜きにして考えることはできません。どの種類のエネルギーをどの手段で生み出すのか、そのエネルギーをどういった用途に使うのかといったエネルギーのサイクルを考えるとき、環境負荷への考慮が必要です。 このような環境負荷の低いエネルギーの使い方として注目されているのが、自然エネルギーの活用です。自然エネルギーの活用は、すでに長い年月研究されています。 日本では、1979年に「農林水産業における自然エネルギーの効率的利用技術に関する総合研究」として大型プロジェクトが立ち上げられました。これは、1973年の第一次オイルショックを受け、石油大量消費に依存しないエネルギーへの関心が高まったことも影響しています。 この研究は、一般に「グリーンエネルギー計画」と呼ばれています。国内でグリーンエネルギーという言葉が普及し始めたのは、この計画のスタートがきっかけです。このグリーンエネルギー計画の中では、「太陽エネルギーなどの自然エネルギーを一層積極的に利用する」というように、自然エネルギーについての記述があります。しかし、グリーンエネルギーとは何を指すのかについては明言されていません。 一般的に、自然界にあるものから作ることのできるエネルギー、または自然環境に影響の少ないエネルギーのことをグリーンエネルギーと呼んでいます。 グリーンエネルギーと再生可能エネルギーとの違い グリーンエネルギーの定義として、CO2の排出を削減するような環境負荷の低いエネルギー全般を指す場合もあります。環境負荷が低い、クリーン(きれい)なエネルギーとしてクリーンエネルギーと呼ばれることもあります。 このように環境負荷の低いエネルギーとして考えたとき、グリーンエネルギーには太陽光、風力、バイオマス、水力、地熱のほか天然ガスも含まれます。 近年では、グリーンエネルギー計画が目指したものから、さらに一歩踏み込んだ再生可能エネルギーが注目されています。当初のグリーンエネルギーは、自然界にあるものを利用したエネルギーといった意味で使われていましたが、さらに枯渇せずに環境負荷が低いという条件もこれからの社会を考える上で重要です。 そこで、これらの条件に適するのが太陽光、風力、バイオマス、水力、地熱などの再生可能エネルギーです。現在では環境負荷の少ないエネルギーといえば再生可能エネルギーを指し、グリーンエネルギーと再生可能エネルギーは同義語として使われることが一般的になっています。 グリーンエネルギー活用に向けた国の取り組み グリーンエネルギーの活用は世界規模で取り組むべき課題であり、CO2排出量の削減にもつながるとして関係団体や国も推進しています。 グリーンエネルギーに関する代表的な制度として、グリーン電力証書とグリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度の2つがあります。 グリーン電力証書 自然エネルギーによって作られた電力について、省エネやCO2排出量抑制への貢献を価値とみなすことを前提とした制度です。その価値を企業が購入することで、自然エネルギーの普及に貢献したことを証明する仕組みです。この価値を環境付加価値と呼んでいます。 グリーン電力証書は、第三者認証機関の認証を得て証書発行事業者が発行します。 グリーンエネルギーであることが証明されていることの価値、環境付加価値を購入した際、グリーン電力証書が発行されます。環境貢献活動を行っていること、企業としてCO2削減活動に取り組んでいることなどの証となります。 グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度 グリーン電力証書は認証団体が発行しています。このグリーン電力証書について、さらに一歩踏み込んだCO2排出削減の価値を国が認証する仕組みが、グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度です。 このCO2排出削減価値は、グリーンエネルギーのCO2削減相当量から算出されます。 グリーン電力証書と同様に、購入資金は発電設備の維持や拡大に利用され、再生可能エネルギーの普及促進に利用される仕組みとなっています。また、「地球温暖化対策推進法(温対法)に基づく温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」の排出削減量としても活用できます。 発電事業の現状と課題 このように、世界の課題となっているCO2排出削減の面からも歓迎されるグリーンエネルギーですが、発電事業にはまだ課題も残っています。どういった課題がグリーンエネルギー普及の障壁となっているのでしょうか。 発電コストが割高 これまでの主流だった発電からグリーンエネルギーの発電に切り替えるためには、施設や設備を新たに建造または設置しなければなりません。このため、まだ普及しきっているとは言い難いグリーンエネルギーは発電コストが割高になっているのが現状です。 国が後押しするために制定した制度によりコスト負担の分散が図られ、電気利用者も発電コストの一部を負担することで普及を推進しています。 電力系統の整備が追いついていない 発電した電力を送るためには、送電線や変電所といった送電設備が必要です。しかし、既存の送電設備では送電容量が決まっているため、それを超える大きさの電力を送ることはできません。 この送電容量は、以前から使われている火力発電が優先的に使うことができるというルールがあります。そのため、グリーンエネルギーが送電容量を確保することが難しいというのが現状です。グリーンエネルギーを発電しても送電線に接続できず、電気を余らせてしまうといった事態が生まれる原因となっています。 この送電の課題が解決されなければ、グリーンエネルギーの発電事業に新規参入する企業の増加に歯止めをかけることになると予想されます。 発電量が不安定 自然の力を利用して発電する風力や太陽光などのグリーンエネルギーは、天候や気象条件に左右されることも多く発電量を安定させることが容易ではありません。 電力を安定して供給し、同時に火力発電の比率を下げながらグリーンエネルギーの比率を上げていくためには、グリーンエネルギーを貯蔵できる仕組みの整備も課題です。 世界的な導入の難しさ 発電コストが割高であることから、国の支援がなければ電気利用料金も割高になることは十分に考えられます。また、送電設備の増設や安定供給を助けるための蓄電池導入はさらにコストがかかります。 こういったコスト面での負担が、途上国でのグリーンエネルギー導入を難しくしています。 グリーンエネルギーは、世界的に進めていかなければならないCO2排出削減においても期待されています。しかし、導入が可能な国と困難な国とが分かれるため、足並みをそろえて促進していくことが難しいという課題が残っています。 グリーンエネルギーはこれからのエネルギー政策で最重要な位置に グリーンエネルギーの意味と定義、グリーンエネルギーに関する認証制度、発電事業における現状の課題についてご紹介しました。 CO2排出量の削減目標に到達するために、グリーンエネルギーの導入と普及が鍵を握っているとされます。今後さらに研究開発と普及が進むことで、安定供給やコストといった課題となっている部分も解消される可能性があります。これからのエネルギー政策において最重要な位置にあるグリーンエネルギーをどのように普及していくのか、各国の取り組みと動向に注目が集まっています。   関連ブログ:日本と世界各国におけるエネルギーミックス   参考: グリーンエネルギーとは|コトバンク グリーンエネルギーとは?定義やグリーン電力証書について解説|Selectra グリーンエネルギーCO2削減相当張認証制度ご利用ガイド(PDF)|資源エネルギー庁 グリーンエネルギー認証|日本品質保証機構 グリーン電力証書システムとは?|日本自然エネルギー株式会社 クリーンエネルギー拡大の課題と取り組み SDGs~目標エネルギーをみんなに そしてクリーンに~|アピステコラム

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