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    制御盤の組み立て作業の現状と自動化に向けて

    いま「自動化」というと、ついついロボットやAIを使うような先進的な自動化をイメージしがちです。しかしながら実際の作業は、手作業からはじまり、人がツールを使う効率化、専用機による機械化、ロボット化、知能を組み込んだ自律化という形で進化してきました。作業によっては手作業もあれば、機械化されているもの、ロボット化まで進んでいるものもあり、その進化の度合いはさまざま。とは言え、少子化や労働力不足が続くなか、いま手作業で行っている作業が今後も自動化せずに現状にとどまるとは考えにくく、次の進化のステップに進んでいくことは間違いありません。

    そこで今回は、「制御盤の組み立て作業の現状と自動化に向けて」をテーマに考えてみます。

    【動画】手作業 VS 加工機(バリューチェーン導入LCA グループ

    見逃されがちな下準備の重要性

    制盤の組み立てを効率的に行うにあたり、重要なのは「下準備」です。必要な部材を調達し、すぐに組み立て作業に入れる状態に整えることが効率化の第一歩です。

    部材には、電源やリレーなど購入してそのまま使うものもあれば、電線やDINレールなど購入したものを加工する必要があるもの、マーキングやラベル付けをするものもあります。また筐体の穴あけなどの板金加工も下準備のひとつです。部材の多くはそれぞれに下準備が必要とされ、その作業に手間と人手、時間がかかっていても、あまり自動化されていない、見過ごされているのが実態です。

    手間がかかり、面倒な電線やダクト、DINレールのカット

    例えば、購入した後に加工する必要があるものには、電線やケーブルダクト、ダクトカバー、DINレールなどがあります。サイズを測り、カッターやノコギリのほか、ダクトカッターやDINレールカッターのような専用工具を使って切断します。ケーブルダクトは硬質塩化ビニルや金属、DINレールはアルミという形で硬めの素材でできており、専用工具があるとは言え、力のいる重労働で刃物を使う危険な作業です。

    制御盤メーカーではこれらの加工は手作業で行っているケースがほとんどで、どの部材を、何センチ、何本必要かというのを設計図面と部品表を見ながら一つひとつ加工しています。作業自体は長さを測って切断するだけの単純作業で簡単にできてしまうことから、この作業だけを切り出して自動化・効率化しようというのはまだ少ない状況です。

    電線の加工も同様です。加工しなければならない本数と長さの種類が多いにもかかわらず、1本ずつの加工作業はケーブルカッターやストリッパー等の専用工具を使ってパパッとできてしまうため、自動化するほどでもないと見逃されているケースがほとんどです。慣れた人になると下準備をせず、組み立て作業の際にその場で長さを測ってケーブルを切断して使うというやり方をしている人もいて、事前準備でまとめて自動で加工した方が効率的だという意識が薄いこともあります。
    圧着端子の取り付けについても、近年は端子台や機器の接続方式がネジ式からスプリング式が増えてきていますが、準備作業では圧着端子が丸端子・Y端子からフェルール・棒端子になっただけで取り付け作業が必要なのはこれまでと変わっていません。圧着端子も取り付け用の専用工具が充実していて作業がやりやすくなっており、手間がかかって面倒だとは思いながら淡々と行われていることが多く、電線の切断と末端加工を自動化しようという雰囲気はまだ醸成されていません。

    異なる技術や装置が必要な筐体への板金加工

    筐体に穴あけやねじ立て、フライス加工を施す筐体の板金加工も下準備の一種です。

    筐体の板金加工は、案件によって穴を開ける場所やサイズなど加工条件が異なるため、個別対応が多くなります。そのため板金加工を社内で行っている制御盤メーカーでは人手作業が多い様子。

    また筐体の板金加工は機械加工であり、制御盤の設計製造の他の工程と異なるため、中小規模の制御盤メーカーは筐体の板金加工を外注しているケースが多くあります。そのため板金加工の自動化に対する関心は低めですが、必要な筐体の調達という観点では、外注化している場合、受発注の手間がかかったり、スケジュールや納期の融通が効きにくいこともあったりして、これを解消したいという声はよく聞こえてきます。

    早くから効率化が進んだマーキング

    部材の下準備の4つ目は、端子台や電線へのマーキングです。

    制御盤の組み立て作業、配線作業は、似たような姿形をした部材や機器を、図面に記された通りの決まったところに配置して配線してつながなければなりません。それを間違いなくガイドし、分かりやすくしておくために部材にラベル貼り付けや直接印字等でマーキングが施されます。ツールとしてはラベルプリンタやチューブマーカーがあり、マーキング工程は専用機器を使わなければ作業できないことからツール活用による効率化は比較的進んでいます。

    組み立て作業のロボット化に挑戦中も実現はまだ先か

    部材と筐体の下準備を終えた後は、組み立て作業です。

    組み立て作業は図面の通りに部品を配置して配線する作業で、これは人の手による手作業が中心となっています。この作業をロボットでやってみようという取り組みもありますが、機器や部材の種類が多く形状やサイズもさまざまで判断と見極めが複雑な上、配線作業については、電線が細くて柔らかく、ロボットでのハンドリングに適していないという物理的な制約もあります。

    先進的な制御盤メーカーがロボットによる自動組み立てに挑戦していますが、あくまでごく一部であり、自動組み立てがスタンダードになるのはもう少し先。それでも着実に進んでいることは間違いありません。

    下準備を自動化するリタールオートメーションシステムズ

    このように部材の下準備、組み立て作業ともに自動化はまだ限定的な状況ですが、人手不足が進むなかで受注案件をこなしていくには、これら一つひとつの作業を効率化・自動化して対応力を強化することも大切です。リタールでは、これらの下準備を効率化・自動化できる各種自動加工機を開発し、RAS(Rittal Automation Systems、リタールオートメーションシステムズ)として提供しています。

     

     

     

     

     

    【動画】過去開催セミナー:制御盤製造の最適化"バリューチェーン" 設計データを活用した手作業工程の自動化とは?

    カッティング、電線のキッティングを自動化

    ケーブルダクトやDINレール等など長尺のものから必要サイズを切り出すカッティング装置には「Secarex」があります。Secarexは、電気設計CADのEPLANで作成した設計データを流し込むと必要なサイズに自動で切断してくれる自動加工機で、専用工具で切断作業する時に比べて最大60%の時間を節約できます。

    電線加工では、電線の切断から皮剥き、圧着端子の取り付けまで全自動で行う大型機種から卓上型の半自動機まで揃えています。

    全自動機の「Wire Terminal」は、24種類・36種類の電線をセッティングし、電気設計CADのEPLANで作成した設計データをもとに、電線を引き出して適切な長さに切断して皮剥き、圧着端子の取り付けを行い、さらに配線作業時の取り付け順に揃えて出してくれるという全自動の電線加工機です。手作業に比べて最大80%の時間短縮になります。


    【動画】全自動電線加工機  ワイヤターミナル WT C10

    半自動機は、電線を指定の長さに切断できるカッティングマシン「C8+」、さまざまな径の電線の皮剥きができる自動スリッピングマシン「S22」をラインナップしています。またフェルール端子の自動皮剥き+圧着機(ストリップクリンパー)には、バラのフェルール端子に対応した「L8」、リール式対応の「R8 E」、リール式対応の5連装マガジン付き「RC」を取り揃えています。いずれも電線を差し込むだけで自動的に望んだ加工が行われ、半自動機では専用工具での作業に比べて最大40%の工数削減になります。

    【動画】卓上式電線加工機シリーズ:自動圧着マシンRC 操作および取り扱い

    Perforexで穴あけ加工の自動化

    穴あけなどの機械加工でも自動加工機を提供しています。それが設計データをもとに必要な加工を自動で行う「Perforex」です。
    Perforex MT」は、成形済みのボックスやパネルに対して穴あけやねじ立てやフライス加工によるカットアウト加工を行う加工機で、手作業での加工に比べてスチール筐体の場合は8倍、ステンレスでは20倍の速さで作業できます。

    【動画】盤筐体専用自動加工機 ミーリングターミナル Perforex MT

    Perforex LC」は、成形済みのボックスやパネルを加工できる3Dレーザー加工機です。ステンレス筐体の場合、Perforex MTのさらに20倍の速さで加工でき、レーザー加工なので工具の摩耗がなく、低騒音で加工できます。

    制御盤DXは作業の自動化から

    いまDXを合言葉に、さまざまな業界・業種でデジタル化や自動化を通じた生産性向上、効率化の取り組みが行われています。これまで手作業で行ってきた制御盤の製造、組み立て工程ですが、作業一つひとつを見ていけば機械化や自動化できる余地がたくさんあります。制御盤の設計・製造業界のDX、いわゆる制御盤DXはこうした作業の自動化からスタートしてみるのも一つの手段です。


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