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    エネルギーミックスとは何か?日本と世界のエネルギー問題

    オイルショックを機に一つのエネルギー源に依存することの危険性が意識されるようになりました。特に日本という国は多くのエネルギーを消費する一方、極端にエネルギーの自給率が低いエネルギー資源輸入国です。そんな日本にとって「エネルギーミックス」は重要な課題に位置付けられています。本稿ではエネルギーミックスとは何かを確認した後、日本と世界のエネルギーミックスの実情をご紹介します。

    エネルギーミックスとは

    エネルギーミックスとは、一つのエネルギーに頼るのではなく、各エネルギーの長所と短所をうまく組み合わせて、効率良くエネルギーを生み出す電源構成のことです。

    石油に依存していた日本はオイルショックにより大打撃を受けました。その経験から、一つのエネルギーに依存する従来の在り方から脱却することを意識するようになりました。さらに近年では、持続可能な開発目標SDGsの推進により、太陽光、水力、風力、バイオマス、地熱など再生可能エネルギーの活用に関心が高まっています。

    エネルギーには、「安全(Safety)」を大前提として、「安定供給(Energy security)」「経済性(Economy)」そして「環境保全(Environment conservation)」の「S+3E」が必要とされています。この「S+3E」の概念をベースに、最適なエネルギーミックスの実現に向け、検討が進められています。

    日本のエネルギーミックス

     日本は世界第5位のエネルギー消費国でありながら、2019年度のエネルギー自給率はわずか12.1%です。これはOECD諸国の中でも低く、エネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っている状況であり、早急な対応が必要となっています。

    出典:経済産業省資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」

    日本は国策として、2030年および2050年を区切りとし、「S+3E」の概念をベースとしたエネルギー基本計画に基づく、エネルギー政策を進めています。目下では2030年までに下記のような目標が設定されています。

    再生可能エネルギーの最大限の導入

     再生可能エネルギーを主力電源とするために、コストの低減化や新たな電力ネットワークの構築などの案が出されています。

    原子力発電に関わる技術力の向上

     原子力発電への依存度を減らす方向で進める一方、安全性の向上や使用済み燃料の処理方法などの検討が進められています。

    省エネルギーの徹底

     企業単位でも家庭単位でも省エネ化が進むよう、さまざまな施策が検討されています。

    2050年に向けては、まだ具体的な案がまとまっているわけではなく、各分野の専門家からのさまざまな提言により、少しずつブラッシュアップされている段階です。いずれにしろ、一層高度な「S+3E」、さらには「脱炭素化」を前提にした、日本に最適な「エネルギーミックス」の実現が期待できるものとなるはずです。

    各エネルギーへの期待と課題

     エネルギーミックス実現に向けたカギを握るのは、再生可能エネルギーの活用です。一方で、再生可能エネルギーにはさまざまな課題があるため直ぐに導入するのは難しいのが現状です。よって、既存のエネルギーを効率化して運用を行いながら、水面下で徐々に再生可能エネルギーの活用を増やしていくことが重要です。

    ここでは、各エネルギーが持つ課題や今後の期待を説明します。

    既存のエネルギー

     化石燃料

    天然ガス、石炭、石油などを燃料として、水を沸騰させ蒸気により発電タービンを回し、電気エネルギーに変換します。このような化石燃料は、地球上に限られた量しか存在しない「枯渇性」が問題であり、現在のペースで使用を続けるとあと40年ほどしか持たないと言われています。また、日本では地理的な観点から、これらの資源は輸入に頼らざるをえずエネルギー自給率を引き下げる最大の要因となっています。しかし、現時点で日本の総発電電力量の内、約7割は化石燃料による火力発電であるため、早急なエネルギーミックスの実現が求められています。

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     原子力エネルギー

    原子炉の中でウランが核分裂する時に出る熱を利用し、発電を行います。発電時にCO2を排出しない、発電コストが安定しているという利点があり,エネルギーを経済的、安定的に供給しながらCO2排出を削減できます。
    一方で、使用済み核燃料は最終的に放射性廃棄物となり、処理方法が問題となっています。また事故が発生した際、周辺環境に多大な被害を与える可能性があるため、安全の観点から活用については減っていく方向に向かっています。しかしながら、再生可能エネルギーでは補い切れないエネルギー不足分を賄える能力を有しているため、安全に運用するための技術研究も進んでいます。

    再生可能エネルギー

    水力エネルギー

    高い場所にためた水を低い場所に落とし、位置エネルギーを利用して発電を行います。CO2排出もほとんどなく、河川の多い日本国内での導入にも向いています。一方でダムなどの大規模なインフラが必要であり、地域的な環境破壊や生態系に対する影響が大きく、簡単には数を増やすことが出来ないという問題があります。よって、既存の設備の効率を高めることが目下の課題となっています。

    太陽光エネルギー

    シリコン半導体等に光が当たると電気が発生する現象を利用し、太陽光エネルギーから発電を行います。発電量が天候に左右されるため、安定性には欠けますが、小規模設備でも運用可能で各家庭に実装できます。また、半導体を用いるため導入コストが高いという欠点もあります。近年では、各家庭での太陽光発電導入を推進するため、国から補助金を出すなどの支援なども行われています。

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    風力エネルギー

    風の力を回して風車を回し発電を行います。風の状況により発電量が不安定となるため、安定性には欠けます。
    近年では、安定した風力を得やすい海の上に接地する洋上風力発電が注目されており、開発や研究が進められています。

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    バイオマスエネルギー

    バイオマスとは、動植物などから生まれた生物資源の総称です。この資源を燃焼させることで発電などに利用できます。例えば、トイレの臭気の原因として有名なアンモニアもバイオマス燃料として活用可能です。一方で、バイオマス燃料を得るためにコストが掛かるため、他の再生可能エネルギーと比べると割高となります。低コスト化や新資源の開拓が課題となっています。

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    熱エネルギー

    熱を電力に変換し、発電を行います。火山のマグマにより発生した熱(蒸気)を利用しタービンを回して発電を行う地熱発電や、熱そのものを電力に変換する素子を用いて発電を行う熱電発電などがあります。熱源は至る所に存在するため、本来なら捨ててしまう排熱を回収して発電する取り組みも研究されています。特に、発電時に発生する排熱を回収して更に発電を行うコージェネレーションシステムが注目を集めています。

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    このように再生可能エネルギーは総じて不安定であるため、エネルギーミックスにより安定化を図る必要があります。

    海外のエネルギーミックス

     日本におけるエネルギーミックスについて説明しましたが、海外ではどのような状況なのでしょうか。一部ご紹介します。

    ドイツ

     ドイツは、欧州で再生可能エネルギーへの転換にに最も力を入れている国の一つです。ドイツ連邦経済・気候保護省は、2035年にはドイツ国内の電力供給をほぼ完全に再生可能エネルギーによって賄うことを目指す方針を示しています。現在も天然ガス、石油が、一次エネルギー源として重要な役割を担っていますが、ここ数年を見ても、国内における発電電力量に占める再生可能エネルギーの比率は約40%を占めています。2022年の電力消費量に占める再エネの割合は、46.9%でした。

    アメリカ

     アメリカは化石資源が多いことから、電源構成も石炭や石油、天然ガスが大部分を占めています。原子力や水力、再生可能エネルギー等は20%にも満たない程度です。

    中国

     中国も化石資源が多いため、アメリカと似たような電源構成をしています。しかし、アメリカと比較すると石炭の割合が多く、半分以上を占めています。

    フランス

     フランスは世界で最も原子力発電が盛んに行われている国で、電源構成の半分以上を原子力が占めています。日本と同様オイルショックで大きな打撃を受けたフランスは、エネルギー自給に焦点を絞るようになりました。エネルギー資源には恵まれていませんが、優秀な核科学者を多く輩出してきたこともあり原子力に力を入れるようになった経緯があります。

    エネルギーミックスの実現の先に、住みよい未来がある

     日本でもエネルギーミックスの実現が着実に進められてはいますが、改善すべき点がまだまだ山積みです。2030年、2050年と先を見据えた話ではありますが、その実現は決して簡単なものではないでしょう。住みよい未来のため、適切なエネルギーミックスの実現を、私たちも関心を持って見守っていく必要があるでしょう。


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