私たちの生活において電気は欠かせません。しかし、今まで私たちが使う電力供給に大きな役割を担っていた原子力発電所や火力発電所は、その危険性や環境への影響から批判が集まるようになりました。そこで注目を集めているのがクリーンエネルギーを使った発電です。しかし、今はまだ発展途上であり、クリーンエネルギーを使った発電だけでは、電力供給を賄いきれません。そこでさらなる研究開発が進められていますが、その中でも洋上風力発電が注目を集めています。本稿では洋上風力発電について、メリットとデメリットや欧州との取り組みの違いをご紹介します。
洋上風力発電とは
洋上風力発電とは?陸上風力発電との違いやその仕組み
風力発電とはクリーンエネルギーの1つである風のエネルギーにより発電を行うことです。風力発電には一定の風速が必要で、風が弱い時、または台風のような強風時には発電ができませんが、昼夜を問わず発電ができる効率の良い方式です。風車は大型になるほど発電効率がよく、世界各国で大型風車の開発が進められています。
風力発電には日本で多く設置されている陸上風力発電と、洋上に風車を設置することで発電を行う洋上風力発電があります。洋上風力は発電に使われるのが一般的で、今後の導入が期待されています。
洋上風力発電の仕組み
風車のブレードにより風を受けることで回転運動を生み出し、そのエネルギーを電気エネルギーに変換します。一般的には、ブレードの回転を主要部品や機器を格納するナセルにある増速機により回転数を増速させ、その回転で発電機を作動させ電気をつくります。
洋上風力発電のメリットとデメリット
洋上風力発電には陸上風力発電に比べ、さまざまなメリットがあります。デメリットを含めご紹介しましょう。
メリット
洋上での風況は陸上より良く、風の乱れが小さいので、安定した発電が可能です。陸上とは違い周りは海なので、土地や道路の制約がなく大型の風車を導入することが比較的容易にできます。また、景観や騒音への影響も小さくできます。
デメリット
海上に作るため陸上より基礎作りが難しく、洋上変電設備や海底ケーブルの設置も必要で、コストや工程への影響は大きくなります。洋上風車の建設費も高くなりますが、それだけでなく維持管理費が高いので、初期費用だけでなく運用費にも注意が必要です。
欧州と日本における洋上風力発電についてそれぞれの取り組み
洋上風力発電は日本だけでなく世界中で研究開発が進められています。その中で、特に洋上風力発電の研究開発が進んでいるのが欧州です。取り組みの内容は日本とどのような違いがあるのかご紹介しましょう。
欧州
洋上風力発電は陸上風力発電と比べると、安定的で効率的な発電や風車の大型化が可能で、欧州を中心に近年急速な導入普及が進められています。欧州では早くから洋上風量発電の実用化がされており、2011年末までに洋上風力発電は約400万kWに達しました。
そもそも欧州は風力発電が進んだ国でした。風況がよく、年間平均風速が強いという特徴があり、風車を動力とする文化が古くからありました。そのため、欧州は風力発電開発について自然環境に優れ、技術力のある風力発電メーカーがあり関連技術も多く有していたのです。欧州はそのような背景もあったことから洋上風力発電についても研究開発を進め、その結果として陸上風力発電より発電コストを下げることに成功しました。
現在欧州では再生エネルギーを推進しており、国主導で洋上風力発電導入を進めています。
日本
2012年の固定価格買取制度の施行から、陸上風力発電の導入が進められてきました。そして、2019年には「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)」が施行されました。そのため、今後は多くの洋上風力発電所の設置が見込まれています。
日本は欧州と気象・海象条件などが異なっていることから、欧州の事例をそのまま適用ができないため、課題を見つけ解決していかなくてはいけません。例えば日本海側と太平洋側で自然条件が異なり、その洋上風特性は明らかにされていないので解明する必要があります。また、沖合における洋上風車建設工法の低コスト化も実現できておらず、洋上風力発電の実用化にはまだ課題が多く残されています。
洋上風力発電の今後の展望
多くの洋上風力産業は日本国外に立地していますが、日本のサプライヤーにも潜在力があるとされています。洋上風力発電は再生可能エネルギー主力電源化への切り札です。日本政府は年間約100万kWの区域指定を10年間継続することを目指しています。また、2030年までには1,000万kW、2040年までには浮体式含む3,000万kW〜4,500万kWの洋上風力発電を計画しています。日本における洋上風力発電はまだまだ発展途上です。しかし、日本政府も導入に力を入れるようになった洋上風力発電は、今後さらなる研究開発が進められるでしょう。
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参考: