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    電気設計と機械設計―3D CADシェアによってもたらされた変化

    電気設計と機械設計は、国内では別々の道を歩んできたといえます。電気と機械、それぞれの設計手法と、そのツールとしてCAD(Computer Aided Design)はどのように発展してきたのでしょうか。また、設計ツールの進化系として主流となった3D CADは、それぞれの分野でどのようなことができるのでしょうか。

    電気設計と機械設計―発展の歴史

    世界で最初にCADが生まれたのは、1963年のことでした。当時コンピュータは限られた一部の企業しか持つことができないほど高価な機器でしたから、コンピュータによる製図が普及するとは誰も考えていなかったでしょう。

    しかし、1980年ごろからは2D CADが少しずつ普及しはじめます。これを支えたのは、急速なコンピュータの進化でした。1990年代になると、Windows95の登場とともにコンピュータは身近な機器になります。このころからパソコンという呼び方も定着し、中小企業や家庭でもパソコンを所有する時代へと変わっていきました。同時に、CADの普及も加速することになります。

    2D CADの普及が進むなか3D CADが登場、2000年代に入ると中小企業へも普及がはじまります。2010年代には3D CADによる設計が主流となり、3Dモデルを活用した新たな手法が生み出されました。

    このようなCADの発展と普及は、常に機械設計分野がリードしてきました。
    なかでも特に、日本における機械設計は、スペースや干渉・接触など物理的・空間的な要素を重視する傾向があります。これにCADのメリットが一致し、3D CADの登場によりさらに多機能なCADの普及が加速したのです。

    一方で電気設計分野では、回路の成立が重視される傾向があります。
    以前は「CAD=製図用のツール」という意識がありました。また、電気設計者の求める設計ツールではなかったこともあり、多機能なCADは機械設計分野のツールという感覚が浸透していました。現場第一主義の意識が強い国内では設計者の発言力が強く、シンプルな電気回路図エディターから多機能な電気設計CADという設計アプリケーションの変化はあまり好まれなかったのです。また、世界市場で日本製品は十分な競争力を持っていたため、特に改革が求められなかったという点も、電気設計分野でCADの浸透が一歩遅れた背景にありました。

    国内でこうした流れがある一方、海外では多機能な電気設計CADが機械設計と並ぶレベルにまで発展・普及していきました。海外ではトップダウンの経営が主流で、トップの判断により総合的な効率化が進められる傾向があります。こうした環境のなかで、電気設計分野にもCADが浸透していきました。
    国内に根強くあった、機械と電気との間の垣根も海外には存在せず、電気設計CADも機械設計CADと同様に進化していったのです。

    こうして現在、機械設計ではアメリカ製、電気設計ではドイツ製のCADがトップシェアを持ち、世界を牽引しています。

    制御盤製造4.0

    現代の3D CADでできること

    このように発展してきたCADは、3D CADが主流となりつつあり、さらに機能を充実させ進化し続けています。3D CADによる3次元設計ではどのようなことができ、どのようなメリットがあるのでしょうか。

    • 直感的な形状把握を可能にする
    • 顧客に対する視覚的提案を容易にする
    • 表面積・体積・質量・重心などの計算が可能
    • デジタル上でモックアップ(模型)・プロトタイプを作成可能
    • 3Dプリンターによる物理的な出力が可能

    では電気設計分野において、3D CADは何ができるのでしょうか。

    • 一元化されたデータベースによりさまざまな図面が連動
    • 物理的・電気的に連動した制御盤設計が可能
    • 電気回路のシミュレーション
    • 自動的な配線設計
    • 実測の必要がない効率的なハーネス設計

    電気設計3D CADは、電気設計の技術者が求めていた回路シミュレータとしての機能も持ち、さらに配線設計もできるものがあります。技術者の意識と電気設計CADの機能の間にあった隔たりはなくなり、電気設計分野でも3D CADの活用が進んでいます。

    3D CADの普及率

    このように多くのメリットと、3次元ならではの機能を持つ3D CADは、設計ツールとして主流になっています。その普及率を見てみましょう。

    エンジニアのためのキャリア応援マガジン「fabcross for エンジニア」では、製造業のエンジニアが使っているツールに関するアンケートを行いました。調査によると、「職場で使っているツール」として66.6%が3D CAD/CAM、52.2%が2D CAD/CAMをあげています。これらの数字から、機械設計分野ではCADが十分に浸透し、さらに3D CADが主流となりつつあることがわかります。

    一方で、電気設計分野では、どのようなツールが使われているのでしょうか。
    製造業のための製品・サービス情報サイト「TechFactory」が、電気設計者を対象に調査(PDF)を行っています。「すでに導入しているツール」として、最も多くあげられたのはCADでした。調査対象者が所属する企業のうち、70.4%が電気設計CADを導入しているという結果から、電気設計分野においてもCADによる設計が主流であることがわかります。

    電気設計と機械設計が融合する時代

    電気設計と機械設計において、CADはどのような歴史を歩んできたのか、また各分野でどのような機能を持つようになったのかをご紹介しました。過去には、機械設計と電気設計は別々の工程として進められ、また全く異なるプロセスが取られてきました。しかしリードタイムの短縮や設計コストの縮小が求められる現代において、これらを同時に、連動して設計していく手法が求められています。

     

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    参考:

    リタールの技術ライブラリ
    「規格に適合したスイッチギア及びコントロールギアの製作IEC 61439適用

    本冊子は、新規格IEC 61439 準拠に必要な様々な対策を講じる上でのお手伝いをするために作成しました。リタール製規格適合システム製品の利用に関するご相談から貴社機器の要求設計や日常検査のご提案まで、幅広くご利用ください。
    ※新規格IEC 61439における変更点の他、「設計検証報告書」の作成方法などについて、85ページにわたって解説しています。

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