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    作動を制御する基本言語―ラダープログラム

    今や制御盤には欠かせない存在となりつつあるPLC(Programmable Logic Controller) 。このPLCの中では、いくつもの接点やリレーが作動した状況を仮想的に作り出しています。そして、この作動をつかさどっているのが、ラダープログラムと呼ばれるプログラミング言語です。ラダープログラムの基本的な記述方法や注意点についてご紹介します。

    シーケンス回路とラダープログラム

    ラダープログラムとはどのようなものか、シーケンス制御とその回路の表し方から考えてみましょう。

    シーケンスとリレー

    従来、産業機器の制御において主役となっていたのは、リレーと呼ばれる機器です。リレーは電気信号によって接点を開閉する機構になっていて、この入力側と出力側に電気的な接触がなく、別系統の回路を作れることが特徴です。

    このようにリレーは、電気信号をバトンのように渡していきます。別系統の回路間で電気信号を受け渡ししていくことで、さまざまな制御が可能となります。

    こういったリレーを使った論理回路をシーケンス回路、その配線図をシーケンス図と呼びます。リレー制御回路や回路図などと呼ばれることもあります。

     

    リレーとPLC

    リレーを使ったシーケンス回路は、何段階もの条件で動く複雑な制御回路を作ることも可能です。しかし、複雑な制御をするためのシーケンス回路を作ろうとすると、膨大な数のリレーが必要になります。それにより配線も複雑化し、制御盤も大きくなります。

    また、回路を変更するためにはリレーの位置変更や配線のし直しが必要です。複雑な回路になれば、仕様変更にも時間と手間がかかり、配線ミスによるエラーの発生確率も高くなります。

    このように、リレーを使ったシーケンス回路は複雑な制御になると、そのデメリットが目立つようになります。これらのデメリットを解消するために開発されたのがPLCです。PLCは複数の入力端子と出力端子を持ち、内部の仮想的なリレーによって制御を行うように作られた制御装置です。何十個ものリレーを必要としたシーケンス回路を1台のPLCによって動かすことも可能で、リレーを使ったシーケンス回路の物理的なデメリットを解決します。

     

    PLCとラダープログラム

    PLCの中には、仮想的にシーケンス回路が組まれています。この仮想シーケンス回路を動かしているのがラダープログラムです。図で表したときの形が「はしご(ladder)」に似ていることからそう呼ばれます。

    プログラムによって制御が決められているため、仕様変更があってもプログラムの変更のみで対応できます。リレーを使ったシーケンス回路のように物理的な配線のし直しは必要ありません。

    また、このラダープログラムの特徴として、見た目にもわかりやすくどのような制御が行われているかを理解しやすいという点があります。AND回路・OR回路・NOT回路を「0」か「1」で表す論理回路言語と違い、リレーによるシーケンス図を理解している人なら理解できるようになっています。

    ラダープログラムはより実際のシーケンス回路に近い、現場技術者にメリットの多いプログラム言語といえます。

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    ラダープログラムの基本と注意点

    ラダープログラムはどのような形で記述されるのか、基本的な書き方をご紹介します。

    ラダープログラムを構成する二つの母線

    ラダープログラムは、左右に2本の縦線があるのが基本の形です。これを母線と呼び、この間に回路を作り上げていきます。

    2本の線は、直流であれば片方がプラス、もう片方がマイナスを表し、交流であれば相の異なる2本の線で、2線間に電位差があると考えます。


    回路の動作を表すラング

    二つの母線の間をつなぐ横の線をラングといいます。ここには接点やリレーなどが記されます。複数の接点を接続線で結び、それらがどのような条件のとき、リレーが作動するか定める役割をします。

    シーケンス図でも同様ですが、ラングには必ず一つの負荷が設定されなければなりません。接点のみだとエラーになります。

    こうして母線とラングによって「はしご」の形状が作られ、ラダープログラムとなります。

     

    ラダープログラムは共通言語ではない

    気をつけなければならないのが、ラダープログラムは共通言語ではないということです。

    PLCには多くのメーカーが存在しますが、そのメーカーごとに自社のPLC専用のプログラミングツールを提供しています。多くの現場では、このメーカー提供のプログラミングツールによってラダープログラムを組んでいます。

    こういったプログラミングツールは、PC上で動くアプリケーションソフトとして提供されているのが一般的です。キーボードにショートカットキーが設定され、慣れると短時間でプログラムを作っていくことができます。一方で、より直感的な操作が可能なタッチパネルにより、その場で簡単にプログラムの変更ができるようなコントローラーも近年では普及しています。

    こういったラダープログラムにおいて、特に注意しなければならないのは、このプログラミングツールごとに、使用する記述方法が異なるということです。基本的な考え方は同じでも、仮想的に設置する機器(内部デバイス)の記述方法が異なるため、そのまま移植・流用ができないのです。

    ただし、互換性があり各社に対応した記述に変換できるソフトもあります。こういったソフトにより変換は可能ですが、対応する記述方法の得手不得手があり、手作業で修正が必要となる場合もあります。


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    ラダープログラムの記述方法

    では、実際のラダープログラムはどのような表示になるのか、例をあげて解説します。ここでは基本的な4種類の条件を設定する回路についてご紹介します。

     

    OR回路

    「いずれかの条件を満たせば作動する」というのがOR回路です。

     OR回路

    二つのa接点(X00,X01)どちらかがクローズすれば、左右の母線が導通して負荷に電流が流れるという状態を表しています。

    これにb接点を組み合わせればNOR回路としての条件が作れます。

     

    AND回路

    「すべての条件が満たされれば作動する」のがAND回路です。

     AND回路
    二つのa接点(X00,X01)がどちらもクローズしなければ左右の母線間が導通しません。

    これにb接点を組み合わせればNOT回路の条件が作れます。

     

    自己保持回路

    シーケンス制御の基本ともいえる自己保持回路は次のようになります。

     自己保持回路
    自己保持を開始するためのa接点(X00)と、解除するためのb接点(X01)、リレー(Y10)が1行目に書かれています。2行目にはリレー(Y10)の1次接点があります。

     

    インターロック回路

    例えば昇降装置の上昇ボタンと下降ボタンを同時に押したとき、異常な動作をしないようにするために必要なのがインターロック回路です。

     インターロック回路 

    この回路では、上昇ボタン(X00)を押している間に下降ボタン(X01)を押すと、上昇・下降のための二つのリレー(Y10,Y11)どちらも作動しない条件が組まれています。

    このように、ラダープログラムは接点や負荷の記号の形が少し違うだけで、一般的なシーケンス図とほとんど同じです。シーケンス図に慣れている方ならすぐに理解できるのではないでしょうか。

     

    制御の可能性を広げるラダープログラム

    ラダープログラムとはどのようなものか、どういった記述方法で使われるものなのかをご紹介しました。

    リレー回路が主流だった時代には、シーケンス制御は物理的な理由から限界がありました。しかし、PLCの登場によりその物理的な制限は解消されました。コンパクトなユニットの内部に大量の仮想リレーを持ち、それを視認性の優れたラダープログラムによって動かすことができるようになったのです。ラダープログラムは、シーケンス制御の可能性を広げた制御専用のプログラミング言語なのです。

     

     

     

    参考:

    リタールの技術ライブラリ
    「規格に適合したスイッチギア及びコントロールギアの製作IEC 61439適用」
    本冊子は、新規格IEC 61439 準拠に必要な様々な対策を講じる上でのお手伝いをするために作成しました。リタール製規格適合システム製品の利用に関するご相談から貴社機器の要求設計や日常検査のご提案まで、幅広くご利用ください。
    ※新規格IEC 61439における変更点の他、「設計検証報告書」の作成方法などについて、85ページにわたって解説しています。

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