欧州を中心に海外でよく使われている圧着端子に、フェルール端子があります。フェルール端子はどのような特徴を持っているのでしょうか。フェルール端子のメリットとデメリット、国内の動向や注目度についてご紹介します。
フェルール端子の特徴
フェルール端子とはどのようなものなのか、その特徴からご紹介します。
フェルール端子とは
フェルール端子とは電線の先端に付ける棒状の端子で、これを差し込むことで電気的接続をするためのものです。
端子台側では導通金具とバネによりフェルール端子を固定するのですが、ネジを締めたり緩めたりする必要はなく、フェルール端子を差し込むだけで自動的に固定されます。そのためプッシュイン方式と呼ばれることもあります。
端子を抜くときは、リリースホールと呼ばれる穴にマイナスドライバーのような先端の細い工具を差し込むことでバネが押し広げられる仕組みです。これにより端子の固定が解除され、端子を引き抜くことができます。
フェルール端子の規格
フェルール端子は、ドイツの国家規格であり国際標準として普及しているDIN規格で規定され、欧州で多く使用されています。
また、アメリカの電気用品では必須ともいえるUL規格でも規定されています。
一方、日本でよく使われているのは、確実性を実感しやすいネジ固定式による丸端子とY端子。フェルール端子に関してJISでは規格化されておらず、日本ではフェルール端子を目にすることはあまりありませんでした。
しかし近年、国内メーカーがこぞってフェルール端子対応の端子台やスイッチなどの機器を製品化しています。国際標準化が進むなか、日本でもフェルール端子の普及が進んでいくことが見込まれます。フェルール端子のメリットとデメリットについて見ていきます。
フェルール端子のメリットとデメリット
フェルール端子にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。日本で普及している丸端子やY端子との違いはどのような部分にあるのでしょうか。
フェルール端子のメリット
フェルール端子を使うプッシュイン方式には次のようなメリットがあります。
● 機器の取り付け面積を削減
フェルール端子は端子自体の断面積が小さいこともあり、端子台を小さくすることができます。これにより、機器のサイズを小さくすることができ、取り付け面積も削減されます。
● ダクトとの隙間を短縮
丸端子・Y端子は機器の上下から端子を差し込み、ネジで固定する必要がありますが、フェルール端子は機器の正面から抜き差しします。これにより機器の上下に多くのスペースを必要としないため、ダクトとの隙間を短縮することができます。
● 配線固定作業の工数削減
丸端子・Y端子では端子取り付けの際に、「ネジを外す・緩める」「端子をねじに通す・差し込む」「ネジを締める」の3工程が必要です。しかしフェルール端子では「端子を差し込む」の1工程だけで取り付けができます。
● 片手作業が可能
配線のクセや取り付け場所によっては端子を押さえながらネジを締める必要がある丸端子・Y端子に対し、フェルール端子は片手で差し込むだけで取り付けが完了します。
● 高い保持継続性
フェルール端子はバネによる固定のため、丸端子・Y端子では避けられないネジの緩みを心配する必要がありません。また、バネは自己倍力作用が働く向きで端子を挟み込むため、引っ張られたときにもより強く挟み込むような力が働き、抜けにくい構造になっています。
● 電極の露出がない
ネジで固定する端子台では電極が露出していますが、フェルール端子の端子台は電極の露出がありません。
● 部品在庫の軽量化とスペース縮小
端子・端子台ともに小さいため、部品在庫は軽量化されます。また、保管スペースも縮小されます。
● 制御盤の軽量化と小型化
端子台や機器が小型化されるため、制御盤も小型で軽量なものを使うことができます。
フェルール端子のデメリット
一方で、フェルール端子には次のようなデメリットや注意しなければならない点もあります。
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ネジを締めて固定するという安心感がない
ネジ式の端子台に慣れた人にとっては、差し込むだけで完了するフェルール端子の取り付けは物足りなく感じたり、不安が残ったりする場合があります。これは普及が進み、信頼感が積み重なることで解消されると思われます。 -
マークチューブが保持されにくい
端子が細いため、従来のマークチューブでは抜けてしまうことがあります。本場の欧州などでは、ケーブル自体に線番を印刷するか、後付けのマーキングスリーブを使用するなどして対応しています。抜けないように工夫されたマークチューブもあります。 -
渡り配線による分岐ができない
一般的なフェルール端子の端子台は、一つの穴に一つの端子しか取り付けることができないため、ネジ式のように渡り配線による分岐ができません。ただし、ツインフェルールや、一つの電極に二つの穴があるダブルホールタイプの端子台、短絡バーを使うなどの方法で、渡り配線をすることは可能です。 -
専用の圧着工具が必要
圧着の方法が異なるため、フェルール端子専用の圧着工具が必要となります。なお、電線の基礎知識や関連規格をはじめ、制御盤内の配線、フェルール端子の現状など、欧州の制御盤製造動向について詳しくまとめた資料を以下のリンクよりダウンロードすることができます。自社で制御盤の導入を検討する際に、ぜひお役立てください。
日本国内でもフェルール端子の注目度上昇
このように普及の面ではいくつかのデメリットはあるものの、フェルール端子のメリットに着目し、日本の電気業界でも各メーカーから対応機器が続々と発売されています。
また、日本配電制御システム工業会では平成26年に「制御盤製作の省コスト化の調査研究」(PDF)として報告書をまとめています。制御盤製作の合理化につながる手法を探るための調査内容がまとめられた報告書ですが、この中でフェルール端子とプッシュイン方式の機器にも触れ、今後の調査対象として追加されています。制御盤製作に関し変化と前進が求められる時代に、フェルール端子は配線接続の合理化につながるメリットが多く、今後注視していくべき存在と位置付けています。
また、国土交通省の公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)には、一般配線工事に使用する圧着端子類として電線コネクタにJIS C 2814-2-2の「ねじなし形締付式接続器具」が明記されており、今後さらに普及が進むと考えられます。
普及が進んでいく? フェルール端子とプッシュイン方式
フェルール端子の特徴とメリット・デメリット、日本国内の普及と動向についてご紹介しました。このようにフェルール端子とプッシュイン方式は作業性・安全性について多くのメリットがあり、小型化された制御盤が歓迎される現代ニーズにもマッチしています。制御盤の製作業界でも、フェルール端子とプッシュイン方式の機器の普及がどのように進んでいくのか、注目していく必要があります。
リタールでは、フェルール端子をはじめとする、あらゆるグローバル仕様の制御盤に対しても柔軟な対応が可能です。ここでの内容を参考に、ぜひ自社に最適な制御盤をご検討ください。
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フェルール端子とプッシュイン方式に対応した制御盤を作るには?
ここからは、実際にフェルール端子とプッシュイン方式に対応した制御盤を製作する際の手順について、6つのステップごとに解説します。
STEP1:制御盤の要件
機能や制約事項など、制御盤に関する各要件を明確に定義します。フェルール端子に対応することで必要となる仕様についても、あわせて明確化しておきたいポイントです。
STEP2:回路設計
制御システムの概要を決定するとともに、フェルール端子を採用した配線に対応するための回路を設計します。また、ここでは回路設計に基づく形で配線図の作成を行います。フェルール端子の接続や配置を考慮し、信号線、電源線、アース線の引き回しを決定します。
STEP3:部品選定、構造設計
必要となる部品やコンポーネントを選定します。
フェルール端子に対応するためには適切なコネクタや配線、端子が必要です。また、回路設計や配線図をもとに、制御盤内外の構造設計を行います。サイズや冷却方法、配線スペースはもちろん、保護等級や電磁適合性(EMC)など、国際規格対応を視野に入れた設計が要求されます。なお、フェルール端子は欧州を中心に採用されていることもあり、日本国内の電線を使用する際には注意が必要です。0.5SQ〜1.25SQにおいて日本国内の電線を使用すると、被覆部分とフェルール端子の絶縁部分の径が重なり、圧着不良を起こしてしまいます。したがって、0.5SQ〜1.25SQにおいては海外仕様のものを選定することが重要です。
STEP4:試作・評価
制御盤の試作品を製作し、評価テストを行います。設計要件を確認するとともに、機能性や信頼性、安全性など、実際の動作をもとに制御盤を検証します。
フェルール端子を採用する際には、プッシュイン方式の接続性や、信号の安定性を入念に確認しておくことが重要です。
STEP5:製品化・量産
制御盤要件を満たしていることを確認した後、製品化に向けた準備を行います。量産にあたり、生産設備や製造方法の改善を検討しておくことも大切です。
STEP6:品質管理・出荷
製品化された量産品は、試作品とは部品調達や製造の工程が異なる場合が多いため、製造された制御盤に対して再度評価テストを実施します。試作品と同様に、制御盤が仕様に合致していることを確認し、取扱説明書や保証書など必要文書を作成したうえで、出荷手続きを行います。
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