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    フェルール端子の普及と制御盤製造の変化

    『フェルール』、いわゆる棒端子ですが、ここ数年で急速に日本でも採用が広がっています。その背景として端子台をはじめ制御盤に使われる機器の多くが、その配線接続を、丸端子やY端子などのねじ接続から、フェルールを使ったプッシュイン方式へと変更していることにありますが、今後フェルールとプッシュイン機器が増えていった時、制御盤メーカーはどうすれば良いのでしょうか?今回はそれを考えてみます。

    急増するプッシュイン対応機器と
    フェルール使用量

    プッシュイン方式は、末端をフェルールで圧着処理した電線を機器の接続穴に差し込むと、ばねの力で固く結線されるというもの。作業効率が良く、配線作業時に増し締めがいらない、お客様先へ納品後も機械の振動に晒されてもゆるみが発生しない、端子台が小さくできて制御盤サイズを小型化できるなど、制御盤メーカーにとっても、ユーザーにとってもたくさんのメリットがあります。

    プッシュイン方式はもともとヨーロッパで開発された技術で、欧米では早くから広まっていて、すでに当たり前の接続技術になっています。その影響もあって中国やASEANなどでも広がっています。日本では長年、制御盤内部の機器接続には丸端子やY端子などのねじ接続が根強く使われていましたが、制御盤メーカーをはじめ製造業全体の人手不足の深刻化もあり、10年ほどでねじ接続からプッシュイン方式に変えるケースが増えてきています。

    特にここ数年は、富士電機機器制御、三菱電機、オムロンなど主要な日本の制御機器・配電機器メーカーや、東洋技研をはじめとする端子台メーカーがプッシュイン接続方式に対応した製品をリリースしています。プッシュイン方式にはフェルールが不可欠であり、対応製品が増えてくるにしたがって日本国内でもさらにプッシュイン方式の採用が加速するのは確実で、それにともなってフェルールの出番も増えると見込まれています。

    また、国土交通省発行の公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)の令和4年版では、主回路の導体部の接続方法に「差込み」が記載され、「ねじなし端子」が使用できる圧着端子として追加されました。
    国土交通省「公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)」令和4年版

    関連記事:フェルール端子とプッシュイン方式―日本でも注目度が急上昇している理由

    カット、皮剥き、圧着 
    意外と手間がかかるフェルール加工

    フェルールに限らず、丸端子でもY端子でも同様ですが、圧着端子を取り付けるのは手間がかかります。専用のストリッパーや剥き線工具、電工ペンチで電線の皮を剥き、フェルールを被せ、圧着工具や電工ペンチで力をかけて電線とフェルールを圧着させる。1回あたりたった3ステップの作業ですが、制御盤1面に使うフェルールは100個を超えるケースもざらにあり、フェルールの圧着だけで結構な工数が取られます。

    また作業自体は単純ですが、熟練者とそうでない人との技術差は大きく、作業スピードの違いに加え、フェルールが適切な位置と力でカシメきれてなくて接触不良や電線が抜けるといったことも時折起きたりもします。

    これらは先行して普及した海外でも同じような問題が起きていて、その対応策として今ではフェルールの自動加工機の導入・活用が進んでいます。

    面倒な手間はフェルール自動加工機の導入で一気に解決

    フェルールの自動加工機は、その名の通り電線の皮むきからフェルールの取り付け、圧着までの一連の作業を自動で行う機械です。自動加工機の電線挿入口に電線を差し込むだけで、自動的にフェルールが圧着された状態で出てきます。制御盤の組み立て作業に入る前の事前準備に使っても、組み立てをしながら使っても、どちらでも作業を効率化できます。

    リタールでは、フェルールの自動加工機をはじめ、制御盤の組み立て作業を効率化する各種自動機を「リタールオートメーションシステムズ(RAS)」というブランドで展開しています。


    【動画】過去開催セミナー:制御盤製造の最適化"バリューチェーン" 設計データを活用した手作業工程の自動化とは?


     

    フェルール自動加工機は電線加工装置のカテゴリのなかのひとつで、ほかにも様々な長さに電線をカットできる自動カッティング機、複数の太さの電線の被覆を剥ける自動ストリッピング機などを取り揃えています。

    フェルール自動加工機は、バラバラのフェルール端子を電線に圧着するパーツフィーダ付きの「L8」と、リール状になっているフェルール端子を自動で供給できる「R8E」と「RC」の3機種をラインナップしています。

    なかでもRCは、5連装マガジン付きで、0.5〜2.5m㎡までの5つのサイズ(断面積)が異なる電線の皮剥きおよびフェルールの圧着に対応。1本あたりにかかる加工時間は2秒ほどで、挿入口に差し込んで少し待てば完成。ちょうど自動の鉛筆削りを使う時と同じような感覚で手軽に使えます。サイズの切り替えはタッチパネルから簡単に行え、難しい設定も不要。本体は卓上サイズなので、設置場所に困ることもありません。

    【動画】卓上式電線加工機シリーズ:自動圧着マシンRC

    RC_YouTube_link

    「これからプッシュイン対応機器やフェルールを使いたいけれど電線加工が面倒だ・大変だ」「制御盤づくりの効率化のために、何から始めていいか分からない」という人には最適なものとなっています。

    電線の自動加工からはじまる制御盤DX
    CAD連携で完全自動化

    電線加工の最上位機種に「ワイヤターミナル WT C5/C10」があります。WT Cシリーズは、電気設計CADのEPLANで作成した制御盤の設計データをWTに流し込むことで、製作する制御盤に必要な長さ・本数の電線を、電線のカットから皮剥き、フェルールの圧着、作業手順にのっとった電線の整理収納まで、すべて自動で行ってくれる全自動電線加工機です。最大36種類、0.5〜6m㎡の電線に対応しています

    【動画】全自動電線加工機 ワイヤターミナル WT C10

    TouTube_WTC

    WT Cシリーズ とEPLANを連携した電線加工の全自動化は、設計データを製造工程にも活用して業務効率化していこうという制御盤DXやデジタル化そのものの動きであり、EPLANとリタールも「バリューチェーン」として推進しています。日本ではまだこれからですが、ヨーロッパの先進的な制御盤メーカーではWTシリーズとEPLAN連携はスタートしており、制御盤の設計・製造の未来、DXとして注目です。



    制御盤DXの教科書_S

    【制御盤豆知識】フェルールの圧着の形

    さて、最後までお読みいただいた方に、制御盤の豆知識をひとつ。

    フェルールはメーカーによって圧着加工後の形がいくつかあります。四角形や六角形、V字形などがあり、工具の構造によって異なります。

    世界で最も普及しているのは四角形、特に台形とされ、フェルール圧着の60%近くが台形の圧着で行われていると言われています。台形は1980年代頃にフェルールが登場した頃から使われている技術で、電線を上下2カ所からカシメると台形になります。台形は圧着工具の構造がシンプルなので工具や機械の価格を抑えることができ、メンテナンスも簡単なので、多くのメーカーで使われています。リタールの手動工具、RCは台形のカシメになっています(手動工具は四角形と六角形もあります)。また、WT Cシリーズでは四角形の四点カシメを採用しています。皆さまが使われているフェルールと圧着工具は、どの形状でしょうか? ぜひチェックしてみてください。


    全自動加工機 ワイヤターミナルWT C
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