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    半導体にも種類がある? 不純物半導体と真性半導体の違い

    電子部品や制御機器にはなくてはならない半導体。「半導体不足」といった言葉をニュースで聞いたことのある方も多いかもしれません。
    しかし、そもそも半導体とは何なのかを詳しく説明できる人はそう多くありません。半導体にも種類があるということを知っている人はさらに少ないのではないでしょうか。
    この記事では半導体の種類とその特性について解説します。

    半導体とは何か?

    そもそも半導体とはどのような性質のものをいうのでしょうか。

    電気に関する物質の分類として、「導体」と「不導体(絶縁体)」があります。
    導体は金属に代表される電気をよく通す物質です。それに対して絶縁体は、ビニルやプラスチックなどの電気を通さない物質です。
    これら二つは、物体中を自由に動き回れる電子(自由電子)を多く持っているかどうかで判別されます。
    金属は自由に動き回れる自由電子を多く持っているため、電圧をかけると電子の流れ(電流)が起きます。それに対して絶縁体は、自由電子を全く持っていないため、電圧をかけても電子の流れが起きません。このため電気を通さないという状態になります。

    では、半導体はどうでしょうか。
    分類としては、絶縁体にも導体にも分けることができない物質のことをいいます。大まかにいうと電圧をかけると、ある一定の電圧までは電流が流れないですが、一定以上になると自由電子を放出して電流を起こす物質です。
    導体の要素も絶縁体の要素も持っている中間のような物質を、半導体と呼んでいます。

    「真性半導体」は高純度ケイ素

    半導体の代表的な物質はケイ素(シリコン)です。
    この半導体であるケイ素の純度をほぼ100%の99.9999…%に高めた半導体を真性半導体と呼びます。
    真性半導体はケイ素の他にもゲルマニウムも該当しますが、ケイ素のほうが地球上に存在する量が多いため、真性半導体といえばケイ素のことを指すことが多いです。

    真性半導体のキャリア密度は同じ

    真性半導体は、電気のもととなる電子と、電子が放出されると原子核にあるプラスの原子との間に相対的に差ができる「正孔」と呼ばれるものの密度(キャリア密度)が同じです。
    電子が多くなるとマイナスの電気を帯びる形となり、正孔が多くなるとプラスの電気を帯びることになります。
    真性半導体は、こうした電子と正孔の数が物質中で同数である、電気的には「中性」の半導体であるということができます。

    通常時は電気を通しにくく、熱や光などエネルギーにより導体となる

    真性半導体は、プラスとマイナスが均衡していて電子と正孔のキャリア密度が同数で非常に安定しているため、電圧をかけても電気が流れにくい物質です。
    真性半導体は温度が低い状態であれば規定の電圧をかけても電流が流れづらく、温度が上昇すると、電気を通しやすくなるという性質を持っています。
    これは熱エネルギーによって、結束していた電子が放出される現象によるものです。
    熱エネルギーによって化学物質の結束が変化するということは、化学の分野では一般的な現象です。

    現在、真性半導体の用途としては、熱エネルギーによって電流が流れやすくなる原理を利用した温度センサなどに用いられています。

    高純度ケイ素に不純物を入れた「不純物半導体」

    真性半導体は半導体として原理的な特性を持っていますが、電子機器に応用されるような性質は持っていません。

    電子機器になくてはならないものとなったきっかけは、真性半導体であるケイ素に少量の不純物を加えることで電子と正孔のキャリア密度に偏りができた「不純物半導体」が登場したことです。

    プラスの電気(正孔)の多いP型半導体と、マイナスの電気(電子)の多いN型半導体の登場により、電子機器は劇的に発展しました。

    プラスの電気「正孔」が多いP型半導体

    高純度ケイ素に、ホウ素などのケイ素よりも電子の少ない元素の物質を少量入れることで、キャリア密度としては正孔のほうが多くなります。
    ケイ素から電子が放出されても電子が少ないホウ素に取り込まれてしまいます。このため、正孔が多くなるため全体としてプラス側に傾くP型半導体になります。

    電子の数が多いN型半導体

    高純度ケイ素に、リンなどのケイ素よりも電子が多い物質を少量入れることで、キャリア密度としては電子が多いN型半導体ができあがります。
    N型半導体は、電圧をかける前から電子の数が多いため、マイナスの電気を帯びやすい半導体です。

    温度上昇により導電率が上昇する温度依存性は真性半導体と同様

    真性半導体よりも少し違った特性を持つ不純物半導体ですが、真性半導体と同じ特性も持ち合わせています。

    電子が熱や光エネルギーによって、結束していた物質から放出される特性は変わりません。そのため、温度上昇によって電気を通しやすくなる温度依存性は真性半導体と同様となります。

    光エネルギーによって電子が起きる特性を利用して、半導体は太陽光発電パネルなどにも使われています。
    太陽光発電パネルは真性半導体でも構成できますが、発電効率などを考えて不純物半導体が用いられています。

     

    P型半導体とN型半導体の組み合わせでダイオードやトランジスタができる

    不純物半導体であるP型半導体とN型半導体は単体でなく、組み合わせることで画期的な効果を発揮します。

    P型とN型の半導体を組み合わせることで、単一方向にしか電流が流れないダイオードを構成することが可能となりました。
    ダイオードはP型とN型の不純物半導体を組み合わせることで、電圧のかけ方によって電子と正孔のやり取りが止まってしまったりするため、接続した電源の極性によって電流が流れる場合と流れない場合が出てきます。

    また、P型半導体どうしの組み合わせの中間にN型半導体を挟み込んで、N型半導体に電気を流すとP型どうしで接続された部分が導通するトランジスタも発明されました。
    N型半導体の部分に電圧がかけられて電子が供給されない状態だと、電子と正孔のやり取りが停止してしまうため回路はOFF状態です。N型半導体の部分に電圧をかけると電子が供給されるため、P型半導体で挟まれた部分に電気が流れ始めてON状態となります。
    トランジスタは電子によって回路のON―OFF制御を行うことが可能となったため、電子回路や通信で使用される信号増幅回路などにも応用されました。
    同じ制御はリレーや真空管などでも可能ではありますが、トランジスタの登場により機器の小型化と省電力化が一気に進みました。

    不純物半導体の組み合わせによる制御は、動力を制御するパワーエレクトロニクスや交流と直流の変換を容易にしたことで、太陽光発電設備の送電線への連携なども行いやすくしています。
    パソコンなどの電子機器は半導体によるトランジスタよりもさらに高度な技術が用いられて小型化や高機能化を実現していますが、基礎的な部分には半導体の原料や理論が用いられています。

    半導体はもはや日常生活のいたるところに用いられていて、知らないところにも使われているほど密接に関わっています。

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    まとめ

    今や、日常生活になくてはならないものである半導体。
    設計する上で実際に半導体とは何なのかを知る必要はないかもしれませんが、種類や分類、原理などは非常に興味深いものです。基本に立ち返って、半導体の知識をより深めてみてはいかがでしょうか。


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