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    CEマーキングとは|対象国や手続きの流れ、イギリスのEU脱退に伴う対応変更について解説

    EU諸国へ製品を輸出する際、電子機器や医療機器、玩具などあらゆる分野で必要になるのがCEマーキングです。CEマーキング対応の際には、分野によって「EU指令」と呼ばれるいくつかの指令が存在し、製造者が内容を把握したうえで製品がどの指令に該当するか、適切な判断をする必要があります。

    本記事では、CEマーキングの概要をはじめ、対象国や手続きの流れ、さらにイギリスのEU脱退に伴う対応変更についても詳しく解説します。

    CEマーキングとは

    CEマーキングとは、フランス語「Communauté Européenne」の略で、「欧州の法律に適合している」という意味を表します。

    主にEU加盟国内で製品を販売する際に表示が義務付けられている、健康基準や安全基準に適合していることを示すもので、あらゆる製品をEU圏内へ輸出する際に必要になります。

    正しくCEマーキングを行うことで、販売や流通の自由が認められる一方、違反が発覚した際には厳しい処分が下るため、よく理解したうえで対応しなくてはいけません。

    CEマーキング対象国

     2022年10月現在、CEマーキングが必要な国は全部で32ヵ国です。基本的にはEU加盟国が対象となる制度ですが、EFTA(欧州自由貿易連合)加盟国や、EU加盟候補国であるトルコも含まれます。

    EU加盟国27ヵ国(イギリスは2020年1月31日をもって脱退済)

     ベルギー、ブルガリア、チェコ、デンマーク、ドイツ、エストニア、アイルランド、ギリシャ、スペイン、フランス、クロアチア、イタリア、キプロス、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、ハンガリー、マルタ、オランダ、オーストリア、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、スロバキア、フィンランド、スウェーデン

    EFTA加盟国4ヵ国

     アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス

    EU加盟候補国

     トルコ

    EU加盟候補国において、現在CEマーキング認証が必要なのはトルコのみですが、他にもマケドニア、モンテネグロ、ボスニア・ヘルツェゴビナなどいくつかの候補国があり、対応について各国の最新情報を確認しておく必要があります。

    CEマーキングの必要性

     ここでは、CEマーキングがどんな製品に対して必要か、またCEマーキングに違反した場合の罰則について解説します。

    CEマーキングが必要な製品

     CEマーキングは電子機器や医療機器、各種工作機械、産業用ロボット、玩具などあらゆる製品に必要です。

    機械指令や低電圧指令、EMC指令など、「EU指令」と呼ばれるさまざまな指令が存在し、自社製品がどのEU指令に該当するか、指令原文を読み製造者が判断する仕組みになっています。

    この際、EU当局がCEマーキングに該当すると判断している製品に対して、製造者が安易に非該当と判断してしまうと違反になってしまうケースもあるため注意が必要です。また、複数の指令に該当する場合もあり、EU指令の選定はCEマーキングの必要性を確認するうえで非常に重要なポイントです。

    CEマーキングの法的義務|罰則

     EU当局では該当地域で流通する製品に対して、安全性が担保されているか、製品のEU指令対応が適切に行われているか、監視を行っています。CEマーキングに違反していることが発覚すると、罰則として出荷・販売の停止や市場からの製品回収、製造業者の公開、罰金などが課せられる仕組みです。

    また、自社製品による事故や災害が発生した場合には、製品に欠陥がなかったかどうかEU当局によって厳しく調査されることになります。その際、CEマーキング違反が発覚すると、EU規則に違反する信頼性を欠いた企業という扱いになり、製造物責任や社会的責任といった問題に発展してしまいます。

    次項で解説する適合宣言書や技術文書は10年間の保管義務があり、EU当局からの提出要求に備えて正しく保管しておくことが大切です。

    CEマーキング対応の流れ

     CEマーキング対応の具体的な流れは以下のとおりです。

    1.指令の確認・選定

     製品がどのEU指令に対応しているか確認と選定を行います。製品によっては該当するEU指令が複数存在する場合もあるため、慎重に選定する必要があります。

    2.整合規格の選択

     選定した指令ごとに整合規格が存在するため、製品に関係する整合規格を選択します。製品によっては対応する整合規格が複数存在する場合もあります。

    3.適合性評価モジュールの決定

     適合性を評価するためにはさまざまな方法があり、製品に対して最適な評価方法を決定します。また、製品によっては「Notified Body」と呼ばれる第三者認証機関による適合性評価が必要になる場合もあります。

    4.製品試験および適合性評価

     選択した規格の内容を該当する製品が満たしているかどうか、製品試験を通じて評価を行い、不足や問題がある場合には規格をクリアするための改善・対策を実施します。また、試験・評価後には規格適合を示すテストレポートを作成します。

    5.技術文書(テクニカルファイル)作成

     試験結果や評価内容を踏まえて、製品に関する技術文書を作成します。適合性モジュールA(自己宣言)の場合は選択した規格に応じた試験や文書作成のみですが、適合性モジュールB(EU型式試験)の場合は第三者認証機関による評価が必要となります。

    6.適合宣言書作成

     技術文書によって製品がEU指令を満たしていることを確認したうえで、適合宣言書を作成します。複数のEU指令が関与する場合も、最終的には1つの適合宣言書に情報をまとめます。EU指令や規格名などを記載し、責任者によるサインを添えて書類完成となります。

    7.CEマーク表示

     CEマークは、製品上または銘板ラベル上に「見やすく」「読みやすく」「消えにくいように」表示します。CEマークの表示寸法は、最小で高さ5mm以上と定められており、製品材質やサイズの問題で対応が難しい場合は、添付文書や梱包に対して行います。

    EU脱退後のイギリスへの対応|UKCAマーキング

     これまでCEマーキングの対象国だったイギリスですが、2020年1月31日にEUを脱退したことで今後の対応に変更があります。

    2024年12月31日までを移行期間とし、期間終了まではイギリスへの製品販売にはCEマーキングを使用することが可能ですが、期間終了後はCEマーキングに代わり、「UKCAマーキング」への対応が必要です。

    UKCAマーキングは現在のところCEマーキングとほぼ同様の規定内容ですが、今後イギリスで製品を販売するためにはUKCAマーキングへの対応が必須となります。

    また、UKCAマーキングは、イギリスの中でもイングランド、ウェールズ、スコットランドの市場に対して適応されるもので、北アイルランドについては対象外です。北アイルランドでは今後もCEマーキングを使用することになるため、イギリスの中でもどの地区への輸出であるかという点に注意しましょう。

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    日本国内で販売中の製品をEU圏内で販売する場合の対応

     すでに日本国内で販売中の製品をEU圏内で販売する際には、専門家や専門企業へ依頼し、CEマーキング対応における製品分析を行うことを推奨します。

    例えば、EU圏内では日本国内と電源電圧が異なるため、一次側電源のトランスや使用部品の変更など、海外電圧への対応が必要になる場合があります。

    外観から把握できる内容はもちろん、外側からは見えない内部仕様についても規格と照らし合わせることで、EU圏内での販売が可能な構造であるか確認することが重要です。

    また、よくある間違いとしては、「日本国内で販売中の製品において、CEマーキング適合部品のみで構成されている場合には、CEマーキング適合製品として取り扱ってもよい」という認識です。構成部品に関わらず、製品そのものの安全性をCEマーキングに基づいて評価しなければいけないため、どんな製品でも必ず手順に基づいた適切な対応を行ってください。

    まとめ

     EU圏内への製品輸出の際には、CEマーキング適合が義務となりますが、製造者自身で内容を把握し製品ごとに適切な対応を行う必要があります。

    また、CEマーキングに対する違反が発覚すると、EU当局によって厳しく罰せられ、企業としての信頼を失う可能性もあるため、対応に間違いがないよう十分に理解することが大切です。

    なお、EUを脱退したイギリスへの製品輸出の際には、今後CEマーキングに代わりUKCAマーキングへの対応が義務付けられますが、UKCAマーキングは現状CEマーキングとほぼ同一内容であり、これまでCEマーキングが必要だったほとんどの製品に適応されています。


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