電圧と電流、そして抵抗。電気の世界においてこの三つは切っても切れない関係にあります。皆さんもご存知のオームの法則、それぞれの電気用図記号、電圧が最も身近にあるコンセント、世界の電圧の違いについて分かりやすくご紹介します。
電圧・電流・抵抗の関係
電気に関わる知識や作業において、電圧・電流・抵抗の三つは必ず考えなければならない三大要素です。これら三つにはどのような関係が成り立つのでしょうか。
電圧・電流・抵抗とは
電圧と電流、そして抵抗は、水が流れるときの動きや状況によく例えられます。
電流が「流れる水」だとすると、電圧は「水が流れる水路の高低差」と考えることができます。高低差が大きければ大きいほど、水の流れる勢いは強くなり、たくさんの水が流れます。しかし、この水路の途中に水車が設置されていたとしたらどうでしょう。軽く回転する水車であれば水の流量がそれほど落ちることはありません。もし回転の重い水車だったら、そこで水の勢いはなくなり流量も減ることになります。抵抗は、この水車と同じ働きをするものです。
このように電圧は水路の高低差、電流は流れる水、抵抗は水車と考えるとそれぞれの働きが理解しやすいのではないでしょうか。また、このとき、水路は回路を作る電線、一度流れた水を元の場所まで汲み上げるポンプを電源と考えることができます。
電圧・電流・抵抗について、それぞれどのようなものか何となくはつかめたでしょうか。これらのことを踏まえて、電圧・電流・抵抗について簡単にまとめると次のようになります。
- 電圧
回路に電流を流そうとする働きのこと。電圧の大きさを表す単位は[V](ボルト)。回路図や式では「V」で表される。 - 電流
回路内の電気の流れのこと。電流の大きさを表す単位は[A](アンペア)。回路図や式では「I」で表される。 - 抵抗
回路を流れる電流の流れにくさ。抵抗の大きさを表す単位は[Ω](オーム)。回路図や式では「R」で表される。
オームの法則
電圧・電流・抵抗には、ある決まった関係が成り立っています。その関係性を表しているのが、オームの法則です。
「電流の強さは電圧に比例し、抵抗に反比例する」
これがオームの法則です。オームの法則は、ドイツの電気学者オームが発見した関係性で、電気学において最も有名な法則と言えるものです。後に、さまざまな発明を成し遂げるエジソンも、このオームの法則を駆使することにより多くの発見と発明品を生み出したと言われています。
このオームの法則を、式で表すと次のようになります。
「電流I=電圧V÷抵抗R」(I=V/R)
または
「電圧V=電流I×抵抗R」(V=IR)
実際の現場では、電源電圧と負荷の抵抗値が決まっている状況からどれくらいの電流が流れるのかを求める場面が多くなります。そのため、上の式を覚えておくと当てはめて考えやすいのではないでしょうか。
電圧・電流・抵抗を表す記号
回路図では、電圧や電流を発生させる電源、それらの流れ方を変化させる抵抗器やスイッチ、流れ方を計測する計器類について、決まった表し方をします。それが電気シンボルまたは電気用図記号と呼ばれるものです。
これらは、JIS(日本産業規格)によって表記の仕方が標準化されています。電気用図記号は、JIS C 0301に規定された日本独自の表記の仕方が長らく使われていました。しかし、IEC(国際電気標準会議)の規格に整合するため、1997年と1999年の2回に分けて国際標準に合わせたJIS改訂が行われ、JIS C 0617となっています。
JIS C 0617によって規格化されている電気用図記号には、次のようなものがあります。
- 直流電源
- 交流電源
- 抵抗器
- スイッチ
- 電圧計
- 電流計
- 変圧器(磁心入2巻線変圧器)
- 接地
世界で違う電源電圧
壁に埋め込まれていたり、柱に取り付けられたりしているコンセントにプラグを差し込むと、電気機器に電源が接続されます。これは、電源として使用できる電圧が供給されている状態です。
日本では単相100Vや三相200V、条件によっては単相200Vなどが使用されています。日本向けの家庭用電化製品は、一般的に100Vで動くように設計されているものがほとんどです。では世界でもこの電化製品が使用できるのかというと、実は100V用の電化製品が使える国はほとんどありません。世界各国では、異なる電圧が家庭用または産業用電源として使われているのです。
例えばアメリカでは、単相115/230V・三相230Vが使われます。日本の100Vはアメリカの115Vが元になっていますが、電球が長持ちするようにと若干電圧を落とし100Vが基準になったと言われています。計算が容易な点も受け入れられた要因ではないでしょうか。
オーストラリアは世界でも高い電圧を基準としている国です。単相240V・三相415Vとなっています。これはヨーロッパの影響によるものです。ヨーロッパの国々に目を向けると、ドイツ・フランス・オランダ・イギリスなどは単相230V・三相400Vと共通しています。
アジアでは、台湾の単相110/220V・三相220/380Vのように一部で日本と近い電圧が使われていますが、やはり単相220V・三相380Vを使う国が多く見受けられます。
このように世界を見渡すと、アメリカ・カナダ・日本は単相100~120V・三相200~240Vを基準とする「アメリカ型電圧圏」と言えます。一方で、ヨーロッパやオセアニア諸国は単相220~240V・三相400Vを基準とする「ヨーロッパ型電圧圏」です。こうして諸国の電圧事情を見渡してみると、日本は特に低い電圧を使っている国だということが分かります。
また、アメリカ型電圧圏では60Hzの周波数が使われているのに対し、ヨーロッパ型電圧圏では50Hzが使用されます。では日本はというと、ご存知のように東日本は50Hz、西日本は60Hzと、一つの国の中で異なる周波数が使われる珍しい国です。東日本と西日本でそれぞれドイツ製の発電機とアメリカ製の発電機を輸入して使い始めたことから、このように分かれるようになったのです。
使用する電圧の低さ、異なる周波数が存在するという二つの面で、日本は世界でも珍しい「電源のマイノリティ」であると言えます。
基本の考えは電圧・電流・抵抗とオームの法則から
電圧・電流・抵抗の意味と関係性、それらに関する電気用図記号、そして世界の電圧はどのようになっているのかをご紹介しました。
このように、世界ではさまざまな電源電圧が使われていて、さらにコンセントのプラグ形状も多種多様です。日本は世界の中でも低い電圧を使っていますが、これは木造建築が多く高電圧は危険だと考えられたのが理由と言われています。また、電気が普及する当初は電灯への仕様が主目的であり、100Vを超える電圧では電球が切れやすかったからという説もあります。いずれも、同じ抵抗に対して高い電圧をかければ高い電流が流れるというオームの法則に即した考えから、電圧が決まったと考えられます。
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参考: