2020年1月のイギリスのEU脱退に伴い、イギリスに製品を輸出する際には従来の「CEマーキング」に代わり「UKCAマーキング」による認証が必要となりました。UKCAマーキングは、現状CEマーキングとほぼ同等の内容です。しかし、移行期間や猶予措置といった特例のほか、細かな相違点もあるため、認証時には適切な判断が必要です。
本記事ではUKCAマーキングの概要として、対象となる地域や認証時の流れ、さらにEU圏内におけるEN規格との関係についても解説します。
UKCAマーキングとは
UKCAマーキングとは「United Kingdom Conformity Assessed (Marking)」の略称で、あらゆる製品をイギリス市場へ輸出する際、安全基準に適合していることを証明する表示です。
イギリスのEU脱退後、これまで同国への製品輸出・販売の際に義務づけられていたCEマーキングによる認証が、今後はUKCAマーキングに変更になります。
現状、UKCAマーキングの内容はCEマーキングの条件・適合性とほぼ同等であり、各製品が該当する英国規則を確認し、適合宣言書を作成したうえで製品にUKCAマーク表示を行います。
UKCAマーキングの対象地域
UKCAマーキングは、イギリスの中でもグレートブリテン島(イングランド、ウェールズ、スコットランド)の市場に対して適応される制度で、北アイルランドについては対象外です。
北アイルランドでは今後もCEマーキング、または新たに導入されるUKNIマーキングによる認証が必要になります。
UKCAマーキングへの移行期間
イギリスのEU脱退に伴い対応が開始されたUKCAマーキング制度は、本格的な対応に向けて移行期間が設定されています。
2024年12月31日までを移行期間とし、期間終了まではイギリスへの製品輸出・販売はCEマーキングによる認証が可能です。移行期間終了後の2025年1月からは、UKCAマーキングによる認証が義務づけられることになります。
また、通常は製品や包装への直接表示が必要となる輸入者情報ですが、一部猶予措置として、2027年12月31日までにEUおよびEFTAから輸入される製品に限り、添付書類やラベルに情報を含めることが許可されていましたが、すべての国からの輸入を対象に恒久的に認める方針となりました。
そのほか、2024年12月31日までにEU側でCEマーキング適合性評価が行われた製品についても、2027年12月31日までの使用期限で、UKCAマークの貼付を認めることになりました。
出典:JETRO「UKCAマーク表示義務化の2年延期を発表、一部猶予措置も延長へ」
出展:JETRO「UKCAマークに関するさらなる緩和措置発表、電子ラベルも導入へ」
UKCAマーキングの必要性
ここではUKCAマーキングがどのような製品に必要か、また違反した場合の罰則など、CEマーキングとの関連性を踏まえて解説します。
UKCAマーキングが必要な製品
UKCAマーキングはCEマーキングと同様に、電子機器や家電製品、工作機械などあらゆる製品に対して必要な制度です。
ただし、以下についてはUKCAマーキング特有の規制となり、たとえ移行期間中であってもCEマーキングによる対応ができません。
- 化学物質や医薬品などオールドアプローチによって規制されている商品
- 英国規則によって規制されている商品
- 医療機器や建設資材などの特殊製品
UKCAマーキングに違反した際の罰則
UKCAマーキングはCEマーキング同様、違反が発覚した際には以下の罰則が課せられます。
- 出荷、販売停止
- 製品回収
- 製造業者の公開
- 罰金
注意すべき点は、移行期間中であってもUKCAマーキングはEU圏内においては無効であり、CEマーキングによる認証が必要であることです。
また、今後起こり得る問題としては、移行期間終了後にCEマークのみが表示された製品をイギリス市場にて継続販売してしまうケースです。UKCAマーキングによる認証がされていなければ、罰則の対象になります。
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UKCAマーキング認証の流れ
UKCAマーキング認証の流れは、以下のとおりです。
内容としてはCEマーキングとほぼ同様ですが、UKCAマーキングはEU指令ではなく英国規則によって製品カテゴリごとの規制が定められています。また、CEマーキングでは第三者認証機関として「Notified Body」が、UKCAマーキングでは「Approved Body」が、それぞれ審査を担います。
1.対応する英国規則の確認
製品がどの法規に対応しているか確認、選定を行います。
2.整合規格の選定
選定した製品ごとに存在する整合規格「BS規格」を選択します。
CEマーキング認証の際に選択する整合規格は「EN規格」と呼ばれ、EU圏内の統一規格として定められています。一方、UKCAマーキング認証の際にはイギリス独自の国家規格である「BS規格」が整合規格として用いられますので、認証時には注意が必要です。
3.適合性評価モジュールの決定
製品に対する最適な評価方法を決定します。その際に「Approved Body」と呼ばれる第三者認証機関による評価が必要になる場合もあります。
現状、ほとんどの製品において第三者認証機関による評価は不要であり、適合性の評価を製造者自身が行う「自己認証」という方法が一般的です。しかし、医療機器などリスクの高い製品は第三者認証機関による評価が必須となり、コストや評価期間が通常よりも増加します。
4.製品試験および適合性の評価
整合規格(BS規格)の内容を満たしているか、製品試験や適合性の評価を行います。
5.技術文書の作成
試験結果や評価を踏まえて、製品に関する技術文書を作成します。
6.適合宣言書の作成
技術文書によって製品が法規に定められた基準を満たしているか確認し、適合宣言書を作成します。
7.UKCAマーク表示
認証後、製品にUKCAマークを表示します。UKCAマークは高さ5mm以上のサイズで判読可能な状態で表示するように定められています。
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EN規格
EN規格とは「European Norm」の略称で、欧州標準化委員会(CEN)によって定められたEU圏内の統一規格です。
CEマーキング対応の際には、製品が該当するEU指令を確認したうえで、EU指令ごとに存在する整合規格を選択します。この整合規格が「EN規格」です。EN規格は、各EU指令で求められている基準を満たしていることを確認する技術的手段として策定されています。
前述のように、EU脱退に伴いイギリスでは今後UKCAマーキングによる認証が義務づけられます。同国内では、EU指令やEN規格ではなく英国規則およびBS規格に基づいた認証が必要です。
しかし、UKCAマーキングへの移行期間終了後はイギリス国内でCEマーキングによる認証ができず、移行期間内でもEUがEU指令の内容を変更するなど英国規則の要件と相違が生じた場合には、CEマーキングとUKCAマーキング双方においてEN規格、BS規格それぞれによる対応を確認する必要があります。
まとめ
イギリスに製品を輸出する際には、今後CEマーキングに代わりUKCAマーキングへの対応が義務づけられます。
UKCAマーキングは、現状CEマーキングとほぼ同等の内容ですが、EU指令ではなく英国規則に基づいた認証になるため、製品により設けられている独自の規制内容に注意が必要です。
移行期間や猶予措置など、全面的な移行のタイミングが徐々に近づいており、移行期間中であってもEU指令およびEN規格の内容に変更が生じた場合には、改めてUKCAマーキング特有の対応を検討する必要がありますので、EU圏およびイギリスへの輸出の際はくれぐれも注意が必要です。
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Guidance
Using the UKCA marking
https://www.gov.uk/guidance/using-the-ukca-marking
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