1. HOME
    2. /
    3. 制御盤
    4. /
    5. ノイズフィルターの役割と仕組み

    ノイズフィルターの役割と仕組み

    ノイズフィルターは、電気的なノイズを除去する役割を担っています。インバータの普及に伴い、インバータが設置される前からある計装機器や監視用信号ラインにノイズが重畳して、監視機器での測定信号が実際の状態と異なってしまうのがノイズによる悪影響です。

    本記事では、ノイズの影響を除去するノイズフィルターの仕組みや、ノイズフィルターを選ぶときのポイントについて解説します。

    ノイズフィルターとは

    ノイズフィルターとは、ノイズを取り除いて計装機器を正常に動作させるためのものです。
    ここではノイズフィルターの効果や仕組みについて解説します。

    ノイズフィルターの役割・効果

    そもそも電気的なノイズとはどのようなものなのでしょうか。

    インバータを使用してモーターのような動力を駆動させると、通常の商用電力とは異なる形でモーターに電力が供給されます。その上で、モーターの回転速度を変更するために電源の周波数を変化させています。
    このとき、インバータでは交流電力である商用電源を一旦直流電力に変換して、再度周波数の異なる交流電源として出力しています。誘導電動機や同期電動機などの交流モーターは、入力周波数が変わると回転速度が変わります。
    インバータを導入することにより、商用電源で固定回転数だったモーターを簡単に速度変更できるモーターに変えられるのです。

    これによって、モーターの周波数を簡単に変化させることができるのですが、交流電源を直流に一度変換し、再び交流に変換することで、交流電力の波形を切り刻むような加工をしていることになります。具体的には、インバータが電源系統に入ることで交流波形が正弦波の状態から崩れるように変化し、電源品質に影響を及ぼします。

    こうしたいびつな交流電源の波形には、商用周波数の電源のほかに、商用周波数の整数倍の高い周波数の電力が重畳することで発生します(これを高調波の重畳といいます)。このような高い周波数の小さな電力は、極めて高い周波数成分も含まれており、この部分は電波となってさまざまな線に空気中を伝って伝搬するものもあります。
    これがノイズとなり、計装信号線などに入り込んで計測誤差などの悪影響を及ぼします。機器の小型化が進んでいる中で、ノイズによる影響も大きくなってきています。

    このノイズを取り除く役割を果たしているのが、ノイズフィルターです。ノイズフィルターは、主にインバータからのノイズを取り除き、計装機器を正常に動作させることが役目となります。

    ノイズフィルターの原理・仕組み

    前述のように、ノイズの多くは高い周波数の小さな電力です。この高い周波数の電力を動力線や計装線に混入しないようにする必要があります。

    ノイズフィルターは、高い周波数の電力をアース線に逃がすような形で、ノイズのない正常な信号を計装機器に送る構造となっています。
    ここで使われるのがコンデンサ素子です。コンデンサ素子は、低い周波数の電気は通さずに、高い周波数の電気を通す特性があります。信号線とアース線の間にこのコンデンサ素子を接続することで、高周波数成分の電気のみをアース線に逃がす構成をとっているものが、もっとも簡単なノイズフィルター(ローパスフィルター)の原理です。

    また、逆に低周波数のノイズが問題となる場合もあります。
    それに対しては、低周波数のノイズをアース配線に逃がすようなコイル素子を用いたフィルター(ハイパスフィルター)を取り付けます。

    用途とノイズの種類によって、適用されるノイズフィルターが異なります。

    ノイズフィルターの使い方

    ここからは、ノイズフィルターの使い方について説明します。

    アース配線

    前述のように、ノイズフィルターはコンデンサ成分によって効果を発揮しますが、接続するアース配線が長くなると、インダクタンス成分が多くなってしまいます。
    コンデンサ成分はインダクタンス成分によって打ち消しあってしまいますので、ノイズフィルターの効果が薄れてしまいます。
    またアース線が細いと、同様にインダクタンス成分が大きくなってしまいます。

    ノイズフィルターにアース線を接続する場合は、できるだけアース配線の距離が短く、太い配線のものを選定するようにしましょう。

    入出力配線

    ノイズフィルターを設置する際には、入力側の配線と出力側の配線はできる限り離隔するようにしましょう。

    省スペースのために、入力配線と出力配線の距離を縮めてしまうような配置を行ってしまうことも多いかもしれません。しかし、ノイズフィルターで取り除いた出力側の配線に、まだノイズのある入力側の配線が近づくと、出力側の配線に空気中を伝って伝搬してしまう可能性があります。

    ノイズフィルターの入出力線は直線的に配置するなどして、できるだけ離隔距離を保つようにしましょう。

    ノイズフィルターを選ぶ上で見ておきたい項目

    ノイズフィルターも電気機器同様、さまざまな仕様があります。
    取り除くノイズの種類のほかにも、一般的な電気機器と同様に、定格電圧と定格電流があります。その点を注意して選定しましょう。

    定格電圧

    使用する状況により、交流100Vラインや制御電源の駆動する直流24Vラインに設置される場合など、さまざまな電圧に適用されます。実際にノイズフィルターにも対アース間で電圧が印加されるため、印加電圧に耐える必要があります。

    この仕様はノイズフィルターの定格電圧で確認できます。定格電圧がAC100VであればAC100Vまでの電圧を使用することが可能です。直流の場合も、DC24Vであれば、同様に最大DC24Vまでの電圧まで使用することが可能です。

    電圧の種類も交流、直流などで分けられます。また交流も三相用、単相用でそれぞれ異なる仕様を持っています。

    定格電流

    ノイズフィルターが取り付けられる場所によって、ノイズフィルターに流れる電流が異なります。計装信号ラインに取り付けられるノイズフィルターなら、大きな電流がノイズフィルターには流れません。逆に動力回路に取り付けるようなノイズフィルターでは、大きな電流が流れます。

    定格電圧以外にも、ノイズフィルターを通る電流値によって、ノイズフィルターの大きさにはさまざまな種類があります。
    ノイズフィルターを設置する場所によってノイズフィルターの定格電流を検討する必要があります。

    ノイズフィルター以外でのノイズ対策

    ノイズの除去は、ノイズフィルター以外の方法でも可能です。ここでは代表的な二つの例について説明します。

    動力線と制御線の違いを意識

    制御盤には、動力回路と制御回路が存在します。制御回路のみを持つ制御盤や動力回路のみを持つ動力盤という形であれば、こうした違いを考慮する必要はありませんが、制御回路と動力回路が混在する動力制御盤であれば、このような違いを十分に考慮して対策をとる必要があります。

    動力線は主にモーター配線などへ接続される動力を供給する配線で、制御線はPLC回路や計装機器に接続される弱電流電線になります。ノイズの主な発生源はインバータのため、インバータが接続されている動力線と、ノイズの影響を受けやすい計装機器などが接続されている制御線を制御盤内でも離隔するだけでも、ノイズの抑制効果が得られます。

    インバータからのノイズは空気中を伝搬することがあります。その場合でも配線同士の距離が離されていれば、それだけ伝わりにくくなります。

    関連記事▼
    動力線と制御線の違い―制御盤内のノイズを防ぐには


    規格の企画2

    EMC対策

    IoTや高度計算技術などの制御機器の技術向上により、複雑な計算を行う際に、コンピュータなどからもノイズが発生することが多くなりました。これは、コンピュータは直流駆動で、動力用インバータのように商用交流を直流に変換して電力を供給する箇所が増えてきたことによります。また、コンピュータの高速処理によるスイッチング処理もインバータとは異なったノイズを発生させるため、こうしたノイズも増加しています。このため、ノイズが発生する機器と言えば、今まではインバータでしたが、昨今の状況では、インバータだけということではなくなりつつあります。

    また、古い制御機器や計装機器は、ノイズの発生する環境を想定して製作されていないため、インバータなどが新たに導入された場合にノイズの影響を受けやすくなっていることが多いです。

    このように、発生源の機器自体がノイズの発生を抑える、またその影響を受ける機器自体がノイズの影響に強くなれば、ノイズの影響を軽減することができます。

    ノイズの発生を100%抑えることができないということや、ノイズを発生させる機器が増えてきていることから、ノイズの影響を受けにくくするためにノイズ環境に適応した機器を製作するということが、EMC(電磁環境両立性)という考え方の基本です。

    JISやIECといった公的な規格によって、ノイズを発生させる機器は一定基準以下のノイズ発生にとどめる、ノイズの影響を受ける機器は一定基準までのノイズに耐用できる、という基準が定められています。
    この規格に適合した機器であれば、一定基準のノイズ環境下なら、ノイズによる影響が発生しないということを目的に定められています。

    EMCの詳細記事はこちら▼
    EMCによる電磁波との付き合い方―ノイズ対策とその手順


    技術ライブラリ1 規格に適合したスイッチギア及びコントロールギアの製作 IEC61439の適用
    技術ライブラリ1 規格に適合したスイッチギア及びコントロールギアの製作 IEC61439の適用

    制御盤や電子機器におけるノイズ対策

    ノイズは通常の電気以上に目に見えないものであるため、制御盤や電子機器のノイズ対策には多くの経験やノウハウを要します。ノイズの発生源の突き止め、それに対して適切な対策をとることは専門的な知識がないと難しいといえるでしょう。実績や専門知識を持った技術者による専門的なコンサルティングで対策を行いましょう。 
     
    リタールには盤のノイズ対策を考慮したアクセサリーやソリューションがあります。そのような製品をお探しの際には、ぜひご相談ください。


    最適な電磁両立性のために
    リタールのEMCコンセプト


    『リタールの製品は世界中のどんなところで使われているの?』
    リタールの製品は世界中のどんなところで使われているの?