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    動力線と制御線の違い―制御盤内のノイズを防ぐには

    制御盤の配線で、動力線と制御線はどういった目的の違いがあるのでしょうか。また、ノイズ対策を考えるときに動力線と制御線を意識する必要があるのはなぜでしょうか。動力線と制御線の違い、その違いによる盤内のノイズ対策について解説します。

    動力線と制御線の違い

    制御盤内に使われる配線は、その役割から動力線・制御線・信号線・通信線に分けることができます。

    このうち、動力線は機械や電子機器を作動させるために必要な電力を伝達するための電線です。例えばモーターであれば、制御に関するものが一切ない場合、動力線を接続した時点で延々と動き続けることになります。

    こういった機械や電子機器のオンとオフを条件によって切り替えたり、決められた値の出力をするように命令を出したりするためには、制御回路が必要になります。こういった制御に関する伝達を行っているのが制御線です。

    制御とは、ある条件が満たされた場合に特定の作動をさせる仕組みのことです。では、ある条件とはどのように制御回路に入力されるのでしょう。その条件を満たすための判断材料となる情報、すなわち信号を伝えているのが信号線です。信号線はリード線と呼ばれることもあります。

    制御によって接続と切断を行っているのは、機械や機器を動かすための動力線だけではありません。電話回線やインターネット回線も含まれます。また、近年ではIoTの普及により機械や機器の動作状況を常に監視する仕組みも増えています。通信線は、こういった通信を行うための電線です。

    例として、機械内部の温度が70℃に達したときに冷却ファンが回り、その様子が別の箇所にあるパソコンに表示されるという空冷システムで考えてみます。この回路では、冷却ファンに使用するモーターの定格電流が大きく、温度調節器内部リレーの定格をオーバーしているため、別にソリッドステートリレーが使われています。

    温度センサーで温度を感知し、そこから温度調節器に温度に関する情報が入力されます。この、温度センサーと温度調節器をつないでいるのが信号線となります。温度が70℃に達すると、温度調節器は内部で出力のための接点を閉じ導通させます。温度調節器から出力された制御信号は、ソリッドステートリレーへと入力されます。この間をつないでいるのが制御線です。ソリッドステートリレーの出力端子は冷却ファンのモーターへと接続され、リレーが働くとモーターに電力を送ります。これが動力線です。また、これらの作動がゲートウェイを通してLANケーブルに接続され、外部のパソコンに情報が送られていたとすると、このLANケーブルが通信線となります。

    このように、動力線・制御線・信号線・通信線はそれぞれに目的があり区別されますが、実際の現場では厳密に呼び分けられているわけではありません。通信線と制御線は同じ目的のものとして扱われることもあります。どちらも制御の条件を満たすための信号を伝えるための電線であり、区別が難しい場合もあるためです。

    また、外部との通信機能やPCとの連動を行う場合を除き、機器の制御を目的とした制御盤に通信線は配線されません。PLCの管理・メンテナンスを行う場合も、専用端末をその場で接続することが多く、盤内に通信線を常時接続していることはありません。

    そのため、多くの制御盤の配線は動力線と制御線で構成されているといえ、この二つの配線によって制御盤内の機器と盤外の機械や機器は接続されているといえます。

    制御盤配線でノイズが発生する理由

    制御盤内の配線を構成する動力線と制御線ですが、この二つが影響することにより生まれる問題もあります。それがノイズです。

    制御盤内でノイズが発生する理由として、盤内に設置する機器からノイズが発生することもありますが、最も多いのはスイッチングによる電線の電磁誘導です。制御信号のみを伝達する制御線に比べ、機械を動かすための電力を伝える動力線には大きな電流が流れます。特に大型モーターのような動力機械は起動時に大きな電流が必要となります。

    このとき、動力線に流れる電流の変化が磁界を生み、磁界を別の電線が横切っていればそこに起電力が発生します。これが動力線の電磁誘導によってノイズが生まれる仕組みです。こういったノイズは制御線や通信線を流れる電気の特性を変化させ、さまざまな部分に影響を与える可能性があります。

    このほか、ソレノイドバルブ(電磁弁)はその名の通り電磁石を応用した仕組みとなっているため、磁界と起電力が生じノイズの原因となりやすいという点も注意が必要です。

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    電磁誘導によるノイズを防ぐには

    では、制御盤内で発生する電磁誘導によるノイズを防ぐには、どのような方法があるのでしょうか。対策として次のようなことが考えられます。

    • 大型の電磁弁は制御盤の外に設置する
      大型の電磁弁は強力な磁界を発生させます。これを盤外に設置することで、配線の密集している盤内ではノイズによる影響を大きく減らすことができます。
    • 動力線と制御線の交差をできる限り少なくする
      動力線の先に接続されている機器のスイッチングにより電磁誘導が発生し、交差する制御線に起電力が生じノイズとなります。動力線と制御線が交差する場所はできる限り少なくしましょう。
    • 動力線と制御線はなるべく離す
      動力線と制御線を別ルートで配線することを心がけ、なるべく離すようにしましょう。
    • 動力線と制御線を遮へいまたは隔離する
      動力線と制御線を近い位置で並行配列する場合は、遮へい板や電線管を用いて遮へいしたり、隔離したりすることでノイズの影響を防ぐことができます。
    • 制御線にツイストペア線・シールド線を用いる
      ツイストペア線やシールド線はノイズが電線導体に流入するのを防ぐ働きを持つケーブルです。これらを使用することでノイズを減らすことができます。
    • ノイズフィルターを設ける
      インバーターやソレノイドバルブなど、ノイズを発生させやすい機器に接続する配線にはノイズフィルターを設置することも有効です。

    制御盤配線は動力線と制御線の違いを意識することが大切

    動力線と制御線のそれぞれが持つ役割、この二つが影響することで発生するノイズへの対策をご紹介しました。

    制御盤内の配線は、その電線が動力線なのか制御線なのかを意識することが大切です。動力線と制御線でそれに適した太さの電線を用いるのはもちろんのこと、色分けをして違いが見えるようにしておくことも基本の配線方法です。色を変えることで動力線と制御線の隔離・遮へいが考えやすく、ノイズの影響が少ない配線ルートを意識できます。

    リタールのEMCコンセプト

    Emvkonzept

    電場、磁場および電磁場は、エンクロージャーや機器の周りも含め、ありとあらゆる場所に存在します。

     

     

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    参考:

    CT