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    制御盤の熱対策に最適な冷却方式の選び方_コスパに優れた定番のフィルターファンユニット

    長時間スマートフォンやPCで遊んでいたら、本体が熱を持って動作が不安定になった。誰もがそんなストレスを感じたことがあると思います。当たり前の話ですが、あらゆるコンピュータは発熱し、それを防ぐために放熱や冷却などさまざまな熱対策が行われています。制御盤も例外ではなく、機械の制御のためのコンピュータとして熱問題は避けては通れない問題です。ファンで十分と思われがちですが、一概にもそうとは言えず、制御盤の発熱度合いや使用環境などに応じてさまざまな手段を使い分けたり、組み合わせたりして最適な熱対策を施すことが重要です。そこで今回は、制御盤の熱対策をどうすれば良いかを紹介します。

    内から外から熱に襲われる制御盤

    制御盤を悩ます熱には、内部から発生する熱と、外部から入ってくる熱の両方があります。
    制御盤のなかには、電源やブレーカー、リレー、PLC、スイッチなど多くの電気機器が部品として取り付けられています。それらの電気機器に電気が流れると、内部の電気抵抗によって熱が発生します。それ単体で、ひらけた場所であれば、その発熱量は微々たるもので無視できるレベルですが、こと制御盤となると狭い密閉空間に同じような電気機器が密集しており、まるで空調の効いていない満員電車のような蒸し風呂状態。内部の温度は周囲に比べて10℃から20℃高くなると言われ、それだけで電気機器にとっては過酷な環境です。

    また屋外に設置される制御盤が増加していますが、屋外制御盤の場合は直射日光によって外から熱が加えられ、内部と外部の両方から熱を受け、屋内よりもより一層厳しい熱環境にさらされます。屋内であっても熱処理工程等の近くに置かれる場合には周辺温度が高くなります。

    10℃上昇すると電気機器の寿命は半分に

    制御盤内部の温度が高くなると、電気機器の稼働が不安定になるだけでなく、寿命にも大きな影響を及ぼします。
    温度による化学反応の速度を表し、製品寿命等の推測に使われる「アレニウスの法則」では、温度が10℃上昇すると機器の寿命は半減すると言われており、機器の安定稼働と長寿命化のためにも、熱対策はとても重要となります。特に比較的発熱量が多いのは、変圧器、インバータ、PLCなど制御機器、配電コンポーネント、サーバ、モニタと言われます。近年は、PLCをはじめ機器が高機能化していることで発熱量が大きくなり、一方で機器自体は精密化していることでデリケートになっており、その意味でもこれまで以上に神経を尖らせて対策を行う必要があります。

    どんな熱対策機器がどこに使われているか?

    熱対策と一言で言っても、制御盤の熱環境は大きく異なり、安定稼働を実現するためには、それぞれに適した対策を施すことが重要となります。
    例えば、工作機械、食品加工工場の製造ライン、自動車のプレス工場の製造ライン、鋳造工場、風力発電システムなど様々な製造現場や製造ラインの状況によって、チラー、水冷式熱交換器、クーリングユニット、空冷式熱交換器、フィルターファンユニットをどのように実装するかは、取り付ける機械の規模と内部の電気機器、設置場所によって大きく異なってきます。

    最適な熱対策機器の選び方の4ステップ

    では、どんな基準で熱対策機器を選べばいいのでしょうか? これは4ステップで選定することができます。

    ①盤内の発熱量を把握

    まずは盤内の発熱量がどれくらいあるかを計算します。盤内に取り付ける各電気機器について、メーカーのウェブサイトやカタログから発熱量を調べ、それらをすべて足します。特に発熱量の高いインバータや変圧器、サーボモータ等を中心に確認します。将来的に仕様変更がある可能性もあるので、実際の合計量よりも少し多めに出しておくのがおすすめです。

    ②設置環境の把握と熱放散の算出

    続いては設置環境の把握です。温度環境や盤の設置箇所、粉塵やオイルミストの有無などを把握し、さらに「熱放散(Qs)」の値を計算します。熱放散とは盤から周囲の空気に対してどれだけ熱をやりとりするかの能力で、つまりは「人工的に何も手を加えない状態で、制御盤がどれだけ熱を外部に放出するか、冷却するか」の数値となります。

    これは計算式で求められ、制御盤内をどれだけの温度にしたいかという「最大許容盤内温度(Ti)」から「最大周囲温度(Ta)」を引いて導き出される「盤内と周囲の温度差(△T)」と、「筐体の有効面積(A)」、「熱伝達係数(熱貫流率 k)」を掛け合わせることで算出できます(Qs=△T×A×k)。

    ③熱計算をして必要な冷却能力を算出

    発熱量と熱放散が算出できたら、あとは必要な冷却能力を算出するだけ。制御盤が発する熱である①発熱量から、制御盤が自然に冷える能力である②熱放散を引くことで、必要となる冷却能力が求められます。

    ④選定フローに則って適切な手段・機種を選ぶ

    必要な冷却能力が分かれば、あとは適切な手段・機種を選ぶだけ。すでに選定フローがあり、これを使うことで簡単に選定できます。

    例えば、制御盤の周囲温度が内部温度よりも高い、つまりは暑い環境下で使う制御盤の場合、冷却用の水が用意できれば「水冷式熱交換器」を、用意できなければ冷媒を使用したコンプレッサー式の「盤用クーリングユニット」が適しています。

    逆に制御盤の周囲温度が内部温度よりも低い場合は、内外の温度差が大きければ自然放熱、小さければ外気を活用することとなります。外気がきれいで内部に取り込めるようなら、制御盤に「換気口」や「ファン」を取り付けて換気して温度を下げ、オイルミストや粉塵があるような外気が汚れている環境であれば、内部に空気を取り込まず冷やせる「空冷式熱交換器」が適しています。

    このように利用環境や状況に応じてフローに回答していくだけで、どの冷却手段が適しているかをスムーズに見つけることができます。

    費用対効果が高いファンによる冷却方式

    設置環境に応じてさまざまな冷却手段と機器がありますが、一番汎用的なのが、ファンで外気を取り込んで空気の流れを作り、強制換気で温かい空気を排出して内部を冷やす方法です。グリルやパンチングメタルで通気口を作るだけの自然換気よりも冷却能力が高く、熱交換器や盤用クーラー等に比べると安価で費用対効果が高く、最も広く多く使われています。

    通気口は吸気口と排出口の2カ所を必ず設ける必要があり、温かい空気は上に流れていくので、冷たい空気を取り込むファンは制御盤の下部に、排気口は上部に配置し、自然の空気の対流を利用して排熱するとより効果が高まります。

    ファン利用時の注意点 埃や水の内部侵入

    ファンを使う際、気をつけないといけないのが、外気を取り込む際、埃や水も一緒に内部に入りこんでしまうこと。内部の電気機器は精密機器で水や埃に弱く、万が一、内部に溜まったりすると電子機器の故障や漏電、最悪の場合、発火もあり得ます。せっかく制御盤の設計段階で防水防塵に即した設計をしても、開口部から埃と水が入り込んでいたら意味がありません。
    ファンはもちろんのこと、グリルやパンチングメタル等で外部空気を取り込む場合、必ずフィルターやフードを使い、空気中の埃や水を取り除くことが不可欠です。

    ファンとフィルター一体型「フィルターファンユニット」

     ファンで冷却を行うにはフィルターが不可欠。であれば、はじめからファンとフィルターを一体化し、簡単に選定し、取り付けもできるようにしようとして生まれたのが、ファンで換気をしながら、同時にフィルターで埃と水から内部機器を保護できる「フィルターファンユニット」です。

    2つの通気口のうち、フィルターファンユニットは下部の吸気口に、上部の排気口にはフィルター付きのフィルタールーバーを取り付け、この2つのセットを使うことで、内部の機器を保護しながら効率よく温かい空気を排出して内部冷却が可能になります。

    フィルターファンユニットは取り付けや調整が簡単なのも特長で、機械や制御盤への取り付けは工具がいらず、ネジレスで型枠にカチッと嵌め込むだけ。電気接続部もスプリング式なので穴に挿し込むだけで配線完了。吸気・排気の方向もファンモジュールを回転させるだけで行うことができ、とても使いやすいものとなっています。

    制御盤の熱対策、設置環境や使用状況に応じて最適な冷却方式を選ぶ必要があり、それが制御盤と機械、生産ラインの安定稼働と長寿命化を可能にします。リタールでは、定番でコストパフォーマンスの高いフィルターファンユニットのほか、制御盤の扉や側面、上部に取り付けて冷却するクーリングユニット、空冷式および水冷式熱交換器など、制御盤の冷却に関わるあらゆる製品を取り扱っています。制御盤の熱対策、機械・装置の安定稼働にお困りの方は、是非リタールにご相談ください。


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