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    DX(デジタルトランスフォーメーション)に必要な思考とは-製造業を取り巻くDXの現在地

    DX(デジタルトランスフォーメーション)とは2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という社会的概念です。日本の産業界にとってのDXは2018年に経済産業省が「DXを推進するためのガイドライン」を発行したのがスタートと言えます。そんなDXの潮流について製造業にフォーカスをあてて確認していきましょう。

    製造業がDXで目指す将来の姿

    製造業で高度なデジタル技術や情報技術を複合的に用いたスマートファクトリーを目指す動きは、2012年にドイツのインダストリー4.0の構想から始まったと言え、第4次産業革命とも呼ばれています。第3次産業革命の主役はパソコンやインターネットによる、作業やアナログデータのデジタル化、情報化技術でした。一方で、第4次産業革命では、デジタルベースによる生産革命、ビジネス革命が目指されています。デジタルベースとはいわば、製品やサービスのライフサイクルがデジタルプラットフォーム上で完結されることを意味します。

    今でこそ、マーケティング分野での顧客管理システム、開発分野での3DCADや3Dプリンタ、製造分野でのIoTやロボット、生産管理分野でのPLMなど、各デジタル技術が各プロセスで独立しています。しかしながら、今後、AI、XR、ブロックチェーン、メタバース、クラウドといった自律性や柔軟性をもった先進的なデジタル技術の発達により、今は独立しているデジタル技術がすべて繋がることになります。それは技術的特異点=テクノロジカル・シンギュラリティと呼ばれており、デジタルが人間の能力を凌駕する世界と言えます。

    DXに必要な思考

    そんな、新進的な未来を目指すDXゆえに、今までの業務改善や設備投資といった考え方では、流行り言葉に飛びつく形となり、思うように効果が出ないといったケースが多くみられます。ここではDXをスタートするのに必要な考え方についてみていきます。

    デザイン思考

    デザイン思考とは、“デザイン”で用いられる思考方法を応用して、ビジネスの課題解決するための手法です。デザインと聞くと、日本語では芸術的意味や設計的意味で捉えられがちですが、計画する意味合いでの“デザイン”が近いと言えます。

    ここで重要なのは、ユーザー目線でビジネス課題を解決する道筋をデザインすることです。従来のQCD改善もユーザーに利益を供与する意味では間違いではありませんが、日本からはサブスクやシェアリングなどの新しいビジネス、サービスが生まれなかった要因としては、ユーザー目線の欠如が大きいと言えます。
    物質的に十分でなかった時代には、良いものを安く早くモノを手に入れることが価値基準でした。しかし、物質的にはある程度満たされたと言える現代でユーザーが求めるモノは、新たな体験や経験といったものに価値観が移り変わっています。iPhoneやSNSといった製品やサービスはまさしく、ユーザー目線から生まれたものと言えます。

    製造業でも、モノ売りからコト売りへの転換が強く叫ばれています。売り切りのモノ売りから、「販売後のアフターサービスやフォローといった部分まで含めたパッケージを売る(=コト売り)」への進出が、BtoCだけでなくBtoBの分野でも多くみられます。

    背景には人手不足、環境問題、ダイバーシティ実現など、多くの社会的課題があります。そういった社会課題を自社のビジネスでどのように解決していくか、ビジネスをどう変革したらユーザーや社会に新しい価値を提供できるか、そのためには何が必要かといった視点(=デザイン思考)が重要と言えます。

    標準化と見える化

    とはいえ、日々業務に追われている技術者には、ビジネスを変革するような経営的思考に思いを巡らせる余裕はありません。もう少し実務側に視点を変えると、今やどの企業でもDXの必要性が声高に叫ばれていることでしょう。

    そんな中で、実務を担当する技術者がDXのためにまず取り組むべきポイントは標準化と見える化です。
    現時点でのデジタル技術は、まだまだルール外のことに対して柔軟に変化するという対応は苦手です。いきなり業務のシステム化に取り組むと、結局例外ばかりで元に戻ってしまうというのが、業務のシステム化で多い失敗例です。逆にいうと、その例外に素早く対処できるのが人間の持つ柔軟性と技術者としての手腕、つまり付加価値の高い業務ということです。それ以外の、ルール化できる業務(=付加価値が低い業務)に関しては、標準化し、システマチックに処理することで、今あるリソースでより付加価値の高いビジネスに取り組むことができます。

    また、業務をシステム化するにあたり、技術者や作業者が感じる機微な変化や変動を定量的・定性的に見える化することも重要です。デジタルとは0or1ですべてを定義する必要があり、感覚的なものを機械言語として表現するためのステップが見える化です。そこでデータを収集するのに用いられるのがIoTやクラウドですが、見える化の失敗例として、データが膨大過ぎて何をどう使えば良いかよくわからず、データの活用ができていないパターンです。

    デジタル化と繋がる化

    標準化や見える化がある程度整備されて初めてシステム化やデジタル化に取り組むことができます。標準化や見える化で行うのはアナログデータをデジタル化するデジタイゼーションと呼ばれます。次のステップではプロセスまで含めたデジタル化で、デジタライゼーションと呼ばれます。デジタイゼーションは今あるモノや仕組みをデジタルで使える形に変換することですが、デジタライゼーションではデジタル化されたものを使って業務プロセスが変わります。

    製造業で言えば、
    デジタイゼーション:2D図面から3Dモデルへの転換
    デジタライゼーション:3Dモデル用いて見積や発注の自動化、加工検査の自動化
    と言うことができます。
    この例を見れば、デジタライゼーションは一つの企業だけで成し遂げられるものではなく、バリューチェーン全体の変革がないと成し遂げられません。そのため、さまざまな企業やシステムと連携できる繋がる化を見据えることも、DXの重要な足掛かりと言えます。

     DXで変わるモノ変わらないモノ

    DXはデジタル技術で生産活動やビジネスを変革することであると述べました。また、日本ではSociety5.0としてデジタル技術でスマートな社会を実現するといった方針が打ち出されています。テクノロジカル・シンギュラリティでAIが人間を凌駕し、まさにSF映画のような世界がやってくるかもしれません。確実にそういった将来に向けて世界は舵を切っています。

    しかしながら、現在のデジタル技術では限界や制約も多く、それがデザイン思考とも言えますが、半ば夢物語のようなところもあります。また、昨今では通信障害が発生すると、影響が大規模で、日単位で長期化することも十分にリスクとして考慮しなければなりません。

    たしかに、それらの限界や制約、リスクを打破するのが技術革新と言えます。特にデジタル分野ではソフトウェアの進歩は日進月歩で、モノ売りからコト売りのように、ソフトウェアの部分に注目がされがちですが、ソフトウェアの進歩を下支えしているのがハードウェアです。そういった意味では、人間が培ってきたアナログなハードウェアも決して軽視されるものではなく、人間の持つ五感やフィーリングといった数値やモデル化できない部分が人間の優位性であり、デジタルベースの世の中では人間の価値は下がるどころか、むしろ上がると言えるでしょう。


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