電線について、日本国内と国外で異なる規格があることをご存じでしょうか。ここでは、国内規格と国外規格の種類と規格が異なることによって、特に注意が必要な点についてご紹介します。
国内の電線規格
まずは国内の電線規格についてご紹介します。国内の電線規格としてはJISのほかJCS、電気用品安全法によるものがあります。
JIS
日本の国家規格であり、工業標準化法に基づいてさまざまな工業品の規格を規定しているのがJIS(日本工業規格)です。JISマークの表示されている製品は、工業標準化法に定められた審査を合格していることを表します。
JISは、産業で多量に使用されるものや、家庭に普及しているものを中心に規格化しています。電線では、以下の6種類が規格化されています。
- ビニルコード
- ゴムコード
- 600Vビニル絶縁電線
- 600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル(VVR・VVF)
- 屋外用ビニル絶縁電線(OW)
- 引き込み用ビニル絶縁電線(DV)
JCS
JCS(日本電線工業会)は日本の電線メーカーによる業界団体で、電線と電線関連製品の規格を制定しており、次のようなものについての規格があります。
- 電線・ケーブル
- 通信ケーブル
- 原材料
- 試験方法
- 梱包・巻枠(ドラム)
電気用品安全法
以前の電気用品取締法が平成13年に改正され、電気用品安全法として改正施行されました。JISを補完する標準という位置付けで、民間事業者が行う自主的な規制と安全性の確保を目的としています。
「特定電気用品」「特定以外の電気用品」の2種の規格について定義し、適合製品にはそれぞれのマークを表示して販売するようメーカーおよび輸入業者に義務付けています。これにより、消費者が安全な製品を区別できるようにしているのです。
そのなかで、定格電圧が100V以上600V以下の電線・ケーブルに関しては次のようなものが特定電気用品として規定されています。
- 導体の公称断面積が100mm2以下のゴム絶縁電線
- 導体の公称断面積が100mm2以下の合成樹脂絶縁電線
- 導体の公称断面積が22mm²以下、線芯が7本以下の外装がゴム(合成ゴム含む)のケーブル
- 導体の公称断面積が22mm2以下、線心が7本以下の合成樹脂のケーブル
- 導体の公称断面積が100mm2以下、線心が7本以下のゴムキャブタイヤケーブル
- 導体の公称断面積が100mm2以下、線心が7本以下のビニルキャブタイヤケーブル
- 導体の公称断面積が100mm2以下、線心が7本以下の難燃性ポリオレフィンキャブタイヤケーブル
- 各種のゴムコード
- 各種のビニルコード
表示されるのは下記のマークです。
(引用:電気用品安全法|経済産業省)
次のようなものは特定以外の電気用品として規定されており、下記のマークが表示されます。
- 導体の公称断面積が22mm2を超え100mm2以下、線心が7本以下で外装がゴムのケーブル
- 導体の公称断面積が22mm2を超え100mm2以下、線心が7本以下で合成樹脂のケーブル
- 導体の公称断面積が100mm2以下の蛍光灯電線
- 導体の公称断面積が100mm2以下のネオン電線
- 電気温床線
(引用:電気用品安全法|経済産業省)
国外の電線規格
日本国内の規格が存在するのと同様に、国外には国や地域ごとにそれぞれの規格が存在します。
UL規格
アメリカの認証機関Underwriters Laborratories Inc.(アメリカ保険業者安全試験所)により策定されている、同国で最も重要視される電気製品に関する規格です。アメリカへの輸出品には必須と言えます。
UL規格については以下で詳しくご紹介していますのでご参照ください。
CSA規格
Canadian Standars Association(カナダ規格協会)の規格です。カナダへの電気製品の輸出は、この規格の認定に合格していなければなりません。
CCC規格
海外からの中国向け製品について、中国国家標準(GB)の基準に適合しているかを評価する規格です。
EN規格
欧州標準化委員会による規格です。かつてはEU各国の規格に適合しているものにCEマークがつけられていました。近年ではEU圏の統一規格としてEN規格が浸透し、EN規格に適合しているものにCEマークが施されるようになっています。
国際規格
このように各国で独自の規格があるなか、世界的な流通と安全を確保することを目的とした国際規格があります。
IEC規格
IEC(国際電気標準会議)が制定した、電気・電子技術分野に関する規格です。各国の標準化団体が採用し、日本でもIEC規格へのJISの整合化が進められています。
下記で詳しくご紹介していますのでご覧ください。
ISO規格
ISO(国際標準化機構)によって制定された全産業分野に関する国際規格です。ただし、ISOは電気・電子技術分野について規定しておらず、電気・電子技術分野に関してはIEC規格が国際標準となっています。
国内規格と国外規格の違い
国内と国外の規格では、次のような点に違いがある点に注意が必要です。
導体断面積の表記
JISでは電線の導体の太さを表す単位として「SQ」(スケア)が用いられます。これは導体の断面積を平方ミリメートルで表したときの数字です。
一方で、UL規格では「AWG」という単位が用いられます。“American Wire Gauge”の略称で日本では一般的にゲージと呼ばれています。AWGで表される数字は実際の太さと直接的な関係がなく、太さの基準として覚えるしかありません。AWGの数字は小さいほど電線の導体は太くなります。
ドイツのDIN規格では「DIN」という単位が用いられますが、こちらはJISと同様に断面積を平方ミリメートルで表しています。ただし、JISとは規格化されている太さに若干の違いがあります。
なお、国内でよく使われている電線はJISで規格された0.75sq、1.25sq、2.0sq、3.5sq、5.5sqなどです。これはそれぞれ近い太さのものでAWG18、AWG16、AWG14、AWG12、AWG10となりますが、完全に合致はしません。DINでは1.25sqや2.0sqに近い太さの規格はなく、0.75、1.5、2.5、4、6の順に太くなっていきます。
導体断面積の基準
JISは国際標準のIECに整合化を図っていますが、電線の導体の太さに関しては独自の規格を採用しているためIEC規格と合致しません。
前述のDINはIECと同じ基準を採用しています。JISとIECで合致する導体断面積の規格は0.5と0.75のみで、それより太いサイズはすべて規格が異なるため注意が必要です。
定格電圧の表記
IECではUo/Uのように2種類の電圧値を表記します。例えば300/500と表示されている場合は、導体と接地間の定格電圧(Uo)が300V、各導体間の定格電圧(U)は500Vとなります。
JISの定格300Vや600Vという基準はIECの規格と試験基準が異なり、比べることができません。そのため、同等品としての適合を判断する根拠も存在しません。
電線に関する規格の違いに注意
電線に関する規格は国や地域によって異なり、日本はIECに加盟しているものの、JISとIECの間には違う点もあります。そのため、「規格や表記方法の違いがある」ということを理解しておくことが大切です。また、規格の異なる電線を使用する際に見比べられるような、適合表や換算表を用意しておくと便利です。
関連記事:スイッチギア(開閉装置)の規格の種類と役割について知ろう
参考:
- 電線規格に関するガイド|MISUMI-VONA
- 電気用品安全法の概要|経済産業省
- 特定電気用品(116品目)一覧 |経済産業省
- 特定電気用品以外の電気用品(341品目)一覧|経済産業省
- JIS規格・ISO規格・IEC規格の基礎知識|株式会社キーエンス
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