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    ジャンパー線の種類と役割 ― 縁の下の力持ち

    ジャンパー線の持つ役割や種類について解説します。ジャンパー線はどのような目的で使われ、どういった場面で活躍しているのでしょうか。ジャンパー線が焦点となった事象事例を見ながら、その重要性を考えてみましょう。

    ジャンパー線の形状と役割

    ジャンパー線とは電子回路や制御盤などで、制御において重要な役割を持ちます。具体的にはどのようなものなのでしょうか? 

    ジャンパー線とは

    ジャンパー線とは、電子回路や制御盤などにおいて離れた場所を接続するために使う電線や端子、または、ピンのことを言います。しかし、これでは一般的な配線と違いがありません。では、ジャンパー線と一般的な配線との違いはどこにあるのでしょうか。

    それは、回路上に「ジャンプ」、すなわち一時的なショートカットをつくることで、電路を短絡させる役割を持っているという点です。一般的な配線は恒久的な接続を維持するのが目的ですが、ジャンパー線は通常では短絡しない部分同士を一時的に接続することを目的とします。

    この一時的な接続には製品仕様によって回路を使い分ける場合も含み、テストやメンテナンス、緊急時対応など、さまざまな場面でジャンパー線は活用されています。

    ジャンパー線の形状・種類

    ジャンパー線として使われるものには、形状や構造が異なるいくつかの種類があり、それらに特に決まりはありません。

    単線の両端の被覆を剥いだだけのものもあれば、より線の両端に端子を圧着したものもあります。その端子も、差し込み用の棒型端子や、端子台に固定するためのY型端子など、受け側の形状に合わせてさまざまです。また、テスト時や緊急対応時のジャンプをつくるためには、端子ではなくワニ口クリップを取り付けて簡単に着脱できるようにしてあるものも使われます。そういった、より線の両端に端子やクリップがついたようなジャンパー線は、「ジャンプワイヤー」とも呼ばれます。

    接続する2点間の距離が一定である場合は、より線のような柔軟性は必要ありません。そのように間隔が規格化された2点を接続する場合によく使われるのが、「ジャンパーピン」です。ジャンパーピンは、「コ」の字状に成形された金属製のピンで、主に電子回路で使われます。

    また、通信回路や電話線では、2芯や4芯のジャンパー線がよく使われ、被覆の色によって区別されています。赤白は「カロ」、黄白は「キロ」、橙白は「ダロ」、赤白黒緑は「カロクミ」などと、専門の表記方法が用いられます。

    ジャンパー線の役割

    では、ジャンパー線は具体的にどのような場面で使われているのでしょうか。

    電子回路においては、テスト環境や試作の際に用いられるブレッドボードでよく使われています。ブレッドボードは多数の穴の空いた電子回路の実験をするための板で、はんだ付けすることなく抜き差しできるため、簡単に回路の切り替えが可能です。

    同様に制御盤でも、端子台や差し込みコネクタをジャンパー線でつなぎ替えることによって回路を切り替えるときに使われます。その代表的な役割としては、仕様や設計の変更、不具合が発生した部分の補強や機能停止、使われない入出力の処理などがあります。こういった場面で、回路の動作を停止したり、通常は使わない回路を作動させたりといった目的で使われているのがジャンパー線です。

    また、通信の端子盤では大量のジャンパー線が使われ、「どことどこを接続するか」という通信の基本を司っています。

     

    ジャンパー線が関係した場面・事例

    通常の制御盤でも使われることの多いジャンパー線ですが、大規模な制御システムでも大きな役割を担わされることがあります。

    例えば、国内の原子力発電所においてジャンパー線が原因で警報が発生した事例があります。発電システムの一部に関わる制御装置において、制御盤の取替作業中に警報が発生しました。これは、狭い制御盤内で作業していた際、ほかの作業で使用していたジャンパー線に誤って接触し、ジャンパー線が外れてしまったことが原因と発表されています。実際に大事故につながるようなエラーではなかったため大事には至りませんでしたが、ジャンパー線が重要な役割を持たされていたことが分かる一例と言えます。

    また、国内の研究用原子炉施設でも、ジャンパー線が原因で警報監視装置が故障した事例もあります。測定装置の点検のため、ジャンパー線を用いて警報装置を隔離しようとしたところ、警報装置の基盤の一部が焼損してしまったというものです。これは、作業手順書の記載が誤っていたことから、交流と直流の回路をジャンパー線によって接続してしまったことが原因と判明しています。

    このように、ジャンパー線は緊急時の対応としても使われる反面、使い方によっては予想外の事象を引き起こしてしまう場合もあります。仕組みとしては非常に単純ですが、使用する際には接続箇所によく注意し、長期的な使用に際しては簡単に外れないよう保護する、もしくは恒常的な対策を施すことも大切です。

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    制御盤の使い方に柔軟性を持たせるジャンパー線

    ジャンパー線がどういった役割で使われているのか、どういった種類や形状があるのかを紹介し、重要な箇所で使われているジャンパー線の事例をご紹介しました。

    制御盤の仕様を決めるときに動作チェックや緊急時の対応を考えた回路設計にしておくことで、より安全で柔軟性の高い運用が可能となります。こういった場面で活躍するのがジャンパー線であり、非常に地味ながら、開発技術者や保守担当者にとって欠かせない重要部品と言えるでしょう。

    参考:


     

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