電子回路に欠かすことができないといえるほど、多くの場所に使われているコンデンサとコイル。これらはどのような働きをする電子部品なのでしょうか。電子回路の基本、コンデンサとコイルについて、その働きと原理を解説します。
電気を蓄え放出するコンデンサ
コンデンサは、電子機器を制御する電子回路に必ずといっていいほど組み込まれている電子部品です。このコンデンサが、どのような働きを持っているのか、どのような目的で使われるのか見てみましょう。
コンデンサの働き
- 電圧の安定
コンデンサの最も知られる働きが、電圧をかけると充電し、負荷を接続すると放電をする性質です。このような作用により、電圧が変動する場合にはその変化を吸収し、電圧を安定させる働きをします。 - 交流電流を取り出す
コンデンサは直流電流を通さず、交流電流だけを通します。これは変位電流という、コンデンサで起こる特有の現象によるものです。この性質を利用して交流電流のみを取り出し、その周波数を読み取ることで信号として扱うことができます。
この働きが最も使われているのがカップリングコンデンサです。バイアス電圧を取り除き回路間を結合することができます。 - ノイズをカット
直流電流を遮断し交流電流を通す性質は、もうひとつの働きを持ちます。それがノイズを取り除く働きです。直流電流を必要とする電子機器では、交流電流は不要なノイズとなります。このノイズを取り除くため、直流と交流の入り混じった信号の通り道に、グランド接続したコンデンサを取り付けます。こうすることで交流の成分をコンデンサからグランドへ落とし、純粋な直流電流だけを取り出すことができます。
コンデンサの原理
コンデンサは絶縁体を挟んだ2枚の金属板で構成されているものが基本です。この金属板が電極となり、絶縁体には空気や絶縁フィルムなどが使われます。この間に挟む絶縁体は誘導体と呼ばれます。
電極に直流電圧をかけると、電極には電気のもととなる電荷が流れ込みます。電源のプラスをつないだ側にはプラスの電荷(正電荷)、マイナスをつないだ側にはマイナスの電荷(負電荷)が蓄積されます。しかし、電極の間は絶縁されているため電流は流れません。このとき、正電荷と負電荷は磁石のように引き合う性質を持っています。
電極には蓄えられる電荷の量(静電容量)が決まっていて、その量がいっぱいになると電荷は流れ込まなくなります。この状態で電圧をかけるのをやめても、正電荷と負電荷の引き合う力(クーロン力)によって電荷は電極にとどまります。これがコンデンサの充電の仕組みです。
次に、電極にLEDのような負荷をつなぐと、蓄えられた電荷が流れ始めます。これがコンデンサの電気の放出です。電極に蓄えられていた電荷がなくなると、放出が終わりLEDも点灯しなくなります。
コンデンサの充電と放出は、このような基本原理で行われています。
では直流電圧ではなく、交流電圧をかけた場合はどうでしょうか。
直流電圧をかけた場合は静電容量まで充電されるだけで、電気は流れません。しかし交流電圧をかけた場合、2枚の電極に流れ込む正と負の電荷は、1秒間に周波数の回数で交互に入れ替わります。このとき、実際には絶縁体を越えて電気が流れるわけではありませんが、電荷の入れ替わりが繰り返されることで、交流電流が流れているのと同等の動きをします。
これが、コンデンサが直流電流を遮断し交流電流を通す仕組みです。
コンデンサに関する用語と単位
コンデンサに関して使われる用語または単位として、次の3つが代表的です。
- 静電容量(キャパシタンス)
コンデンサが蓄えることができる電荷の量を表します。キャパシタンスとも呼ばれます。 - Q(クーロン)
電荷量の単位です。1A(アンペア)の電気を1秒間流したときに蓄えられる電荷量が1Qです。 - F(ファラッド)
静電容量の単位です。コンデンサの静電容量が1Fの場合、1Qの電荷量を蓄えると電極間の電位差は1V(ボルト)になります。
電気と磁気を作用させるコイル
コンデンサと同様に、コイルも電子回路に不可欠といえる素子です。コイルはインダクタ、またはインダクションコイルと呼ばれることもあります。これは、インダクタという素子に一般的にコイルが使われているからです。それでは、コイルの働きを見ていきましょう。
コイルの働き
- 電流の安定
コイルは、コイルに流れる電流や周囲の磁界が変化すると、それを妨げる方向に電流や磁界を発生させる性質があります。この性質を利用し、電流の変化を吸収し安定させることができます。 - 電圧の昇降
交流電圧の昇降に使われるトランスは、コイルを応用したものです。環状になった鉄心に巻かれたふたつのコイルのうち片方に電気を流すと、それによって生じた磁束がもう一方のコイルに電流を生じさせます。交流電流は電流の向きが常に入れ替わるため、この電流や磁界の向きの変化を妨げるように、電流と磁界が発生し続けます。このような電磁誘導の原理を応用したものがトランスであり、コイルの持つ代表的な働きのひとつです。 - 交流に対して抵抗のように作用
コイルに直流電流を通したとき、コイルは一瞬その流れを妨げた後は、ただの導体として作用し、直流電流をすんなり通します。しかし、交流電流の場合は電流の向きが入れ替わり続けるため、コイルもそれを妨げようとし続けます。このように、交流電流に対してコイルが抵抗のように作用する働きをリアクタンスと呼びます。
コイルの原理
コイルは電線をコイル状に巻いた構造をしています。コイルに電気を流すと電線の周囲には磁界が発生します。コイルが不思議な働きをするのは、この磁界と電流の関係によるものです。
コイルに電気を流すと磁界が発生するのと同様に、磁界を持つもの、すなわち磁石をコイルに近づけたり離したりすることでも、コイルに電流が生じます。これが電磁誘導です。このとき流れる電流は誘導電流と呼ばれます。
ロシアの物理学者レンツは、磁界の変化に逆らう向きで誘導電流が生じることを突き止めました。これがレンツの法則です。コイルには、磁界の向きによって決まった向きに電気が流れます。これは右ねじの法則として知られていますが、誘導電流もこの法則に従って流れます。
こうして、電流の変化により磁界が発生し、磁界の変化によって電流が発生する電磁誘導が、コイルの原理です。
コイルに関する用語と単位
- 誘導性リアクタンス
コイルは直流電流を通しますが、交流電流に対しては抵抗のような作用を見せます。このような作用による電流への妨げを誘導性リアクタンスと呼びます。誘導性リアクタンスは回路内の抵抗とみなし、単位にはΩ(オーム)を用います。 - インピーダンス
回路全体において抵抗として作用するものすべてを合わせたもののことをいいます。回路内のコイルのリアクタンス、コンデンサのリアクタンス、抵抗(レジスタンス)を合わせたものがインピーダンスです。こちらも同様にΩの単位を使います。 - インダクタンス
コイルに流れている電流の大きさが変化するとき、それを妨げようとする働きの大きさをインダクタンスといいます。電流が流れているコイル自体に働くものを自己インダクタンス、ふたつのコイルの一方に変動電流を流し、もう一方に働くものが相互インダクタンスです。
リアクタンスと違い、変化を妨げようとする力の大きさを表すため、抵抗とは異なります。インダクタンスの単位はH(ヘンリー)で、1Hは1秒間に1Aの電流変化があったとき1Vを発生させるインダクタンスです。
電気と磁気が密接にかかわるコンデンサとコイル
電気回路になくてはならない存在、コンデンサとコイルはどちらも電気と磁気の働きにより、さまざまな特性を生み出しています。コンデンサとコイルは、電気と磁気の関係をうまく利用することで多くの電子機器を動かしているのです。
関連記事:制御盤に使われる主要電子部品の役割と主なメーカーの紹介
参考:
- コンデンサとは? | 村田製作所
- コンデンサの役割を学ぶ|APS
- コイルとは? | 村田製作所
- コイルの種類と時定数を学ぶ|APS
- コンデンサとコイル|機器開発入門
- エレクトロニクス入門 インダクタ編 No.2「インダクタの基礎知識②」|TDK株式会社
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