もしも世の中のありとあらゆる電線が、大元から末端まで一本のまま延々と配線され使用されるとしたら、端子箱はこの世に存在しなかったかもしれません。しかし実際は、複数の電線を介して延長され、分岐され、様々な太さに変わり、目的の場所に繋げられます。電線を接続、分岐する場所には多くの場合、端子箱が使われます。端子箱はどのような役割を持ち、どういった目的で使われているのでしょうか。端子箱を使う目的とメリット、端子箱内の電線接続方法、端子箱が使われている用途などを紹介します。
端子箱の役割
端子箱は保護の目的だけで使われているわけではありません。端子箱があるかどうかで、さまざまな効率が大きく変わります。そういった端子箱の役割を見ていきましょう。
電気配線の分離
どんなに大きなロールの電線でも必ず長さに限界はあり、ロールが大きければ重量とサイズも大きくなり、作業効率を落としてしまいます。端子箱が適度に配置されていれば、電線の接続点を設け計画的に配線していくことができます。
電気配線の変換
制御盤から端子箱までを多芯のキャプタイヤケーブルで結び、そこからはそれぞれ適した電線で端末までを結ぶことができます。同様に100V交流電源では、3芯と2芯のケーブルを接続するといった場合も、端子箱の中で行います。このように、電線の種類を変換するというのも端子箱の役割です。
電源や信号の分配と集合
途中まで一本の電源線を引き、そこから複数の制御盤、端末、コンセントボックスなどに電源を分配するといった場合にも、端子箱が使われます。これは信号線の分配でも同様です。端子箱は電源や信号の分配・集合といった役割も持ちます。
接続点の防水・保護
電線と電線を接続する方法はさまざまな種類がありますが、いずれも被覆をむいて導体を露出させる必要があります。接続の後、適切な処理をしたとしても、被覆があった状態に比べ防水性は落ちることになります。こういった接続部の防水性低下をカバーし、保護するのも端子箱の目的のひとつです。
接続部が目に見える場所にむき出しの場合、接触や温度変化、経年によって金属部分が露出し感電や漏電といった事故につながるリスクも高まります。このような場合にも、端子箱があることでこれらの危険を防ぐことができるのです。
また、ケーブルがなんらかの理由で引っ張られた場合、負担がかかってしまうのは接続部です。このとき、端子箱にケーブルグランドやケーブルクランプがあれば、引っ張りによってかかる力をケーブル全体で吸収し、接続部には負担がかかりません。
配線作業工程の区切り
制御システムや広範囲の配線作業を行うとき、それぞれの系統の基幹を端子箱まで引いておく作業までを工程のひと区切りとすることができます。これを一段階目とし、配線作業の二段階目でほかの制御盤や端末への配線を行うといった形で、作業の区切りを設けることができます。そのため、全体の作業進捗により配線をいくつかの段階に分けて、効率的に進めることが可能です。
点検窓としての機能
端子箱があることで、電気トラブルが発生した際のチェックポイントを設けることができます。端子箱内部の接続点にテスターを当てることで、トラブルの箇所を特定していく作業に役立ちます。
将来の増設
将来的に電源や設備、制御盤などを増設する可能性がある場所には、端子箱を設けておきます。電線に余裕をもたせた状態で接続点を設け端子箱内部に収めておけば、増設の際に効率的です。電線管の加工や電線の引き直しといった二度手間が不要となります。
端子箱の中での結線方法
実際に端子箱の中では、どのように電線同士が接続されているのでしょうか。
中継ボックスとしての端子箱
長く使われてきた接続方法としては、圧着端子による接続があります。電線同士をまとめて圧着するため導通不良の可能性は限りなく低く、最も確実な接続方法といえます。しかし絶縁処理にテープを使う手間があったり、メンテナンス性、再利用性が低かったりといったデメリットもあります。
端子箱には、内部に端子台が設置されているものもあります。多くの端子台はネジによって端子を止めるため、端子の差し替えができ、短絡バーによって集合・分配も容易です。また、テスターも当てやすいという特徴を持ちます。しかし、端子台の列数を超える接続点を設けることができないため、多くの接続点が必要になった場合には、端子台の増設や端子箱自体の交換が必要となります。
単線を用いる場合によく使われる接続には、差し込みコネクタ、ワンタッチコネクタ、圧着端子などがあります。差し込みコネクタは簡単に接続ができ、同時に絶縁もできるため配線作業時間の短縮が可能です。しかし差し込みコネクタは、基本的に一度差し込むと抜くことができない構造となっているため、再利用は原則不可です。
これに対し、ワンタッチコネクタは電線を抜く機能もあるものです。この機能により電線の差し替えとコネクタの再利用が可能です。
モーターの端子箱
モーターに付いている端子箱では、リード線の接続方法はラグ式とスタッド式のふたつに分類されます。
端子箱内でリード線が直接出ているもの、板端子になっているものはラグ式と呼ばれる結線方式です。リード線が直接出ている場合は、リード線に対しリングスリーブで圧着する方法、丸型圧着端子を圧着した状態でネジにより結合する方法があります。板端子の場合は、電線をこれにハンダ付けします。
端子台があるものや、接続用の植え込みボルトがあるものがスタッド式です。電線に圧着端子を圧着した状態で接続します。スタッド式では電線が固定され、遊びが少なくしっかり固定される反面、自由度はなくなるため、点検や整備の際には端子台から電線を外す場合が多くなります。
端子箱が使われている場所
端子箱は、次のようなさまざまな用途で活躍しています。
- センサー線の中継
- フレキ配線の中継
- 設備や工作機械の電源線接続
- モーターのリード線の中継
- 配電盤・制御盤間の中継
【当日出荷可能】『KL ターミナルボックス』は、中継用ボックスとして工業分野において幅広い場面で使用されています。
※在庫状況、ご注文の受付時間により出荷日の変動がございます。
電気をつなぐ場所に、端子箱
端子箱の役割と用途について紹介しました。端子箱は物理的に接続点を保護しているだけでなく、配線作業の工程に時間差をつくり、効率的で確実な作業を助ける存在でもあります。後のメンテナンス性や増設性も考慮し、適切な場所に端子箱を設けるよう配線を設計しましょう。
関連記事:制御盤・分電盤の電気制御機器市場におけるキャビネット(筐体)とその種類
参考:
- 製造業技術用語集 中継ボックスの解説|イプロス モノシリ
- 端子台ボックス|MISUMI
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