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    制御盤ボックスにも使われるステンレス鋼の種類と特性、国内外での規格表記について

    私たちの身の回りにあふれているステンレス鋼。しかし一言でステンレス鋼と言っても、数多くの種類が存在し、それぞれに特徴や性質が異なります。ステンレス鋼の種類や性質、各国での規格による呼び名の違いをご紹介します。

    SUSのメリット・デメリット

    制御盤筐体(きょうたい)のような金属製品を作る、または使う際、その材料として鉄を使うか、ステンレス鋼を使うかの選択が必要になる場合があります。このような場面において、ステンレス鋼を使う理由として次のような特性・特徴があげられます。

    • 錆(さ)びにくい
    • 軟鋼より丈夫

    この二つの特徴は、多くの人がステンレス鋼に持っているイメージそのものであり、ステンレス鋼を使う最も大きな理由ではないでしょうか。しかし、ステンレス鋼にも良い点ばかりがあるわけではありません。次のようなことに注意が必要です。

    • 鉄より高価
    • 鉄より加工難易度が高い
    • 異種金属との接触により腐食する

    ステンレス鋼といえども、錆(さ)びないわけではありません。異なる種類の金属が接触していると、そこに電位差が生じ微弱な電流が流れることがあります。この電流により錆(さび)が発生することを異種金属接触腐食といい、ステンレス鋼もこの例に漏れずこの現象が起こります。鉄と触れていればステンレス鋼側が腐食し、アルミニウムと触れていればアルミニウム側の腐食を進めてしまうなど、腐食と無縁ではないのです。

    ステンレス鋼には共通するこのような特徴があります。一方、ステンレス鋼にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。

    ステンレス鋼の種類と特徴

    ステンレス鋼は4種類に大別されます。それぞれの特徴と性質を見てみましょう。

    オーステナイト系

    オーステナイト系ステンレス鋼は、カーボン0.15%以下、クロム16%~20%、ニッケル8%以上を含むステンレス鋼の一種です。生産されるステンレスのうち60%はこのオーステナイト系で、ステンレス鋼の代表格と言えます。

    粘り強さを持ち延性・強じん性に優れ、プレス加工による絞りや曲げの加工性も良好で、溶接も容易です。また、高温・低温でも性質は安定し、耐食性も優秀です。溶液化処理により加熱急冷を行うことで、耐食性と強じん性はさらに向上するという特徴も持ちます。こうした特性から、家電や建築材料、LNGプラントなど広い分野で使われています。

    オーステナイト系はSUS3**と表記され、代表的なのはクロム18%ニッケル8%のSUS304です。また、さらに耐食性を高めた18クロム12ニッケル2モリブテンのSUS316もいろいろな場所で使われています。このSUS316から炭素含有量を少なくし、耐粒界腐食性を強化したものがSUS316Lで、塩害による腐食に強く高い加工性を持ちます

    フェライト系

    カーボン0.12%以下、クロム16%~18%、ニッケル8%以上を含むものはフェライト系に分類されます。フェライト系ステンレス鋼も耐食性は良好ではありますが、オーステナイト系と比べるとやや劣ります。また、熱処理により硬化することがなく軟質のまま使われ、良好な成形加工性と溶接性を持ちます。比較的腐食条件にさらされることの少ない、家庭用品や建築内装材として使われています。

    フェライト系はSUS4**と表記され、クロム18%のSUS 430が代表的です。

    オーステナイト・フェライト系

    二相系ステンレスとも呼ばれ、オーステナイト系とフェライト系、二つの金属組織をもつのがオーステナイト・フェライト系です。物理的な性質に関しても、オーステナイト系とフェライト系の中間的な特性を持ちます。海水に対する耐性が高く、対応力割れ性と強度にも優れ、海水を使う発電所や化学プラント用装置に使われています。

    SUS329J1をはじめとして、耐食性を上げたSUS329J3L、応力腐食割れへの耐性を上げたSUS329J4Lなどが、オーステナイト・フェライト系の代表的な鋼種と言えるでしょう。

     

    マルテンサイト系

    マルテンサイト系はカーボン0.1%~0.40%、クロム12%~18%を含むステンレスです。焼入れにより硬度を上げることが可能で、成分の配合と焼入れの方法を変えることで、さまざまな特性を得ることができる点が特徴です。こういった硬化の特性を活かし、刃物や機械構造部品、タッピングネジなどに用いられます。水との接触や蒸気中においても優れた耐食性を持ちますが、鉄粉が付着した状態では錆びやすい面があるため注意が必要です。

    マルテンサイト系として代表的なのはクロム13%を含むSUS403、SUS410です。

    海外規格とJIS―異なるステンレス鋼の呼び名

    日本国内では、SUSと表記されていればステンレス鋼のことだとすぐわかります。しかしこれは、JISで規格された表記方法にのっとったもので、海外の規格では全く違う表記となります。

    海外の規格として代表的なものには、次のような規格があります。

    • EN(European Standards)(欧州)
    • AISI(American Iron and Steel Institute)(アメリカ)
    • UNS(Unified Numbering System)(アメリカ)
    • BS(British Standard)(イギリス)
    • NF(Normes Francaises)(フランス)
    • DIN(Deutsche Industrie fur Normen)(ドイツ)
    • GOST(Gosudarstvennyy Standart)(旧ソ連)
    • GB(国標)(中国)

    これらの規格においては、見慣れたJIS表記のステンレス鋼も別の表記となります。

    • SUS304
      EN:1.4301 UNS:S30400 AISI:304 GB:S30408 BS:304S31 NF:Z7CN18-09 GOST:08X18H10
    • SUS304L
      EN:1.4307 UNS:S30403 AISI:304L GB:S30403
    • SUS316L
      EN:1.4404 UNS:S31603 AISI:316L GB:S31603 BS:316S11 NF:Z3CND17-12-02
    • SUS430
      EN:1.4016 UNS:S43000 AISI:430 GB:S11710 BS:430S17 NF:Z8C17 GOST:12X17

    特にSUS304Lは、UNSやGBにおいてはS30403となり、混乱しやすい表記となります。また、SUS304LやSUS316LはUNSとGBの規格番号が同一ですが、SUS430では別の番号となります。海外規格とJIS、海外規格それぞれでの表記の違いには十分に気をつけましょう。

    ステンレス鋼は制御盤ボックスにも

    ステンレス鋼の種類と特性、海外規格とJISの異なる表記についてご紹介しました。
    ステンレス鋼は、その耐腐食性の高さから特殊な環境下に設置される制御盤ボックスにも使われています。海に近い場所や食品加工工場など、腐食や塩害の可能性がある環境では、ステンレス鋼製の制御盤ボックスのご使用をおすすめします。

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    「規格に適合したスイッチギア及びコントロールギアの製作IEC 61439適用」

    本冊子は、新規格IEC 61439 準拠に必要な様々な対策を講じる上でのお手伝いをするために作成しました。リタール製規格適合システム製品の利用に関するご相談から貴社機器の要求設計や日常検査のご提案まで、幅広くご利用ください。
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