1. HOME
    2. /
    3. 標準化
    4. /
    5. 日本と海外の異なる制御盤の部品選定の構造・仕組みに対する規格要求

    日本と海外の異なる制御盤の部品選定の構造・仕組みに対する規格要求

    制御盤製作の工程のひとつに部品選定があります。機械製品を製造する際には満たすべき規格要求があり、制御盤においても同様です。近年はグローバル化が進み、国内企業が海外企業へ納入することも増えてきています。しかし、日本と海外では規格要求が異なるため、海外向けの製品を製造する際には注意が必要です。日本と海外で、部品選定における規格要求の違いや注意点にはどのようなものがあるのでしょうか。

    制御盤製作における部品選定

    制御盤製作の流れ

    制御盤の製作工程ではまず電気設計を行い、制御機器、周辺部品および筐体(きょうたい、ボックス・キャビネット)の選定をします。次に板金加工を進め、機器を設置、配線、検査等の行程を経ることで完成します。部品選定は電気設計後の最初の工程である、「制御機器、周辺部品および筐体の選定」段階で行われます。そのため、部品選定は制御盤製作のなかで重要な工程であり、部品選定のミスは後の工程へ多大な影響を与えるのです。

    日本と海外。盤筐体をつくるのか、選ぶのか。

    制御盤に使用する部品の選定に関しては日本も海外も同様で、電気回路設計にて指定された部品表にもとづき選定を行います。ところが、制御盤の筐体に関しては、日本と海外ではその採用方式が異なる場合が多く存在します。
    日本では、機械設計者が機械の一部として、もしくは電気設計者が電気設計図を作成した後に、盤筐体の図面もしくは指示書を作成し、加工業者がその図面や指示書通りに板金加工にて盤筐体をつくるのが主流です。
    一方海外では、電気設計者が電気設計図とともに部品表を作成する際に、盤筐体も部品のひとつとして、標準品のなかから選定するのが主流です。

    日本と海外で異なる制御盤部品選定の規格要求

    日本と海外。どのような規格要求があるか

    制御盤製作には当然満たすべき安全規格がありますが、日本と海外では要求される安全規格が異なります。そのため、海外へ制御盤を輸出する際には、各地域の安全規格に適合させる必要があります。制御盤の規格は大きく分類すると国際規格、地域規格、国家規格、団体規格の4種類があります。国家規格の例としては、日本のJIS(日本工業規格)やアメリカのANSI規格(米国規格協会)があり、国際規格ではIEC(国際電気標準会議)やISO(国際標準化機構)があります。そのほか、地域規格には欧州連合地域で要求されるEN規格があります。

    日本よりも厳しい海外の規格要求

    日本と海外で規格要求を比較すると、海外のほうが厳しい傾向にあります。その理由は安全規格の前提といえる設計思想にあります。
    欧米では「機械は壊れるもの、人は間違えるもの」という認識が設計の前提です。そのため、どのような使用状況でもエラーを未然に防ぐことが求められており、製作を進める際には高い安全性と信頼性が要求されます。
    日本でなら問題ない製作の進め方でも、海外では規格要求を満たせないことがあります。海外向け制御盤を製作する際には、納入先で要求される安全規格を事前に把握し、その要求にもとづいた設計をすることが重要です。

    制御盤製作における部品選定の標準化

    はじめに述べたとおり、部品選定は制御盤製作において重要な工程です。そこで、作業の効率化やミスの低減のため、部品選定の標準化に取り組む企業もあります。
    また、前述のように海外の規格要求は日本よりも厳しくなっています。海外向け制御盤の部品選定を行う際には、日本の規格要求だけでなく、納入先企業が満たすべき規格要求に適合するよう、標準化を検討するとよいでしょう。

    部品選定だけでなく、板金加工のような制御盤製作の標準化も重要です。日本の規格要求のみ考慮した制御盤製作の方法は、海外では設計思想の違いから通用しない場合があります。安全関連の回路に対する取り組み方、図面には詳しく書かれないタップルールなど、日本と海外では異なる点がいくつかあります。そのため、海外の規格要求を考慮した制御盤製作の標準化が必要です。

    標準化の成功により得られるものは、作業の効率化やミスの低減だけではありません。標準化された汎用性/共通性のある部品を使うことによる材料費削減や、設計、製作、板金加工を含む工数の簡略化による人件費の削減も期待できます。制御盤製作において、標準化は重要な課題といえるでしょう。

    制御盤製造4.0

    今後の制御盤製作

    グローバル化により日本国内だけでなく海外とのやりとりも増えてきている近年。海外メーカーとの競争に負けないためには、製造メーカーにおける経費の削減や製造効率の改善が重要になります。
    日本と海外では制御盤に対する規格要求が異なります。日本と海外双方の規格要求を考慮した部品選定の標準化が、今後の制御盤製作における重要な課題といえるでしょう。


     

     

    規格の企画_海外向け制御盤製作に役立つIEC 61439とULの基礎知識

    海外向け制御盤製作に役立つIEC 61439とUL規格の情報を分かり易くまとめました。規格の企画(Rittal)

    参考: