
制御回路の漏電防止策となる、漏電ブレーカーと絶縁抵抗測定について解説します。漏電はどのようにして発生し、漏電ブレーカーはどのような役割を果たしているのでしょうか。また、制御盤の漏電チェックの方法も紹介します。
制御回路の漏電
制御回路において考慮すべきトラブルのひとつは漏電です。通常ならあってはならないトラブルですが、一度発生すると原因箇所の特定が難しい場合もあります。制御回路で漏電が発生するのはどのような場合なのかみてみましょう。
漏電による症状
漏電とは読んで字のごとく、電気が(回路の外へ)漏れてしまうことです。漏電が発生すると、次のようなトラブルや災害につながるおそれがあります。
- 感電
漏電による直接的な被害として多いのが感電事故です。漏電している場合、アースがあれば電気は地中へと流れていきますが、もしアースがなければ、制御盤の金属部分に触れた瞬間に感電します。 - 火災
漏電状態で電気の流れている部分がほかの金属部に接触すると、スパークが起こる可能性があります。これにより周囲の燃えやすいものに引火し、火災が発生する危険があります。 - 設備や機器の損傷
漏電した電気が電子機器を通過してしまうと、設備全体や機器の一部を損傷してしまうことがあります。 - 生産ライン停止
設備や機器の損傷により生産ラインが停止してしまうと、設備の修理費用だけでなく、生産活動停止による利益の損失も発生します。漏電ブレーカーが働き設備の損傷がなかった場合でも、漏電の原因究明と処置が終わるまで生産活動を再開できません。
漏電の原因
漏電の原因には、さまざまな要因があります。その一部として、次のような事例があります。
- 制御盤内の湿度が高くなり、絶縁抵抗が低い部分で漏電
- 端子部に埃(ほこり)がたまり、それが吸湿したことで漏電
- 昆虫やネズミの侵入・ケーブル破壊など、人間以外の動物による漏電
漏電ブレーカーの役割
このような漏電トラブルに備え、大きな事故を防ぐために取り付けられるのが漏電ブレーカーです。
電路は本来、外部から絶縁状態にあるものです。しかし、絶縁抵抗の低下により漏電が起こった場合、電路の一部を遮断して回路そのものへの電流供給を停止する必要があります。この役割を持つのが漏電ブレーカーです。
漏電ブレーカーは、回路の行きと戻りの電流の値を検知し、その差が一定以上となった場合に回路を遮断する仕組みになっています。これにより、漏電した場合でも被害を最小限にとどめることができるのです。
また、もしなんらかの原因で感電してしまった場合も、人体に流れ出た電流を検知して漏電ブレーカーが働きます。このように漏電ブレーカーを使っていれば、感電による人体への影響も小さく抑えることができるのです。
漏電チェック・絶縁抵抗の測定方法
制御盤の漏電をチェックする方法としては、回路の絶縁抵抗値を測定することで漏電の有無を確認できます。測定にはメガテスター、またはメガーとよばれる絶縁抵抗計を使用します。メガテスターを使った漏電チェックは次のような手順で行います。
- メガテスターのバッテリーチェックを行います。ダイヤルをバッテリーチェックモードに合わせ、測定ボタンを押し、メーター指針がバッテリーと書かれた範囲内に入ればOKです。
- 漏電チェックする箇所のブレーカーをOFFにします。
- ブレーカーがヨーロッパ端子(差し込み式)であれば負荷側から配線を引き出します。ネジ式なら外す必要はありません。
- 白線(L)と黒線(N)を短絡(ショート)させ、この回路に接続されている電気機器に、測定による電圧がかからないようにします。
- メガテスターの黒線を、盤内のアース端子に接触させます。
- メガテスターの赤線を、短絡させた白線と黒線の部分に接触させます。
- メガテスターの測定ボタンを押します。
- 漏電がなければ指針は動かず無限大を指します。漏電箇所または絶縁抵抗値の低い箇所があれば指針は右側の0Ωに近づいていきます。
- この回路に漏電があると診断された場合、次は回路に接続されている電気機器について調べます。一台ずつ配線を外した状態で絶縁抵抗値を測定、漏電状態のままであれば再度配線を接続します。
- 同様に次の電気機器も配線を外しては絶縁抵抗値を測定、と繰り返していきます。
- 漏電状態でなくなった(指針が動かない)とき、配線を外している機器が漏電の原因であると判明します。
漏電ブレーカーの設置と絶縁抵抗測定で事故防止を
食品機械を製作する際には、当然守らなければならない規定があります。これらの基準は手順や管理方法のほか、食品機械の材質にいたるまで、細かく規定されています。ルールを守っているからこそ、食品機械の安全性が確保でき、安全な食品を口にすることができるのです。
制御盤の漏電と漏電ブレーカーの働き、メガテスターによる漏電チェックの方法について紹介しました。
漏電によるトラブルは事故につながることもあります。最低限の安全対策として、漏電ブレーカーを制御回路の適切な箇所に設置しておきましょう。また、万が一漏電が発生した際は、メガテスターによる絶縁抵抗測定により、漏電箇所を特定することができます。漏電トラブル発生時にぜひお役立てください。
参考:
- 漏電遮断器の原理と使い方|通販モノタロウ
- 絶縁抵抗計(メガテスター)を使った漏電チェック方法(漏電箇所特定)|シーケンサ制御.com
- 絶縁抵抗(メガ)測定時、なぜ電線を外して行うのかを、教えてください。|Panasonicよくあるご質問
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