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    フロンガスに対する規制とフロン排出抑制法の違い

    エアコンや冷蔵庫の冷媒などに広く使われていたフロンガス。しかし、フロンガスはオゾン層を破壊し、環境に影響をおよぼすことから規制され、代替フロンが広く用いられるようになりました。ところがこの代替フロンも温室効果が高いことがわかり、現在では規制が行われています。フロンガスに対する規制とその変遷について解説します。

    フロンガスが環境におよぼす影響と規制の動き

    フロンガスは1920年代に米国で開発されました。毒性がなく、無色・無臭で化学的にも安定していたため、冷蔵庫やエアコンの冷媒、スプレーのガスなどの用途に広く使われるようになりました。しかし1970年代後半に、米国のモリーナ博士とローランド博士らの研究により、フロンガスがオゾン層を破壊することが発表されました。偏西風に乗って成層圏まで上昇したフロンガスに太陽からの紫外線が当たると、フロンガス分子が分解されます。このとき放出される塩素原子がオゾン分子を破壊してしまうのです。さらに塩素原子は、オゾン分子をつくる酸素原子とは結びつかず、その場に留まったまま触媒として次々とオゾン分子を破壊してしまいます。そうした性質により、フロンガスはその体積の10万倍ものオゾンを破壊してしまうのです。

    成層圏にあるオゾン層には、地球に到達する紫外線を吸収するという性質がありました。そのためオゾン層が破壊されると、地球に到達する紫外線が増えてしまいます。紫外線量が増えると、人体に対する影響として白内障や皮膚がんのリスクが高まります。また人体だけでなく、海洋プランクトンや植物をはじめとした生態系への影響も懸念されるのです。そのため1985年3月には「オゾン層の保護のためのウィーン条約」が取り交わされました。さらに1987年9月には「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」も取り交わされ、フロンガス規制の動きが国際的にスタートしました。こうした動きにならい、日本でも1988年からフロンガスに対する規制が行われています。

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    従来のフロンガス規制

    1980年代にはじまったフロンガス規制の対象は、フロンガスそのものだけでした。このときに規制を受けたフロンガスは特定フロンと呼ばれます。当初は特に影響が強い5種類でしたが、1992年に15種類に増やされました。日本でも1988年から特定フロンの製造・輸入に関する規制を施行しています。また、2001年に成立した「フロン回収・破壊法」(旧法)によって、特定フロンを大気中にみだりに放出することを禁止するほか、代替フロンも含めたフロン類の回収と破壊が法制化されました。これにより業務用冷凍空調機器やカーエアコンを廃棄する際には、これらに使用されていたフロンガスが放出されないように回収し、破壊することが義務づけられました。

    特定フロン規制の動きを受け、特定フロンと似た特性を持ちながらもオゾンを破壊しない、代替フロンの使用が急増します。

    フロンガスの温室効果

    代替フロンの使用によって、オゾン層の破壊に対しては一応の解決策が示されました。しかし、フロンガス類は、特定フロン、代替フロン共に、温室効果が非常に高いという性質があることがわかりました。特定フロンはCO2の1,800倍から1万倍、代替フロンはCO2の100倍から1万倍以上の温室効果があります。

    適切に使用されていれば、その特性により、非常に効率よく省エネな冷凍・空調が可能なため、代替フロンの使用量は依然として伸び続けています。しかし、その一方で、冷媒回収率が低いことから、想定以上に使用中の機器からの漏えいしていることが判明しました。大気中への放出のさらなる抑制の重要性が叫ばれるようになりました。

    現在のフロンガス規制

    そこで、新たなフロン類に対する規制がはじまりました。これが2015年にはじまった「フロン排出抑制法」です。これまでのフロン類の回収・破壊に加え、フロン類の製造から廃棄までのライフサイクル全体にわたる包括的な対策になります。

    フロンメーカー、製品メーカー、製品ユーザー(管理者、整備者、廃棄等実施者)、フロン類充填回収業者および再生業者、破壊業者のフロンに関わる全ての対象者に、それぞれの義務や目標が課せられています。また、業務用の空調機器(エアコン)や冷凍冷蔵機器を使用している際に漏れ出すフロンの量も規制されるようになりました。

    フロンメーカーは、より地球温暖化係数(GWP)が低い冷媒の開発に取り組んでいます。製品メーカーもカテゴリーごとにGWPの目標値が定められ、それに対応する製品の開発を進めています。また、製品ユーザー(管理者=原則、機器の所有者)に対しては、機器が健全に運転していることを3ヵ月に一回簡易的に確認し記録することが義務となっています。(さらに原動機の出力によっては、専門知識を持つ者による定期点検が必要となります。)

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    まとめ

    オゾン層破壊への懸念から使用が広がった代替フロン。代替フロンはオゾンへの影響はないものの、温室効果が高く、地球温暖化など、環境への影響が懸念されています。環境への負荷を考慮し、正しく適切に機器を使用することが求められています。

     

    参考URL:

     

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