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    やっかいな静電気 制御盤への影響を減らす方法

    静電気は自然に発生して、電気機器にさまざまな悪影響を及ぼす非常に厄介な現象です。冬場に発生しやすい静電気は「パチッ」と音がするほどの場合は高電圧で、制御盤を扱う際には、静電気を要因とした盤内機器の故障が発生しないように注意しなければなりません。

    制御盤に影響をおよぼす静電気は、事前の対策で発生を抑えられるものです。この記事では、制御盤への静電気の影響を減らす方法をご紹介します。

    静電気はなぜ発生するのか?

    静電気は、ビニルなどの物質を摩擦した際に発生すると知られています。まずは物質を摩擦した際に静電気が発生する原理を説明します。

    物質はいくつもの原子で構成されており、その核となる「原子核」はプラスの電気をもつ「陽子」と電気をもたない「中性子」から成り立っています。原子核の周囲にはマイナスの電気を持つ電子が存在しており、通常は電子と原子核の電気(電荷)のバランスが保たれているため、静電気は発生しません。

    しかし、摩擦など何らかの力を加えた際に、電子が他の物質に移動する場合があります。電子はマイナスの電気をもっているため、電子が増えた原子核はよりマイナスの電気を、電子が減った原子核はプラスの電気を多くもつようになります。ビニルなどの絶縁体は、電気を通しません。そのため、元の状態に戻るには人や金属に触れるなどのきっかけが必要です。

    静電気は、日常的に発生しては消えています。「パチッ」と音がするほどの静電気は、相当な電気を帯びている高電圧状態となっているのです。

    静電気はどんな場合によく発生するのか?

    静電気は物質や湿度の影響により発生しやすくなります。たとえば、マイナスの電気をもちやすい塩化ビニルと、プラスの電気をもちやすい毛皮をこすり合わせると非常に大きな静電気が発生します。

    また、静電気が冬場に多く発生する理由は、湿度が低い環境下では静電気が発生しやすいという性質に起因します。湿気が高い環境では、静電気が発生しても水の分子を介して電子が元の安定状態になることが多いので、大きな静電気は発生しません。しかし、湿度が低いと電子を媒介する水の分子が少なくなるため、発生した静電気は維持されてしまいます。そのため、室内で静電気を抑えるためには湿度を高い状態に保つ対策が有用です。

    静電気を発生させる「帯電」「導電」

    では、発生した静電気はどのように除去できるのでしょうか? 静電気を発生させる「帯電」とそれが放電される「導電」の各要素から解説します。

    静電気が発生する状態を抑える「帯電防止」

    物質から電子が移動し、電子が少なくなった原子核と電子が多くなった原子核がそれぞれ維持されて静電気が発生したままの状態が「帯電」です。帯電を防止する手段の一つとして、帯電防止剤が使われています。

    帯電防止剤は、導電性の高分子などを主成分としたスプレータイプが一般的です。静電気が発生した物質の表面に吹きつけることで、帯電していた絶縁体にわずかに電子が移動しやすい状態が発生します。この原理を利用した帯電防止剤を使用すると、静電気が帯電する前に電子の移動が起き静電気の発生を抑えられます。

    ガラスやビニル、アクリルなど静電気を発生しやすい製品の特性を理解して、静電気の発生が厳禁な場所ではこのような製品を避けることも有効です。

    静電気が流れる状態を抑える「導電防止」

    静電気が発生した際、電気を通しやすい物質と接触し、電気が流れている状態が「導電」です。例えば、ドアノブに触れた際に痛みを感じるほどの静電気が発生した際には、帯電した電気が一気に流れ強い導電が起きています。

    高電圧状態の静電気が帯電した状態で金属製のドアノブに触れた場合、一気に電流が流れます。ドアノブを触る前に導電性はありますが、抵抗値が高い物質に触れることで、帯電した静電気がゆっくりと放電されます。

    このような急な導電を防ぐには、「静電気除去シート」やガソリンスタンドなどで使われている「静電気除去パッド」などの静電気除去対策品が有効です。こうした製品を活用することで導電が緩和され、帯電した静電気はゆっくりと放電されます。

    制御盤における静電気対策

    それぞれの静電気対策を踏まえて、制御盤設計や現場作業時の静電気対策について考えてみましょう。

    人が感じるような静電気は非常に高電圧状態です。高電圧の状態で制御盤内の電気機器に触れると、高電圧に弱い精密機器などは、静電気が放電されるタイミングで故障してしまう場合も考えられます。実際に、冬場の静電気による電気機器の故障は頻繁に起きており、その多くは定期点検や部品交換などの作業中に発生しています。しかし静電気が原因ということが判明しづらいことから「何かわからないけれど、制御盤の点検作業や部品の交換作業をしていた最中に故障してしまった」という声をよく耳にします。

    静電気が人体に帯電している場合には、制御盤内の機器に触れることで放電してしまいます。放電を防ぐには、帯電した静電気を逃がす必要があります。作業者が立つ制御盤前の床面に帯電防止マットを敷き、静電気を放電させる対策が有効です。

    また、作業時に衣服がこすれて帯電した静電気は、接地線と作業者の腕に巻きつけた導体から放電する「アースバンド」などを着用することで、作業中は常時静電気を接地線に放電可能です。設計の観点では、制御機器への確実な接地線の接続や、制御盤を設置した部屋の環境を低湿度とならないように加湿するなどの措置が考えられます。

    静電気はささいなきっかけでも発生し、低電圧時には電子が元の状態に戻り、発生しては収まる現象を繰り返しています。湿度が低く、電子の流動がない状態により人体に感じるほど高電圧になった静電気は、非常に多くの電子が無理やり移動させられ、安定した状態に戻りたくても戻れない非常に大きな不安定状態となっています。知らず知らずのうちに高電圧となった静電気を帯びたまま制御機器に触れれば、破損してしまうおそれもあります。そのため、制御盤設計や現場作業時には十分な注意が必要です。

    まとめ

    静電気は、発生しやすい物質があり、その物質を使用しなければある程度抑えることは可能です。しかし、日常的に利用する製品に静電気が発生しやすい物質が使われていたり、人体も静電気を一定量ため込んでしまう性質をもっていたりと、静電気自体の発生を抑えることは現実的ではありません。

    しかし、発生した静電気を安全な方法で対処し、発生したとしてもすぐに発生前の状態に戻せる製品を活用するなど、その影響を最小限に抑え込む対策はあります。静電気が発生する原理や性質をよく理解し事前に対策をとりながら、制御盤への影響を最小限に留めましょう。



    産業用システムソリューション
    日本のお客様によくお使い頂いている製品と、特長のある製品を抜粋して掲載しています。全32ページ。

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