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    制御盤のモジュール化から考える設計・製造の「標準化」

    限られたリソースのなかで多くの制御盤の注文に対応し、利益を上げられるようにするためにはどうすれば良いでしょうか? こう聞かれると、「作る人を増やす」「自動機やロボットを入れて生産性を上げる」などを想定しがちですが、それだと受注に応じて設備投資を繰り返すことになります。加えて最近は人手不足で採用が難しく、このままではなかなか利益につながりません。

    そこで冒頭の質問の答えですが、限られたリソースのなかで多くの発注に対応できるようにするには、まず制御盤の設計・製造業務を見直し「標準化」することが大切。そこから設備投資につなげることで、より生産性を高めることができます。今回は制御盤の設計・製造を標準化するメリットについて考えてみましょう。

    そもそも標準化とは?

    そもそも標準化とは何でしょうか?日本工業規格(JIS)では、標準化を次のように定義しています。

    「実在の問題又は起こる可能性がある問題に関して、与えられた状況において最適な秩序を得ることを目的として、共通に、かつ、繰り返して使用するための記述事項を確立する活動。」

    加えて、
    注記1 この活動は、特に規格を作成し、発行し、実施する過程からなる。
    注記2 標準化がもたらす重要な利益は、製品、プロセス及びサービスが意図した目的に適するように改善されること、貿易上の障害が取り払われること、及び技術協力が促進されることである。
    注記3 旧 JIS Z 8101:1981 の品質管理用語では、“標準化”を“標準を設定し、これを活用する組織的行為”としている。この意図するところは、注記 1 と同一である。
    (引用元:JIS Z 8002「標準化及び関連活動−一般的な用語」1.1 標準化)
    としています。

    つまりは、企業は製品を設計・製造する際、共通化して繰り返し使えるようにするため、基準や標準、規格、汎用モデルのようなものを設定し、且つ国際的な仕組みやルールがある場合はそれに則り、それを有効に使いましょうということ。
    ごく当たり前のようなことのように思えますが、制御盤業界では、発注者が社内基準やルールをもとに制御盤の仕様を決め、制御盤メーカーはそれに則って設計・製造するというパターンがほとんどです。発注者が細かな仕様まできっちり決めてくる場合や、最低限の大まかな仕様は指定し、あとは制御盤メーカーにおまかせというケースなど様々ですが、顧客(発注者)の要望に応じてカスタムで作るという慣習が当たり前になっていて、ごく最低限の標準化に止まっているのが現実です。

    関連記事:標準化の意義や業務にもたらすメリット・デメリットとは?

    制御盤の設計・製造を標準化するメリット

    制御盤の設計・製造を標準化することで得られるメリットは沢山あります。
    例えば、標準化することによって個人の好みや癖によって微妙に異なっていた設計を企業内で統一できます。そうすると図面データの流用がしやすくなって業務効率を上げることができます。また標準化によって部品の共通化が図れることになり大量調達でコストを下げることにもつながります。製造工程においても、標準化することで業務分担や作業手順が明確になり、作業性が上がって品質確保も容易になります。

    さらには国際規格や国際標準に自社の標準を合わせることで国内外向け問わず制御盤に対応できるようになり、ビジネスの幅を広げることもできます。
    加えて、言語や単位、記号などを共通言語化し、過去図面やデータを使いやすくしておけば、制御盤の設計・製造を技術者個人に依存せず、技術や知見の共有や承継もしやすくなるというメリットがあります。

    標準化した制御盤の未来像  モジュラー制御システム

    標準化を進めた先にはどんな未来が待っているのでしょう?その時の制御盤の姿とは一体どんなものになるのでしょうか?

    モジュラー制御システムは、電源、リレー、インバータなど機能ごとに小さな箱(ユニット)となっていて、必要な機能ユニットを選んでコネクタケーブルで接続し、組み合わせて1つの制御盤として機能するというもの。その名の通りモジュール構造でつくる制御盤です。

    各モジュールは標準化されて半分完成していて、制御盤メーカーは必要な各モジュールを購入し、接続するだけ。一から制御盤を設計して部品を調達して組み立てる必要がなく、装置の稼働開始までの時間を大幅に短縮できます。また制御盤が故障や不調となった際は、モジュールをそっくりそのまま入れ替えるだけなのでとても簡単。在庫を持たなくても、注文すれば通常の宅配便で届くので迅速に対応できます。
    モジュラー制御システムでは、機械の空いているスペースを活用した分散配置も可能なので、機械の最小化や最適なフットプリントの実現にもつながります。

    2022年1月に行われたIIFESでは、制御盤モジュラー制御システムの実機を使い、バラバラの状態から制御盤を組み立ててサーボモータをコントロールした後、今度はインバータ仕様に組み替えて別のモーターを制御するデモを行い、ご来場いただいた皆様に関心を寄せていただきました。

    制御盤の設計・製造の効率化を極めようとしたら、仕様を決めてカタログ製品とすることが理想的ですが、顧客から求められる仕様や要求がそれぞれに異なる以上、それは夢物語で非現実的。一方、モジュラー制御システムのような半完成品を使って土台となる設計製造を効率化し、細かな設定や調整で顧客の要求に応えていく形は現実的で、実現可能性が高く、効率化には有効なやり方です。また仕様や注文数に応じてモジュラー制御システムとカスタムを使い分け、大量注文の汎用品は半完成品の制御盤モジュラーシステムで効率的に作り、浮いたリソースをカスタムに注ぎ込むというのは利益を上げるには有効な手段となります。

    モジュラー制御システムを支える標準筐体

    モジュラー制御システムの各ユニットは、リタールのドア付き標準ハウジング「AEコンパクトボックス」を使って作られています。筐体も板金で一から作るのではなく、標準ハウジングを使うことで効率化につなげています。

    AEコンパクトボックスは、全世界ですでに2500万台以上の実績があるヒット商品です。鋼板製のドア付きハウジングで、表面にナノセラミック前処理、電着浸漬下塗り、テクスチャー粉体塗装の3層構造の処理が施してあり、油脂やクーラント剤、洗浄剤などに対して強い耐腐食性を備えています。防水防塵性能もIP66(片扉)まで適合し、あらゆる装置や機械の制御盤や操作盤に使うことができます。ULやCSAなど国際規格を取得し、CEマーキングにも対応し、世界のどこでも使うことができます。
    最も小さいもので幅200mm×高さ300mm×奥行120mmから、最大で幅1000mm×高さ1400mm×奥行300mmまでラインナップを揃えています。展示会「IIFES2022」で使ったデモ機では、幅300mm×高さ300mm×奥行210mmの立方体に近いタイプを使っています。




    制御盤、操作盤、FA分野のあらゆる装置に
    AEコンパクトボックス
    ae_modupng

    標準化をするなら今がチャンス

    標準化とは、例えて言うならば、料理におけるレシピを作るようなもので、ある程度のルールや基準を決めれば、誰でも簡単に、繰り返して同じものを作ることができます。また時にはアレンジして応用すれば、効率化しながらオリジナリティを出すこともできます。
    人手不足の深刻化やAIやIoTなど新しい技術が出てきて制御盤のあり方も変わるなか、こうした時代の分岐点においては、これまで不文律で変えることができなかった慣習ややり方を変える大きなチャンス。制御盤メーカーが積極的に標準化を進めて納期やコストを改善し、顧客に提案することはお互いにとってメリットになります。


    組み立て動画はこちら
    【モジュラー制御システム】未来の制御盤製造の在り方の1つとして、制御盤の「モジュール化」をご紹介

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