
Text:門田 将(もんでん しょう) ITセールスグループ マネージャー
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DLC は"検討するもの"から"実装するもの"へ
2026 年もシンガポールで開催された Data Center World Asia に参加してきました。
Tech Week Singapore 期間中、目玉として開催されている Data Center World Asia (DCWA)。昨年に続いての参加となりましたが、まず驚かされたのは展示規模の拡大です。会場フロアは昨年から増床されており、アジア地域におけるデータセンター市場の成長期待の大きさを改めて実感しました。
シンガポールは、多くのハイパースケーラーにとってアジア地域のデータセンター調達や投資判断の重要な拠点の一つとされています。そうした背景もあり、DCWA にはアジア全域のデータセンター事業者、設計会社、設備メーカー、IT ベンダーが集まり、今後数年の業界トレンドを感じ取ることができます。日本にいると東京と大阪ばかりを見てしまいますが、DCWA に行くとシンガポールを中心にアジア全体を見ているプレイヤーが多いことを実感します。
今回の展示会を一言で表現するなら、「DLC(Direct Liquid Cooling)は、もはややるかやらないか、どうやるか、ではなく、より効率的に運用するフェーズに入った」ということです。
DLC 展示は当たり前。その先の世界へ
昨年同様、DLC 関連ソリューションの展示は非常に多く見られました。
しかし今年特徴的だったのは、単純な「液冷対応サーバー」「CDU 展示」といった内容ではなく、"DLC 導入後に発生する新たな課題への提案"が増えていたことです。
例えば、
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CDU 二次側冷媒の品質モニタリング
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冷媒の漏洩検知・分析
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OCP ラック運用の高度化
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Rack Scale Architecture
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直流電源供給
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AI クラスター向け運用管理
などが挙げられます。
数年前までは、「本当に液冷の時代は来るのか?」という議論が中心でした。
しかし現在は、「液冷環境をどう運用していくのか?」 「液冷環境で電力・冷却・監視をどう最適化するのか?」という議論へ移っています。これは市場が実証段階を終え、本格導入フェーズに入ったことを示しているように感じました。
リタールブースは今回のトレンドを押さえた展示構成

その中でリタールは以下のソリューションを展示しました。
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CDU in Row
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NVIDIA MGX 向けラック
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OCP ORV3 + CDU in Rack
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RiLineX
いずれも現在の高密度コンピューティング市場を反映した内容となっています。

CDU in Row および OCP ORV3 については昨年の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
いずれも現在の高密度コンピューティング市場を反映した内容となっています。
日本市場だけを見ていると OCP や MGX の広がりは限定的に見えます。しかしながら、DCWA では既に次世代AIインフラの議論が始まっていました。今回はリタールの展示の中でも CDU In Row とともに特に注目を集めていた NVIDIA MGX 向けラックについて紹介したいと思います。
NVIDIA MGX™とは何か
AI インフラ市場において、NVIDIA は GPU だけでなくサーバーアーキテクチャ全体の標準化も進めています。その中で発表されたのが NVIDIA MGX™(Modular reference Architecture)です。
MGXは、CPU や GPU の組み合わせを柔軟に変更できるモジュラー型サーバープラットフォームです。サーバーメーカー各社は MGX 準拠の設計を採用することで、製品開発期間の短縮や大規模AI基盤向けの迅速な展開が可能になります。AIクラスター向けデータセンターでは、今後 MGX 対応システムの採用がさらに進むことが予想されます。
19インチラック、OCP ORV3、MGXラックの違い
従来のデータセンターでは幅広い互換性を誇る 19 インチラックが標準でした。
しかしAI向け環境では事情が変わります。
今後の AI データセンターでは、「19 インチラックか OCP か」という比較だけではなく、
「AI クラスター専用アーキテクチャをどう導入するか」という視点が重要になってくるでしょう。
| 項目 | 19インチラック | OCP ORV3ラック | NVIDIA MGXラック |
|---|---|---|---|
| 主な用途 | データセンター、エンタープライズIT全般 | ハイパースケール DC | AI/HPC クラスター |
| 推進団体 | EIA/ECA 標準 | Open Compute Project(OCP) | NVIDIA |
| 主な採用企業 | 企業DC、コロケーションDC | Meta、Microsoft、Googleなど | NVIDIA パートナー各社 |
| サーバー設計思想 | 汎用性重視 | 効率性重視 | AI 最適化 |
| 電力密度 | 数 kW~20 kW 程度 | 20 kW 超~ | 100 kW 超級にも対応 |
| 冷却方式 | 空冷中心 | 空冷+液冷 | 液冷前提 |
| ラック横寸法 | 19 インチ標準 | 21 インチベース | 19 インチ |
| 電源供給 | AC 主体 | バスバー活用 | バスバーによる高電力供給対応 |
| 拡張性 | 高い | 高い | AI ワークロード向けに最適化 |
| 導入主体 | 一般企業 | ハイパースケーラー | AI クラウド事業者、GPU サービス事業者 |
NVIDIA MGX時代に対応するリタールの新しいラックソリューション
今回の DCWA で展示した NVIDIA MGX 向けラックは、単なる新製品というよりも、AIデータセンター時代におけるインフラの変化を象徴する展示だったように感じます。
数年前まで、データセンター業界では「19インチラックか OCP ラックか」が大きな議論の一つでした。しかしAIの普及によって、議論の焦点はさらにその先へ進んでいます。
現在問われているのは、
「AI クラスターをどのようなアーキテクチャで構築するのか」
というテーマです。
NVIDIA MGX™ は、そのためのモジュラー型リファレンスアーキテクチャとして登場しました。GPU、CPU、ネットワークを柔軟に組み合わせながら、AI インフラを効率的に展開するための共通基盤です。
こうした背景の中で、リタールは NVIDIA と連携し、MGX Architecture Rack を開発しています。
このラックの特徴は単なる 19 インチラックの延長線上にない点です。
生成 AI の普及によって、GPU サーバーはますます大型化・重量化しています。また、ラック単位の消費電力は数十 kW を超え、液冷も前提条件になりつつあります。
リタールの MGX Architecture Rack は、
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AI 用途に最適化された 19 インチフォームファクター
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Direct Liquid Cooling(DLC)対応
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最大 1,400 kg の動的荷重対応
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最大 1,400 A(67.2kW)の高電力対応バスバー
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将来の GPU 世代更新にも対応できる柔軟な構造
といった特徴を備えています。
重要なのはスペックの数字そのものではありません。
ラック、冷却、電源を個別に考えるのではなく、AI インフラ全体を一つのシステムとして設計する考え方が求められていることです。今回のDCWAでは、MGXラックが次世代AIデータセンターの設計思想そのものを表しているように感じました。
もう一つの注目展示、RiLineX
私が今回のリタールの展示の中でで特に興味深いと感じたのが RiLineX です。
AI 市場が拡大する中で、GPU や液冷ばかりに注目が集まりがちです。しかし実際には、それらを支える電源インフラも同じくらい重要です。
RiLineX はリタールの新しいバスバーシステムプラットフォームであり、
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設計時間の削減
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組立工数の削減
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柔軟な電源分配
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DC電源:次世代800Vにも対応
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オープンプラットフォーム
※ブレーカメーカー・型式に依存せず使用可
を特徴としています。
日本市場では AI よりも先に、人不足の方が深刻です。GPU サーバーよりも先に、盤を作る人が足りない。
そのような状況の中で、単に配電機器を供給するのではなく、設計と製造を効率化するプラットフォームへのニーズは今後さらに高まるでしょう。
会場でも「AI 向け高密度コンピューティング」の議論だけでなく、
「その電力をどのように供給するか」
というテーマに関心を持つ来場者が増えていたことが印象的でした。
直流電源供給への新たな可能性
今回の DCWA で見られたもう一つの潮流が、直流電源供給への関心の高まりです。
現在のデータセンターでは交流給電が一般的ですが、AI インフラの急速な拡大によって電力変換効率への注目が高まっています。
特に、
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電力変換ロスの削減
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システム効率向上
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設備構成の簡素化
といった観点から、直流給電を研究する動きが徐々に広がっています。
実際にリタールは今年のハノーバーメッセにおいて、OCP ラックフレームと RiLineX を組み合わせたDC給電サイドカーのコンセプト展示を行いました。
もちろん、現時点では直流給電がすぐに市場の主流になるとは考えていません。
しかし数年前まで「本当に来るのか」と言われていたDLCが、今や業界の前提条件になったことを考えると、直流給電もまた数年後には当たり前の選択肢になっている可能性があります。
DCWA 2026 で感じたのは、業界の関心が DLC そのものから、その先にある電源・運用・AI インフラ全体の最適化へと移りつつあるということです。
その意味で RiLineX や DC 給電の取り組みは、現在の市場ニーズだけでなく、その次の世代を見据えた提案として非常に興味深い展示でした。
まとめ
今回の DCWA 2026 で最も印象的だったのは、
DLC が"未来の技術"ではなく"前提条件"になっていたことです。
そして業界の関心は、DLC 導入、CDU、ラックといった個別製品から、「AI データセンター全体をどう構築するか」へ移り始めています。 DCWA 2026 で感じたのは、ラック、冷却、電源がそれぞれ独立して議論される時代は終わりつつあるということです。AI インフラの高密度化が進む中で、ラックの選定は冷却方式に影響し、冷却方式は電源設計にも影響します。そのため今後は製品単体ではなく、インフラ全体をどのように最適化するかが重要になるでしょう。リタールは、ラック、液冷、配電、エンクロージャーを一体で提供できる数少ない企業として、この変化を支えていきます。
また私たちは、RiLineX や直流給電分野において協業いただけるパートナー企業も積極的に探しています。盤メーカー様、電源メーカー様、システムインテグレーター様など、共に次世代インフラを創っていただける皆さまとお話しできれば幸いです。
シンガポールで見えた未来は、日本にも確実にやってきます。問題は来るかどうかではなく、いつ来るかなのだと思います。
公開:2026年10月14日