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制御盤用キャビネット・ボックスの熱対策

作成者: admin|Sep 26, 2025 8:00:00 AM

内部の機器の破損や誤作動を防ぎ電気の安全を守るために、キャビネットを使用する環境によっては温度管理が大切になってきます。

ここではキャビネット内部の温度や周辺温度への対策をみていきましょう。

制御盤用キャビネットの温度リスク

電気の安全を守るために必要なキャビネット。日の当たる屋外や高温多湿のビニールハウスの中など過酷な環境下で使用されることも少なくありません。キャビネットの内部が高温になると、部品寿命は短くなり、中の機器が誤作動を起こすなどの重大なリスクが生じることがあります。そのため、キャビネットの内部温度を適切な温度に管理し、周囲の環境に合わせた材質のキャビネットを選ぶことが重要になってきます。

内部温度管理の重要性

キャビネットの内部には電気機器が収納されています。通電する電気機器は発熱しますので、キャビネットの内部温度は周囲に比べ、およそ10℃から20℃ほど高くなる傾向があります。

アレニウスの法則(102倍則)により、10℃の温度上昇は機器内部の電解コンデンサの推定寿命を半減させるという経験則があります。PLCやインバータ、ブレーカーなどは、閉鎖形の場合、周囲最高温度を40℃を想定していますので、それを超える高温環境下では誤作動を起こしてしまう可能性が高まります。

キャビネットの内部の機器の破損や誤作動は工場の停止など重大なリスクにつながることも少なくありません。そのためキャビネットの内部温度管理、特に温度上昇への対策がとても重要です。

温度環境によるリスク事例

温度による影響を受けやすい条件として、下記のような事例が上げられます。

事例1:直射日光が当たる場所に設置

太陽の熱により内部の温度が上昇し、内部機器が誤作動

事例2:工場内の高温になる場所に設置

樹脂製のキャビネットが高温により変形

事例3:大型冷凍庫の内部に設置

樹脂製のキャビネットが低温により割れる

このようにキャビネットを取り巻く環境によりさまざまなリスクがありますので、使用環境に合わせて適切なキャビネットを選ぶことが重要になります。

制御盤用キャビネットの熱計算の方法

キャビネット内の熱計算は下記のフローで行います。

発熱量の把握

発熱量の高い部品を中心に仕様書で発熱量を確認し合算します。仕様変更やオプション展開を踏まえ、発熱増加量を想定し算出するとよいでしょう。

設置条件の把握

熱放散を計算するため、キャビネットの表面積や周辺の状態などを確認します。筐体の有効面積の計算としては、IEC規格などで定められているため参考にすると良いでしょう。(IEC/TR 60 890

必要な冷却能力の算出

発熱量から熱放散を引いて、キャビネットの温度管理に必要な冷却能力を算出します。

温度管理機器の選定

条件にあった冷却機器を選定します。機器の使用環境や設置場所を加味して選定を行う必要があります。例えば周辺温度が低く自然放熱で冷却できるか、外気は清潔でキャビネット内に取り込んでも問題ないか、周辺温度が高く水冷など熱交換器が必要か、など機器の選定において考慮すべきことは多くあります。

制御盤用キャビネットの熱対策

標準の温度範囲を逸脱する環境でキャビネットを使用するときや、機器の発熱・周辺の環境によりキャビネット内部の温度上昇が予測される場合には、キャビネットの温度対策を取ることが必要になります。ここでは、キャビネットの温度対策としてどのようなものがあるのかをご紹介します。

遮熱盤(遮光板)

屋外に設置されるキャビネットにおいて直射日光による温度上昇が予想される場合、キャビネット上部や側面に遮熱板(遮光板)を設置します。これにより太陽からの熱が直接キャビネットに伝わるのを防ぎます。

ルーバー・ガラリ(自然換気)

自然対流(温まった空気の上部への移動)を利用して盤内を換気することで、キャビネット内部の熱を外に排出します。周辺温度は高くなく、内部機器の発熱による温度上昇の対策を行いたい場合に使います。外気の吸気口と排気口が必要です。
環境に応じてフィルターマットを併用するなどして、防塵対策します。

ファン(強制換気)

ファン(換気扇)を設置することにより、キャビネット内部の熱を外に排出します。周辺温度は高くなく、内部機器の発熱による温度上昇の対策をより能動的に行いたい場合に使います。自然換気の場合の吸気口 もしくは排気口をファンに変更し、強制的に換気します。このとき、吸気口、排気口の近くに障害物がないように配置する必要があります。

キャビネット側面に設置するタイプと、キャビネットの天井に設置するルーフタイプのものなどがあります。環境に応じてフィルターマットを併用するなどして、防塵対策します。

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盤用空冷式熱交換器

キャビネット内部と外部の空気の温度差を利用する空冷式の熱交換器です。キャビネット周囲の内部よりも低い温度の空気を温度の高い内部の空気との間で間接的に熱交換させることで、内部の温度を下げるための装置です。プレート式やヒートパイプ式などがあります。

キャビネットの周辺に粉塵や汚れが多い、多湿であるなど、キャビネット内へ外気を導入できないような環境下で使用します。

盤用クーラー

周辺の温度が高く換気や外気を利用した冷却が見込めない場合や、内部機器による温度上昇が大きい場合などは、キャビネット用のクーラーを使用します。

クーラーには電子式、コンプレッサー式や水冷式などがあります。

電子式は、半導体(ペルチェ素子、電気を流すことで温度差を生じる)を利用したクーラーです。その他のクーラーに比べて冷却能力に対する消費電力が大きいため大型化などには不向きですが、振動が無いことから小型のボックスや操作パネルなどに向いています。

コンプレッサー式は、完全に密閉された冷却回路内で冷媒を圧縮・膨張させることで生じる温度差を利用し、熱を外部に汲み出します。適切に使用することで、非常に効率の良い冷却が可能です。

水冷式は、チラーなどから供給される冷却水を利用してキャビネット内部の空気を冷却します。キャビネット周囲の温度の影響を受けにくく、高温環境下(70℃付近)での使用も可能です。大規模な冷却に向きますが、チラーなどの冷却水供給設備、その間の配管工事と適切な断熱処理が必要です。

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まとめ

キャビネットに収納される機器は、電気の安全を守るための大切な機器です。誤作動や故障が起これば、工場やラインの停止など重大なリスクにつながる可能性があります。温度による誤作動や故障が起こらないよう、必要に応じた温度対策を行いましょう。


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公開:2024年8月5日|最新更新:2025年9月25日