インバータなどの動力機器を搭載する制御盤は、機器自体が発熱するため、制御盤外に放熱する必要があります。動力機器の発熱量は、動力機器が大型なものになるほど相対的に増加します。また、動力機器の大きさによって制御盤も大きくなり、盤面からの放熱量も増えます。
その対策の一つとして有効なのが制御盤用ファンです。この記事では、制御盤の熱対策としての制御盤用ファンについて説明します。
制御盤には、さまざまな機器が搭載されます。
リレーやPLCといった制御機器は必要な電力も少量で、大きな発熱を伴うことはありません。そのため制御系機器がメインの制御盤の場合は、放熱ファンのない密閉型の制御盤であっても盤面からの放熱だけで充足し、盤内温度の上昇などを考慮する必要はありません。
しかし、インバータやマグネットスイッチなどの動力機器が搭載された制御盤では、機器自体が発熱します。特にインバータは、交流を直流に変換する部分の変換ロス分のほとんどが、熱となります。このため、大型のインバータにおいては盤内に何も対策を行わないと、盤内温度が50度以上の高温となってしまう場合もあります。
この盤内の高温状態によって、インバータ本体の故障や、一緒に搭載されるPLCやリレーなどの制御機器の故障につながることがあります。
そこで、制御盤内の熱を外部に放出する制御盤用ファンが必要になってくるのです。
制御盤用ファンは盤内の発熱量を計算して必要な風量に応じた大きさを検討する必要があります。制御盤用ファンは大きさ以外にも、さまざまなタイプのものがあります。
ここでは代表的なタイプとして、フィルターファンユニットとルーフファンについて解説します。
フィルターファンユニットは、盤外部とファンの間にフィルター部分があるタイプのファンです。
制御盤用のファンにはフィルターがないタイプのものもあります。設置は簡単で比較的安価ですが、外部にファン部分が露出しているため、外部からの埃が入り込んだり、湿度が高い場合は空気中の水分なども盤内に取り込んだりすることがあります。
盤内に埃や水分が侵入すると、熱対策としてファンを設置したにもかかわらず、ファン設置が原因で盤内機器が故障してしまう可能性もあります。
こういった場合に有効なのが、フィルターファンユニットです。盤外部から空気を取り込む際、フィルター部分で埃などの侵入を防ぐことができます。
水分の侵入を防ぐには、フィルター部分にフードなどを設置します。それにより水気の多い場所でも盤下部にファンを設置することが可能となります。
ルーフファンは、上部がカバーで覆われているタイプのファンです。
前述のように、盤の上部は排気用のフィルター設置が理想です。しかし、制御盤の設置場所によっては、どうしても天井部分に排気用ファンを設置しなければならない場合も出てきます。
こういった場合に有効なのが、ルーフファンです。上部のカバーで埃の侵入を防ぎながら、側面から排気を行います。
一列に盤が置かれるような場合や、大型のファンを設置する場合、盤前面に人が立つ場合など、吸気が大きくなりすぎるような場合にルーフファンを用います。
制御盤用ファンの使い方には、外部から空気を取り込む「吸気」と、内部の空気を外に逃がす「排気」の2通りがあります。
突然ですが、熱を含んだ空気はどのように動くでしょうか。地面付近で温度が上がると、大気中では上昇気流が発生することがあります。熱を帯びて周囲よりも温まった空気は軽くなるため、上方向への気流として動きやすくなるという性質があります。
盤内でも同じことが言えます。制御盤の中で温まった空気は上に移動します。その流れに沿って、制御盤の下側で吸気を、上側で排気を行えば、より熱を放出しやすくなるといえるでしょう。
制御盤用ファンの取り付け位置と放熱の方向について、もう少し詳しく説明します。
前述のように、下側で吸気を行えば効率よく熱を放出できます。そのため、制御盤の下側に吸気ファンを取り付けるのが理想的です。
一般的に制御盤は埃や汚れ、水などが入らないようにすべきです。しかし下側の吸気ファンは制御盤の床面に近い場所に設置されることになるため、吸気と一緒に床面の埃なども一緒に吸い込んでしまう可能性があります。
その対策として、フィルター付きのファンユニット(フィルターファンユニット)を設置することが挙げられます。
下側に吸気ファンを設置する場合、上側は排気となりますが、下側でファンにより送風しているため、上側はファンではなく放熱を目的としたフィルターのみを設置することが多いです。
上の例とは逆に、下側にはファンを設置せずに吸気を目的としたフィルターのみを設置し、上側に排気用ファンを設置する場合があります。
この場合、下側からフィルターを通した空気が取り込まれるため、上側の排気用ファンにはフィルターがないものを設置することが一般的です。
フィルター付きのファンユニットを導入する必要がない分、コスト面では有利になりますが、上側に設置したファン部分は外部に露出した状態となるため、そこから埃などが盤内に入りやすいといったデメリットがあります。
リタールでは、上側に排気ファンを設置する場合でも、上側から埃や水分が入らないようフィルターファンユニットを設置することを推奨しています。
では、制御盤の熱を放出するためにどの程度の大きさのファンを搭載する必要があるのでしょうか。
制御盤の放熱量を計算で算出する方法があります。求められた放熱量に応じた大きさのファンを選定することで、適切な大きさのファンを搭載することが可能です。
詳しく説明しましょう。
まずは制御盤内に搭載される機器の個別の発熱量を調べます。そしてそれを足して、制御盤内機器からの発熱量の総量を計算します。
インバータなどの動力機器は、取扱説明書などにインバータ容量別の発熱量が記載されている場合があります。こうした記載を確認し、制御盤内機器がどの程度の発熱をするのかを把握します。
リレーなどの制御機器には消費電力が記載されています。その場合は消費電力が発熱量となります。
機器の取扱説明書によっては、発熱量がカロリー(cal)で記載されている場合があります。その場合は、カロリーをワット(W)に変換する公式を使って消費電力と同様の記載にします。
制御盤内の総発熱量が計算できたら、次に制御盤内の温度がどの程度上昇してもよいのか、「許容温度上昇値」を検討します。
これは、制御盤内がその周囲温度と比較してどの程度上昇をするのかを検討するため、周囲温度に依存します。
たとえば「盤内最大温度が40℃まで」という想定でファンを選ぶ場合を考えてみます。
熱帯地域で平均気温が30℃を超えるような場所では、その差分を取って10℃となります。一方、寒冷地で平均気温が20℃程度であれば、20℃という許容値になります。
制御盤内の発熱量と許容温度上昇値が出たら、ファンの必要風量を計算します。
これには盤のファンでの放熱のほか、盤面での放熱などの部分も検討する必要がありますが、簡易的には
必要風量(m3/h)=3.1×制御盤内の発熱量 / 許容温度上昇値
で計算できます。
ここで、3.1は海抜によって変化する係数です。高度が高くなるほど熱を運ぶ媒体となる空気が薄くなるため、より風量が必要となります。
一般的には、高度500m付近で3.3、高度1000m付近では3.5となります。
この式から、制御盤内の発熱量が大きくなると、それに応じて大きな風量のファンが必要になることがわかります。これは当然の結果です。
加えて、許容温度上昇値が小さいと必要な風量が大きくなり、逆に許容温度上昇値が大きいと必要な風量が小さくなることもわかります。
これは、「寒冷地で周囲温度が低くて想定の盤内最大温度までの差が大きい場合、許容温度上昇値が大きくなり、小さなファンで充足する」ということを、計算式でも説明できる結果となります。
必要な最大風量が決定できたら、次はそれに応じたファンを選定します。
制御盤の発熱量の誤差などもあるため、通常は、計算で出された最大風量から1.3~2倍の性能を持ったファンを選定します。
フィルターファンユニットとフィルタールーバーを選定する場合は、フィルターによる風量低下がありますので、組合せに応じた補正後の風量を確認して選定します。
制御盤用ファンはさまざまな種類や大きさがあり、制御盤の熱容量の検討からファンの選定まで、意外なほど考慮すべき点が多い製品です。
リタールでは、フィルターファンユニットやルーフファンユニットなど多彩なタイプのものを取り揃えております。
制御盤の内部機器を熱から守りながら、外気を効率よく取り入れるファンユニットの導入にリタールの製品を、ぜひご検討ください。
フィルターファンユニット ネジも要らない!工具不要・簡単取り付け
フィルターファンユニット用 プリーツフィルターもご紹介【保護等級 IP54 IP55】
▼関連記事
制御盤の熱対策に最適な冷却方式の選び方_コスパに優れた定番のフィルターファンユニット
フィルターファンユニットの利便性
制御盤用キャビネット・ボックスの熱対策
盤内の温度管理・熱対策に最適な製品のご案内
『盤用クーラーシリーズ』