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    漏洩電流の危険性と対策―測定・計算の方法もご紹介

    漏洩電流とは、どういった影響を及ぼす電流なのでしょうか。漏洩電流の特徴と危険性、混同されやすい用語との違い、測定方法と基準となる値、対策などをご紹介します。

    漏洩電流とは

    漏洩電流の意味と、それによって及ぼされる影響から見てみましょう。

    電路から漏れ出た電流

    正常な電気回路では、電線や機器の内部の導通がある定められた通り道だけを、電流が流れます。

    しかし予期せぬ事態により、あらかじめ電流が流れることを想定した電路ではない部分に電流が流れることがあります。これを漏洩電流と言います。

    漏洩電流がある場合は正常な状態ではなく、その電路の健全性が保たれていない状態と言えます。

    漏洩電流の影響

    漏洩電流は想定した電路ではない部分を流れる電流です。予期せぬ部分を流れていることもあり、場合によっては人がその部分に触れてしまう可能性も考えられます。漏洩電流が人体を通過すれば感電を引き起こします。感電の電流は30mAを超えると危険とされ、100mAを超える場合には重篤な被害が起こるとされています。

    また、漏洩電流が原因で起こる事故として次に考えられるのが、火災の発生です。漏洩電流が通過した部分で火花が発生したり過熱状態になったりした場合、出火して火災の原因になることもあります。

    このほか、通信機器や半導体機器では漏洩電流がノイズの原因になることもあり、機器の誤作動を引き起こす可能性もあります。

    漏洩電流と漏れ電流と地絡電流の違い

    漏洩電流と似た用語として、漏れ電流や地絡電流があります。これらはどのように違うのでしょうか。

    漏洩電流はこれまで説明したように、本来の電路以外の部分に流れる電流です。

    一方、漏れ電流は電極に電圧が印加されていないオフの状態で電極に流れる電流のことをいいます。この場合の漏洩電流と漏れ電流違いは、電流が流れるのが本来の電路かどうかという点になります。

    では、地絡電流はというと、絶縁不良のために大地に流れてしまう電流を指します。漏洩電流は絶縁不良なしに大地に流れる電流ですので、両者は絶縁不良があるかどうかの違いによって分けられます。

    これら3つはそれぞれ別の意味を持つものの、実際はすべて漏洩電流と呼ばれることもあり、その現象は総じて漏電と呼ばれます。

    漏洩電流の測定方法

    漏洩電流の有無はクランプメーターを使用することで簡単に測定できます。

    交流回路において通常の電流を測定するときは、単相であれば2本のうち1本、三相であれば3本のうち1本をクランプして計測します。

    漏洩電流を測定する場合は、単相なら2本まとめて、三相なら3本まとめてクランプします。

    このようにまとめてクランプすると、漏洩電流がなければ電流値はゼロになります。これは、電源側から負荷側に流れる電流と戻ってくる電流、それぞれで発生する磁束は同じ大きさになり打ち消し合うためです。

    漏洩電流がある場合は、磁束の大きさに差が生じるために電流値が計測されます。計測された電流値こそが漏洩している電流の大きさとなります。

    漏洩電流の基準と計算

    漏洩電流は必ずしもゼロでなければならないというわけではありません。

    電路は絶縁されていることが原則ですが、経年劣化により絶縁抵抗が低下し漏洩電流が大きくなることも考えられます。そういった場合を想定し、電気設備技術基準第58条で低圧電路の絶縁抵抗が定められています。

    • 150V以下の場合は絶縁抵抗0.1MΩ以上
    • 300V以下の場合は絶縁抵抗0.2MΩ以上
    • 300V超の場合は絶縁抵抗0.4MΩ以上

    低圧電路において、実質使用されている電源電圧は150V以下の場合は100V300V以下の場合は200Vです。この電圧と絶縁抵抗を元にオームの法則に則って計算すると、どの場合でも1mA以下の電流が流れてもいいとされていることがわかります。これが漏洩電流の限度値です。

    実際は絶縁抵抗を測定し絶縁不良がないことを確認する必要がありますが、停電できないといった理由で絶縁抵抗測定が困難な場合もあります。そういった場合を想定し、電気設備技術基準・解釈の第14条第1項で漏洩電流は1mA 以下と規定されているのです。

    このように、上で定められている絶縁抵抗は漏洩電流1mA以下となるように設定されていると考えることもできます。

    漏洩電流の防止対策

    感電の危険性を考えた場合、30mAを超える電流が人体を流れると危険とされることから、感電から保護する目的で1530mAの高速型の漏電遮断器が使用されます。同時に漏洩電流があることを知らせる漏電警報機も設置することで早期対策が取りやすくなります。

    ただし、パワー半導体を使用したスイッチング回路や通信回路などでは大きな漏れ電流が常に生じている場合もあります。これは、あえて漏れ電流を生じさせノイズフィルターから大地に流すことで稼働を安定させているためですが、こういった電路では漏電遮断器や警報機が作動してしまうこともあります。

    この電流は漏れ電流と表現するのが適切であり、厳密な意味では漏洩電流とは別物ですが、漏電遮断器が正しく作動しない原因となるため対策が必要です。この場合にはノイズフィルターの漏洩電流を考慮した漏電遮断器を選定しなければなりません。

    また、インバータからの高周波によって発生する漏洩電流によって漏電遮断器が働いてしまう場合もあります。この場合は、高周波対応の漏電遮断器に変えたり定格感度電流を上げたりといった方法が対策となります。

    漏洩電流による災害や悪影響を防ぐために

    漏洩電流の定義と考えられる影響、測定方法、防止対策などをご紹介しました。

    漏洩電流が発生していると感電の危険があり、火災発生の可能性もあります。また、ノイズ発生により他の機器への影響も考えられます。漏洩電流は1mA以下という基準は重要ですので覚えておきましょう。また、漏電遮断器の設置はもちろんのこと、絶縁抵抗の低下はないか、漏洩電流がないかを定期的に測定することも重要です。

    参考:

    技術ライブラリ1 規格に適合したスイッチギア及びコントロールギアの製作 IEC61439の適用