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    アース線の役割ー分電盤や制御盤(筐体)における仕組み

    アース線は電気の安全対策において欠かすことができないものです。そもそも、アースとは一体何なのでしょうか?アース線の役割と設置方法、制御盤や分電盤におけるアースのあり方などについてご紹介します。

    アースとは

    アースは「接地」とも呼ばれ、大地(地球)に電気の回路をつなぐことを意味しています。大地は電気的に大変安定しているため、不意に漏れてしまった電気や、不必要な電気的ノイズを逃がす場所として適しているからです。アースには大きく分けて2つの種類があります。ひとつは電磁波などの電気的ノイズから通信機器や電気機器を守るためのもの、もうひとつは不意に電気が漏れてしまったとき、つまり漏電対策としてのアースです。一般に家電製品などでアースといわれる場合は後者の漏電対策を指します。ここでは漏電対策としてのアースについてみていきましょう。

    アース線の役割

    漏電対策としてのアースにはさまざまな役割がありますが、そのひとつが人体の保護です。電気機器に予期せぬ漏電が生じたときに、人が感電して重大な損傷を受けないように、別のルートに電気を流すのです。また、変圧器などのように高圧の回路と低圧の回路が隣接する場合、高圧側の電気が漏れて低圧側に流れ込んでしまうと、低圧側の機器がその電圧に耐えきれず故障したり、燃焼して火災の原因になってしまったりする可能性があります。そのような事故を防ぐために、高い電圧を持った電気を地面に流すという役割もあります。

    さらに、アースには漏電が発生した時点で漏電遮断器を作動させ、上記のような事態の発生を未然に防ぐという役割もあります。

    アース線の仕組み

    なぜアース線を設置することで漏電から人や機器を保護したり、漏電を検知したりすることが可能になるのでしょうか。

    まず漏電から人体などを守る場合について、電子レンジを例に解説してみましょう。電子レンジ内部の回路が老朽化などにより破損し、電気が漏れていたとします。電子レンジの足がゴム製であったり、レンジ台が導電性の悪い木製であったりすると、電子レンジの内部で漏れた電気の行き場がなくなってしまいます。このとき人が電子レンジ本体に触れてしまうと、行き場を失っていた電気が人の身体を通じて一気に地面へと流れてしまうのです。このような状況が感電と呼ばれています。このときに電子レンジから地面へと電線が伸びて、アース線が設置されていれば、電気にはより流れやすい方を通ろうとする性質があるので、電線を伝って地面へと流れていき、人体を保護することができるのです。

    変圧器などで低圧側の機器を保護する場合もこの仕組みは同じです。

    漏電が発生した時点で漏電を検知する仕組みについては、漏電遮断器の仕組みに由来します。漏電遮断器は出ていく電気と戻ってくる電気の量を比較し、出ていく電気の量に対して戻ってくる電気の量が少なかったときに「どこかで電気が漏れている」と判断して作動する仕組みになっています。先述の電子レンジを例にとってみると、電子レンジ内部で漏電が発生していた場合、電子レンジから先は電気の行き場がありませんので電気は流れていきません。出ていく電気がなければ漏電遮断器も「漏電している」と判断することができないのです。しかしアース線が設置されていれば、漏れた電気がアースを通じて地面へと流れていきます。すると、出ていく電気はあるが戻ってくる電気がないという状態になり、漏電遮断器が正常に作動します。アースをすることで、人や機器への影響がおよぶ前に電気の回路を遮断することが可能になるのです。

    技術ライブラリ1 規格に適合したスイッチギア及びコントロールギアの製作 IEC61439の適用

    アース線の設置の仕方

    アース線の設置方法は接地電極と呼ばれる金属を地中に埋め込み、接地線と呼ばれる電線で接地電極と機器をつなぐのが基本的な形となります。使用する電圧などによりA種からD種までの4種類に分類され、使用する電線の種類や地面の性質による接地抵抗の値などが決められています。

    A種接地工事

    600Vを超える高圧や7,000Vを超える特別高圧用など、非常に高い電圧で使用される機器に対する工事です。万が一、漏電や感電が起こると大事故になってしまうため、厳重な管理が必要です。接地抵抗が10Ω(オーム)以下、接地電極の深さは75cmより深くする、接地線には直径2.6mm以上の導線を使うなどの決まりがあります。

    B種接地工事

    変圧器など、高圧の回路と低圧の回路が隣接する電気系統に対して行われる接地工事です。高圧側の要因となる送電線の長さや電線のサイズによって条件が変動するため、工事をする場所の条件を電力会社などに問い合わせる必要があります。

    C種接地工事

    300Vから600Vの間にある低圧用の機器に対して行われる工事です。A種と同様に接地抵抗が10Ω以下であることが求められていますが、0.5秒以内に電気を遮断する装置が接地されている場合は接地抵抗の値が緩和されるなどの違いがあります。

    また水中で使う照明機器の場合は、使用電圧が300V以下でもC種の接地工事が必要になります。

    D種接地工事

    300V以下の機器に対して行われる接地工事です。電子レンジや洗濯機、エアコンなどの家庭用の機器もこれに含まれます。直径1.6mm以上の緑色の被覆電線を使用し、接地抵抗は100Ω以下であることなどが定められています。

    分電盤、制御盤におけるアース線の重要性

    分電盤におけるアース線

    基本的に分電盤には漏電遮断器(漏電ブレーカー)が取り付けられています。しかしこの漏電遮断器は、アースの仕組みの項で説明したように、機器からアースが行われていなければ作動しません。分電盤の役割である「安全に電気を分配する」を果たすためには、分電盤の先にある電気機器がしっかりとアースされていることが必要になるのです。

    制御盤におけるアース線

    制御盤の筐体は基本的に金属製です。そのため、制御盤の内部で漏電ブレーカーでは検知しきれない微小な漏電が発生していたり、内部の機器による電磁誘導で電位が生じていたりする場合、人が制御盤の筐体に触れると感電事故が発生してしまうおそれがあります。このような事故に備えて、制御盤の扉や筐体にアース線を設置していれば、人体を電流から守ることができます。

    決して高いとはいえない電圧の感電でも、作業者が汗ばんでいるなどの条件によっては死亡事故につながる危険性は十分にあります。安全確保のためにも制御盤のアース線は正しく確実に設置するようにしましょう。

    参考:

    CT