製造業における「働き方改革」

安倍晋三首相が2016年に提唱した「働き方改革」。国全体を巻き込むその取り組みは、製造業の現場においてももちろん進められています。働き方改革の趣旨と、現状における製造業の働き方に見られる問題点や課題をまとめます。また、現在行われている企業の取り組み事例を参考にしながら、製造業で求められる働き方改革について考えてみましょう。

「働き方改革」とは何か

「働き方改革」は少子高齢化に伴う労働人口減少の対策のひとつとして、2016年に安倍晋三首相が提唱したものです。

社会における生産活動の中心となる15歳~64歳の年齢の人の数を生産年齢人口と呼びますが、1947年から1949年に生まれた、いわゆる団塊の世代が一般的な退職年齢である65歳に達したことや、少子化により新しく15歳になる若者の数が減ってきていることにより、生産年齢人口は年々減少しています。具体的な数字でみると、1995年の8,700万人をピークに2025年には7,000万人、2050年には5,000万人にまで減少すると考えられています。また同時に少ない生産年齢人口で、高齢者や子供を含む社会全体の生活を支えなければなりませんので、労働生産性も向上させていく必要があります。

このような状況を改善するために提唱されたのが、「働き方改革」です。働き方改革では主に「女性や高齢者などの労働への参加」と「働きやすい環境」の2つの軸に対して活動を行っていくべきだと考えられています。今までは子育てなどのために生産活動を離れがちだった女性や、定年退職はしたものの健康で元気な高齢者などに生産活動に参加してもらうことは労働力の増加につながります。また、働きやすい環境をつくっていくことで、生活に余裕が生まれることによる出生率の上昇、働く意欲の向上による生産性の向上などの効果が期待されています。具体的には長時間労働の抑制や、非正規社員と正社員の格差の是正、女性や高齢者の就業促進などの目標が掲げられています。

労働に従事することができる年齢の人口が減少すると、日本全体で労働力が不足することになり、製造業においても人材の確保は大きな課題となってきます。とりわけ製造業では、長時間労働などが問題になるケースや、熟練の職人に頼った領域などがあり柔軟に人材を配置しにくいこと、季節労働者や外国人労働者など非正規雇用者が多い、といった問題がよく挙げられます。人材を確保し定着させるためには「働きやすい環境」づくりを急ぐ必要があると考えられています。

製造業における「働き方改革」の事例

実際に製造業で行われている働き方改革の事例をご紹介します。

日本精工株式会社

仕事の成果は時間で計るものではないという考えのもと、時間外労働削減や年次有給休暇の取得促進などの取り組みを行いました。具体的には次のような活動が行われています。

  • 労働時間の管理

タイムレコーダーの記録とパソコンのログオン・オフ時間を照合し、適正な労働時間を把握。1ヶ月の労働時間が長い従業員については、人事部門で要因を把握したうえで、職場に人員を再配置する等を行う。

  • ノー残業デーの導入

原則として毎週水曜日はノー残業デーを導入。

  • 年次有給休暇の取得促進

上司の目標管理の中に「休暇の取得計画と実績」などを設定することで、年次有給休暇取得率を上げる。

花王株式会社

「仕事と生活の調和」だけでなく「効果・効率的な仕事の仕方の実現」「社員の健康増進」といった部分も含め、自由度とメリハリのある働き方の実現を目指しています。

  • コアタイム廃止

半日有給休暇との組み合わせや使い方によっては逆に長時間労働になることから、10時から15時までのコアタイムを廃止した。

  • 時間単位の休暇取得制度の新設

例えば子供の通院や官公庁への用事などで「半日有給休暇を取得しても、数時間以内で用事がすむことが多い」という社員の声を受け、年次有給休暇のうち5日間を1時間単位で取得できる制度をつくった。

  • 男性社員の育児休業取得促進

子供が生まれた男性社員の所属する部門の役職者にも育児休業取得に向けた啓発リーフレットを配布。男性の育児休業取得率は、127名(対象者の約40%、2015年)となった。

今後の働き方について

少子高齢化による生産年齢人口の減少にともない、今後ますます人材の確保が困難になるでしょう。それに伴い、女性や高齢者だけでなく、外国籍の労働者や、障がい者などの雇用も大きく広がっていくでしょう。人材を集めるためだけでなく、集まった人材を長く確保し定着させていくためにも「働き方改革」は重要な課題となります。

参考:

関連記事