日本における国際標準化対策の意義

「技術で勝ってビジネスで負ける」といわれる日本。その原因は国際標準への対応の遅れだと分析する声もあります。ICT(Information Communication Technology、情報通信技術)、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)の普及が加速し、産業の現場が国を超えつながっていくなか、今後日本が世界で生き残っていくためには何が必要なのでしょうか?国際標準化への対応について考察します。

技術で勝って事業で負け続けた日本

日本の技術力が高いことは知られています。世界に先駆けて新しい技術が開発されることも少なくありません。しかし大変残念なことに、その先端技術が世界に伝わらず、国内だけで進化を続けるうちに、他国で同様の技術が開発され世界に広がり、いつのまにか国際競争力を失ってしまっている、というケースが数多く存在します。いわゆる技術の「ガラパゴス化」です。

事業で負けた事例

例えば、テレビのデジタルハイビジョン放送についてみてみましょう。走査線の数が多くきめ細やかな高品位映像、いわゆるハイビジョンの開発にいち早く乗り出したのは日本でした。当時、日本はハイビジョン放送を衛星のアナログ放送電波にのせて放映しようとしました。後れてハイビジョンの開発に着手したアメリカなどは、ハイビジョン放送を地上波のデジタル電波にのせて放映することを考えました。日本で開発が進んでいたアナログ放送は、周波数帯に空きが無いなどの理由で難航します。その間にアメリカでのデジタルハイビジョン放送が大幅に発展し、最終的には日本もアメリカにならう形でデジタル方式へと舵(かじ)をきることになりました。また放送形式についても、世界的にはATSCやDVB/T形式が多いなか、日本ではISDB-Tが使われています。

もうひとつの例としてはブルーレイ(Blu-ray)対HD DVDの標準争いがあげられます。当初、次世代DVDとしてNECと東芝がHD DVDの開発を進めていました。しかし最終的に勝ち残ったのは、ソニー、パナソニックが世界的な競争力の高いロイヤル フィリップス エレクトロニクス(現在のロイヤル フィリップス)

、サムスン電子、ヒューレット・パッカード、デルらグローバル企業と手を組んで開発を進めたBlu-rayでした。

ほかにも携帯電話、非接触ICカードなど、高い技術を持ちながら国際標準の覇権を握れず、日本国内でしか発展を遂げることができなかった製品が日本にはたくさんあります。

国際競争力と技術標準化

どんなに優れた製品をつくっても、国際的な標準を満たしていなければ国を超えて製造、販売することができません。国際競争力を持った製品、つまり国際的に広く販売される製品をつくるためには、国際標準規格を満たしている必要があるのです。

国際標準規格の代表例

それでは国際標準規格にはどのような種類があるのでしょうか。代表的なものをいくつかご紹介します。

  • ISO

日本語では国際標準化機構と呼ばれています。工業製品や技術にはじまり、農業や医療、マネジメントシステムなど幅広い分野をカバーしているのが特徴です。ISOによって制定された規格は、「ISO」ではじまる数字と記号によって表されます。

  • IEC

日本語では国際電気標準会議と呼ばれています。工業分野全般をカバーするISOとは異なり、電気、電子系の技術分野のみを対象としています。主に互換性などのほか、安全や環境への配慮などについての国際標準が定められています。

国際標準化の動向

自国で開発された規格や標準が国際標準として採択されれば、国際競争力の面において有利になります。

国際的な標準は一般的に、各国や地域の代表者で結成される委員会で策定されます。代表的な国ですでに使用されている標準をそのまま採択したり、複数の国の標準をすり合わせたりして決められますが、その際に重要になるのが、各国の委員会における影響力です。つまり、国際的な競争力を高めていくためには技術力だけでなく、国際標準化の協議における影響力や交渉力なども備える必要がありのです。

日本の取り組みについて

日本でも国際標準化の場面で優位に立とうという取り組みが行われています。

例えば、ISOでばねの標準が検討されていた際、専門家が不足していたことにより議論が進んでいませんでした。そこで、一般社団法人日本ばね工業会の会長が中心となって新しい標準をつくることを提案。標準化を先導することになったのです。このように日本が主導となれるよう、国際標準化活動ができる人材の確保や育成が進められています。また、経済産業省では平成29年度予算の「戦略的国際標準化加速事業」において、モバイルでの個人認証や宇宙光通信、ブロックチェーンなどの政府戦略分野で、国際標準開発活動を行う事業に対して、委託予算を設けています。

また、今後世界的に発達すると考えられているIoTの分野では、世界に先駆けて国をあげて取り組みをはじめていたドイツと、ハノーバー宣言を採択しました。宣言には日本とドイツが協力してIoT技術やサイバーセキュリティーの面で国際規格を主導していくことなどがうたわれています。

参考:

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