電気の盤にはさまざまな種類のものがありますが、その中でも計測器を搭載する「計器盤」は、精密機器の計装機器を搭載しているため、ほかの盤と比べて特殊な構造になっています。
この記事では、計器盤の基礎知識と計器盤に適用される規格について説明します。
盤には、搭載される機器によってさまざまな種類のものがあります。
受配電設備を搭載する「受配電盤」、インバータなどの動力設備を搭載する「動力盤」、PLCやリレーなどの制御機器を搭載する「制御盤」、現場で操作を行う場合に使用する「操作盤」などがその一例です。
その中で、計測機器を搭載するために作られた盤を主に「計器盤」といいます。
盤の中での計器盤の明確な区分けは、実はありません。計測機器をメインで搭載するということが主目的の電気盤であれば「計器盤」であるといえます。計測機器の数が少なく制御機器が多い制御盤の場合、制御盤が計器盤の役割もあわせ持つため、「制御・計器盤」といわれることもあります。
では、計器盤の使用用途にはどのようなものがあるでしょうか。
計測機器の種類などに応じたさまざまな構成の計器盤があるため、使い方も無数に考えられます。それぞれに共通しているのは防塵防水の構造により内部の機器を保護する機能です。
以下では、計器盤の代表的な使用用途について紹介します。
低圧受電を行う際、電力会社から電気メーターを支給されます。電気メーターは露出した状態で屋外にそのまま設置することも可能ですが、場所によっては、電気メーターの保護が必要になる場合があります。
また省エネ意識の高まりから、受電点以外の部分に市販の電気メーターを設置し独自で電力を測定することも多くなりました。
これらの場合、電気メーターを搭載するための計器盤が必要になります。
電気メーター用の計器盤は鋼材の箱に収納しますが、電気メーターの検針など、電力の状態表示を外からでも確認ができるように、窓がついた構造になっています。
低圧受電を契約する場合や一般住宅を新築するような場合、屋外に電気メーターと電力会社の電流制限用ブレーカー(リミッター)を設置する必要があります。
建築用として一般的に流通している計器盤は、こういった電気メーターとリミッターを合わせて搭載することができるタイプのものです。
この計器盤を使えば屋外に電気メーターとリミッターを設置できるため、検針作業の際に、施設の管理担当者が開錠のために現場まで行く必要がないということがメリットとしてあげられます。
電気容量の増加をする場合はリミッターを交換する必要があります。
古い施設ではリミッターの設置場所を探す必要がありますが、計器盤の中に合わせて搭載されていれば、探す手間もかかりません。
ちなみに電気メーターとリミッターは基本的には電力会社の資産になり、リミッターの1次側は電力会社の責任範囲となることが多いです。
そのため、建築用計器盤が電力会社との責任分界点として利用されることが一般的です。
工場のプラントには流量センサーや回転センサー、振動センサーといったセンサー類が無数に設置されます。それらの計測機器からの信号を、管理者がメーターで確認できるようにする必要があります。
また、多くの計測機器からの信号が存在して個別のメーターでの表示に限界がある場合、タッチパネルによる集約表示を行うこともあります。
工場設備の計器盤は、収納する計測機器の数や種類によって数多くのパターンが考えられます。
たとえば、揮発性の高い石油製品などの製造プラントでは、電気による火花が爆発の危険性にもつながるため、防爆エリアが指定されています。
このような防爆エリアに計器盤を設置する場合、通常の計器盤では行わないような厳しい防爆基準に基づいた構成の計器盤にする必要があります。
エレベーターや空調といったビル設備や、工場設備などの保守拠点では、場内のすべての設備の状態を一括で監視する必要があります。構内の離れた建屋からの計装信号を中央集中監視室などで受信し、現場の状況を把握、監視するケースもあります。
監視室でメーターの数値に異常を検知した場合、待機している保守要員がすぐに現場の状況を確認することで、保全作業が成り立ちます。
そのため、中央監視室に設置する計器盤のなかには、ビル設備や工場設備の計装信号を同時に処理・表示できる中央監視専用のPCや表示器を搭載しているものもあります。
ビルや工場が大規模であればあるほど、中央監視室の計器盤には多くの信号が入力されるため、相応に大型の計器盤になります。
電気メーターを収納する計器盤の主な規格に関しては、各地域の電力会社がその指針を示しています。
そのほかの計器盤は用途が多岐にわたるため、一般的な規格での製作となります。特にビルや大規模工場に設置される計器盤の場合、それぞれの工場やビル独自の共通仕様、規格に準拠する必要があります。
防爆エリアへの計器盤の設置については、防爆エリアの基準に合格する必要があります。
そのほか、計器盤の海外輸出を行う場合、輸出する国の規格に準拠した状態でなければ輸出することができません。
計器盤の規格は、一般的な制御盤製作の規格が適用されます。
リタールの国内外の制御盤に関する規格をまとめた報告書もご参照ください。
規格の企画_海外向け制御盤製作に役立つIEC 61439とULの基礎知識
計器盤の相場価格は、盤の構成によって変動します。
もっとも一般的な計器盤の例は電気メーターを搭載した引込計器盤キャビネットですが、搭載する電気メーターの数に応じて3~30万円と幅があります。
一般住宅でも見かける身近な電気メーター搭載計器盤から、大規模工場などに設置される大型の計器盤まで、計器盤の種類は多数あります。
前述の通り、防爆エリアや輸出する国の規格など、使用される場所の環境や地域によっても構成が変わるため、統一した規格は当てはまりません。また、複雑な計器盤は設計も複雑なため、高いスキルを持った設計者による設計が必要不可欠です。大規模な計器盤になると設計も難易度が高くなります。
現地納入の際にトラブルを防ぐためにも、計器盤の規格に関するアドバイスや製作における価格、納期などは信頼できる会社に相談するのがよいでしょう。
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