「SPS2023」展示会レポート
Let us navigate the world of automation together
Connecting ecosystems. Smarter.
リタールでは、データ活用によるインダストリー4.0の全体最適を実現するための要素として、設計から製造までのデータを作成・整備してデジタルツインの基盤とする「オートメーションツイン」、製品とそれに関連するデータがすべてのデータが揃っている「プロダクトツイン」、据え付け後の稼働状況がデータ化されている「プロダクションツイン」の3つのデジタルツインが必要であると提唱しています。今回のSPSは、2023年11月14−16日に行われ、その3つのデジタルツインを可能にするソリューションを中心に展示しました。ブースの様子をレポートします。
会場風景
リタールは、電気設計CADのEPLAN、ERPやPDMを統合するソフトウェアのCIDEON、現場データの分析や活用プラットフォームのGerman Edge CloudとともにLOHグループの中心企業として活動しています。
今回のSPSでのブースの展示テーマは「Connecting Ecosystems. Smarter.」。リタールをはじめ、LOHグループ各社の制御盤に関わるデータとソリューションを連携させて一貫したエコシステムを構築することで、より効率的に制御盤を設計・製造から運用・保守ができ、ひいては脱炭素やカーボンニュートラルに貢献できるというメッセージをグローバルで発信しています。入口脇にはそれをビジュアルで表したコーナーがあり、そこから展示がスタートとなっていました。
ブースはValuechain(バリューチェーン)のはじまりである設計工程の効率化を紹介するエリアからスタートし、製造、ソリューション、運用・保守へと4つのエリアを入口から奥に向かって順番に進んでいく形で構成。
はじめの設計エリアではElectrical Engineeringとして、EPLANの活用について紹介。EPLANのSmart Wiringによる配線ルート設計支援のほか、ベストプラクティスとしてオーストリアのビルディングオートメーションアプリケーションにフォーカスした企業がEPLANのソリューションでシステムをデザインしたプロジェクトや、EPLANの活用領域の広がりとしてPA業界のプロセス装置での利用事例などを紹介していました。またCIDEONによってERPやPDMとEPLANを統合し、制御盤に関する生産計画や調達、設計のデータ連携を通じた効率化にも言及していました。
2番目のエリアは、制御盤の製造効率化のPanel Building。EPLANで作成したデータを取り込み、電線加工や箱への穴あけ加工など組み立てに必要な部材の準備作業等を自動化&半自動化するRAS(Rittal Automation Systems)を中心に、制御盤の組み立て工程を効率化する各種ツールを展示していました。
ここでの注目は、電線自動加工機ワイヤターミナルWT C10。設計データをもとに皮剥きからフェルール端子の挿入圧着まで必要な電線本数を加工し、それを分類して束ねるところまで全自動で行なってくれます。
ブースデモでは、さらに進化した形を提案していて、盤の組み立て工程から、離れた場所にあるWT Cに電線を発注でき、リアルタイムで加工された電線が自動で届くという仕組みのデモをしていました。システムで発注を受けるとWT Cが電線に必要な加工を施し、上部にある配管チューブを使って組立工程に自動で送り、組み立て工程では配管チューブからピョコッと出てきた完成品の電線を取り出してすぐに組み立て・配線作業ができるようになっています。電線を事前加工して搬送したり、その場で加工する必要がなく、現場が欲しいと思った時にすぐ発注してすぐ届くといったイメージでしょうか。
しかもこのデモは自社ブースだけでなく、隣のロックウェルオートメーション、イートンエレクトリックのブースと連携していて、それぞれのブース内にある作業デスクから発注して電線が届くというシステムを構築していました。
WT C10から電線を送るチューブが設置されており、電線の移動を赤いフラッシュで表現(左写真)とイートンエレクトリックのブース から操作して加工された電線が届く様子。
3つ目のエリアは、Rittal the Systemとして、リタールの箱や盤用クーラーなどの製品やソリューションを紹介するエリアになっていました。IK10、IP66によって安定さと堅牢さを増し、機器の取り付け容易性や拡張性を増した自立型エンクロージャーシステムVX SEや、75%の省エネが可能な盤用クーラー「Blue e+」のほか、屋外用や衛生対応ボックス、IT・ネットワーク用ボックスなどを展示していました。
最後の4つ目のエリアは、Digital Operation。装置・制御盤を据え付けた後の保守・運用の効率化の提案。装置や制御盤内機器が正常に稼働しているか、不良やトラブルの予兆はないかを見張り、且つ日常・定期的な保全や更新をどう効率的に行っていくかなどを支援する仕組みとして、装置のデータをGerman Edge Cloudが提供するクラウド環境に上げて管理・分析をしつつ、現場で実際に装置を動かしている人々向けのデータ管理・活用基盤としてオンプレシステムのONCITEを設置するというハイブリッドなデータ活用の仕組みを紹介していました。
ONCITEは、データを見える化するSCADAとは異なり、オンプレのクローズドな環境で装置や制御盤からデータを収集し、現場向けの情報として表示・提案してオペレータをサポートするシステムで、運用支援ソリューションとなっています。
【大量のデータを収集し、生産ラインのデータ分析ソ リューションを行うことで、プロセス全体の可視化、時間やコストの削減が実現し、効率的な生産が実行できる】
このほか、設計データをもとにアーム型のワイヤリングロボットが制御盤に機器を組み付け、プッシュインで配線作業を行う近未来の制御盤の製造デモや、ドイツがインダストリー4.0の標準データ基盤として国や製造業界を挙げて整備しているGAIA-Xについて、その自動車産業版のCATENA-Xの実践例としてポルシェのドアのプレス加工現場の紹介なども行っていました。
産業界は変化を迫られています。効率性と生産性に対するプレッシャーに対処すると同時に、どうすればエネルギー転換を進めていけばいいのでしょうか? また、熟練労働者が不足している産業界は、どのようにデジタルトランスフォーメーションに対応していけばいいでしょうか? オートメーションとデジタル化への投資は、工業企業の将来の競争力にとって重要かつ不可欠な優先課題です。
ブースでは、こうした産業界の課題を意識しながら、Electrical Engineering、Panel Building、Rittal the System、Digital Operationと、4つのエリアを構成。設計から製造、生産プロセスまで、リタール、Eplan、Cideon、German Edge Cloudがそれぞれの専門性を発揮し、スマート生産へのシフトを促進し「Automation twin、Production twin、Product twin」という3つのデジタルツインをデータでつないでいくというコンセプトが、会場を進んでいくうちに体感できます。
お客様のエンド・ツー・エンドのバリュー・チェーン全体の各要素について考え、ハードウェアとソフトウェアの適切な組み合わせによって、それを包括的に最適化することを一緒に考えていく、という強いメッセージを込めました。
SPSは、シームレスなソリューションについて議論することができる理想的かつ刺激的なフォーラムです。先進的な技術やアイデアに触れに、一度SPSに訪れてみるのはいかがでしょうか。その際は、リタールブースもぜひご覧ください。
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・SPSとは?
・2000m2の巨大ブース
・4つのエリアでデータ活用による効率化を提案
・制御盤の自動組み立てやCATENA-Xのデモなども
・Forcus Topics
・まとめ。