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アンモニアが燃料に?アンモニアから電気をつくる仕組み

作成者: admin|May 7, 2021 9:05:50 AM

アンモニアと聞いてどのような印象をもつでしょうか?
トイレの臭いぐらいの印象しかもっていない方も多いでしょうが、実はアンモニアは大きな可能性を秘めています。それは、次世代の水素を用いた再生可能エネルギー源になるということです。ここでは、アンモニアを使った発電など、新しいエネルギー源としての活用方法を紹介します。


アンモニアとは?窒素と水素からなるどこにでもある物質

アンモニアとは、窒素元素1個と水素元素3個が化合した物質(NH3)です。窒素も水素も地球上には無尽蔵に存在し、簡単に集めることができる身近にある物質です。
アンモニアの構成元素の中に炭素(C)を含んでいない物質ということでカーボンフリーな物質となります。

また、アンモニアは水素を含んでいることから、再生可能エネルギーとして注目されている水素を安定的に運ぶ「水素キャリア」としても期待を集めています。

 

低温で液化する安定的なアンモニア

アンモニアは常圧状態では、気体で存在していますが、圧縮すると20℃であっても液化します。標準気圧の8倍ほどの圧力を加えることで液化するため、高圧液化を行ってパイプラインやタンクローリーなどで運搬されています。

非常に扱いが容易であるため、再生可能エネルギーの主役でもある水素を運ぶ際にも活用できます。爆発性の気体である水素は、そのままでは体積が大きすぎますが常温では液化せず、-253℃という極低温が必要で、大量輸送、大量貯蔵は困難です。アンモニアとして水素を運ぶことで、安全に遠方へのエネルギー搬送を行えるようになります。

ただし、高濃度のアンモニアガスを吸入してしまうと呼吸停止など人体への影響があるため、毒物指定を受けており、漏洩などには注意が必要です。

 

現在の主な利用用途は肥料の原料

アンモニアの現在の主な利用用途は化学肥料の原料です。工業化学製品の基礎材料になるなど、化学業界では基礎材料としての需要があるため、国内にも多くのアンモニア生成工場があり、サプライチェーンが確立しています。

国内需要の約8割が、国内生産のアンモニアにより供給されています。
世界的なアンモニア需要は、世界の人口増加による食料事情の改善を行うための肥料原料として伸び続けていますが、国内需要に対して安定した供給状態であることもアンモニア利用の利点の一つです。

 

 

水素キャリアとしての再生可能エネルギーの立役者に

アンモニアを水素キャリアとして用いることにより、再生可能エネルギーとして電気を作ることができるようになります。代表的な水素利用の発電設備としては燃料電池が挙げられます。

カーボンフリーな水素利用のエネルギー源として、商用利用もされている燃料電池ですが、アンモニアも活用できるとなると、さらに利用の幅が広がります。

さらにアンモニア自体を燃焼させることで、アンモニアを燃料として活用して発電をする研究もされています。
このようにアンモニアは、CO2を排出しないカーボンフリーエネルギーとしての非常に大きな可能性を秘めているのです。

 

燃料電池の燃料としてアンモニアを活用

燃料電池は、水素から水を生成する過程で電気を発電する発電設備です。

電池のようにプラスとマイナスの電極があり、プラス電極側に、水素(H2)と触媒を加えて水素イオン(H+)と電子を生成します。水素イオンは水素イオンのみが透過する高分子膜を通ってマイナス電極側に行きます。

電子は配線を通ってマイナス電極側に行き、水素イオンに戻る際に酸素(O2)と反応し水(H2O)になります。電子が配線を通る際に電気となり、燃料電池では水素を供給し続ければ発電をすることができます。

アンモニアを用いた燃料電池での発電も、水素の際と同様で、アンモニア(NH3)を触媒によって窒素と水素と電子に分解し、窒素は気体に多くある窒素(N2)に、水素はマイナス電極側で水(H2O)になることで発電します。

この過程では、二酸化炭素や炭化水素といった温室効果ガスは一切発生しません。

今までの燃料電池でも都市ガスやエタノールを燃料として用いたタイプのものがあります。しかし、都市ガスやエタノールは水素に加えて炭素も含んで構成されているため、微量の二酸化炭素が排出されていました。
一方で、燃料にアンモニアを活用することにより、完全なカーボンフリーな燃料電池を運用できるようになります。

アンモニア燃焼の火力発電

アンモニアを燃料電池のような水素利用の水素キャリアとして用いるのではなく、アンモニアそのものを燃焼させて火力発電の燃料としてエネルギー源とする研究も進められています。アンモニアも石油や石炭のように燃焼することは知られていました。
しかし、他の化石燃料のように安定した燃焼熱を得ることが難しく、安定した燃焼を維持することが困難でした。

燃焼用空気の送り方や石炭などとの混合燃料としての研究が進んだ結果、実証実験段階ではありますが、100%アンモニア燃料のガスタービン発電設備が運用されるようになりました。

アンモニアを燃焼させて熱を取り出し、その熱を使って発電を行えば、燃焼にかかる温室効果ガスの排出がされない火力発電用燃料となるのです。資源エネルギー庁も、カーボンフリーの火力発電用燃料としてアンモニアに注目しています。2050年までに化石燃料の使用を停止するという目標の背景には、アンモニア燃料の活用も含まれています。

カーボンフリー燃料として、再生可能エネルギーとしての可能性

二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を行う従来型の化石燃料は、すぐに使用停止することが難しい一方で、気候変動の問題は深刻化しています。

しかし、研究者たちの努力のおかげで、今まで身近にあったアンモニアが燃料や水素キャリアとして見直されてきていて、それが化石燃料に代わるものとして注目を集めています。

アンモニアになってしまえば、再生可能エネルギーとしての活用法が多くあるのですが、今後の課題としてはその生成時のエネルギー消費と言えるでしょう。現在のアンモニア生成法では、高温状態を作り出すのに多くのエネルギーを必要とします。しかしこれは一世紀も前に確立したハーバー・ボッシュ法というアンモニア生成法です。

現在、低温状態でもアンモニアの生成ができるような高性能触媒の研究がされています。化学反応に用いる触媒の研究は、組み合わせる種類が多いなどの理由により未解明なものも多く存在します。アンモニア生成に有効で実用的な触媒が発見されれば、よりエネルギーを使用しない生成法も確立も現実味を帯びてくるでしょう。

化石燃料の代わりに液体アンモニアが流通している、というのが近い将来のエネルギー流通の風景となるのではないでしょうか?

 

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