電気が流れる場所には、必ずといっていいほどコネクタが存在します。盤の設計に関わる設計者やメーカー、工事を担当する人にとって、コネクタの知識や取扱い方は電気関係で覚えておくべき内容の一つになっています。今回はコネクタの概要から役割と種類について、取扱い方の事例を踏まえて紹介します。
コネクタとは電力や電気信号の流れをつなぐ部分で簡単に着脱できるものを指します。モーターなどの大容量の電流が流れるところではコネクタではなく丸形端子にボルト止めをして配線を接続しますが、比較的電源容量の低いものや、基板の電気信号線などに使用する細い配線にはコネクタが使用されています。
身近なものではスマートフォンの充電やパソコンのUSBケーブル、産業分野では配線盤や制御盤に使用する配線の接続などで使用されています。用途としては制御盤に格納した電気機器、例えばヒューズや電磁接触器、リレー、PLC、基板などに接続するためです。
これらの配線全てに端子台を設けると制御盤のサイズは大きくなってしまいます。制御盤を設置するスペースの制約があるため、制御盤はできるだけ小型化が求められています。小型化のためにはできるだけ端子台をコネクタに置き換えることが必要です。
コネクタのメリットは、配線を着脱する時間が掛からないことです。コネクタは一つの方向にしか差し込めない構造になっているため、配線を1本ずつ接続する場合に比べて、異なる配線を接続してしまうリスクが減ります。一方、ねじやボルトで締結する丸形端子は取り付けと取り外しに時間が掛かりますが、端子を強い力で配線に圧着しているため、配線を引っ張ったときの外れにくさは丸形端子のほうが有利です。コネクタの配線にもコンタクトを圧着していますが、圧着する力は丸形端子より弱いため、勢いよく引っ張るとコネクタから外れる恐れがあります。
周囲環境を考えるとコネクタは配線の端子を樹脂で覆うような構造のため、埃や周囲の水滴、油から保護することができる点もメリットです。
ほかにも、あらかじめワイヤーハーネスでまとめておけば、盤製品を製作する時間が早くなり、盤内部の見た目がすっきりします。ワイヤーハーネスとはコネクタと配線でまとめたものです。ワイヤーハーネスは自動車でよく使われています。
コネクタの役割は工具を使わず、つなぐ・切り離す、を素早くできるようにすることです。コネクタの種類は使用環境や電気の種類によって分けられます。
・屋外や工場内
水滴や油、埃からコネクタを保護するためのパーツが付いています。例えばコネクタはエンクロージャというパーツなどで、埃などの侵入を保護しています。主に盤や装置をつなぐインターフェースの役割をしており、100本以上超える配線を差し込めるものもあります。
・装置の中や盤内
装置や盤内に設置するコネクタは、屋外や工場内に設置するコネクタに比べると外部の影響を受けにくいため、コネクタを保護するパーツが付いていないシンプルな構造になっています。
・動力
モーターなどの駆動源を動かす動力線に対応したコネクタで、200Aの大電流に対応したものもあります。
・制御
直流や交流の5V~200Vによってリレーを動作させる回路に使用する配線や、基板に接続する配線に接続したコネクタです。
・通信
イーサネットやRS232C、RS485、USBなどの通信規格に対応したコネクタです。
日コネクタに要求される性能として、JIS-C5401では次の内容が定義されています。
・動作環境
温度及び温度範囲
高温高湿(定常)
減圧
液体浸せき及び耐性
工業用の雰囲気における腐食(汚染ガス濃度又は塩水噴霧に対する耐久性)
・電気的特性
空間距離及び沿面距離
耐電圧
電流容量
接触抵抗
絶縁抵抗
伝送特性
・機械的特性
機械的動作
結合力及び離脱力
コンタクト保持機構の機能性
キーイング又は極性の性能
軸方向の静的な力
機械的衝撃及び振動
・DIN規格
ドイツの工業規格でコネクタに関するものではDIN41612規格があります。一般的にDINコネクタと呼ばれる基板と基板をつなぐコネクタや丸型のコネクタが対象です。
・MIL規格
米軍規格でコネクタに関する規格の一つにMIL-C-83503があります。
・IEC規格
世界規格です。コネクタの製品要求事項を定めた規格としてIEC61076があります。
・JIS規格
IEC61076を元に作成した規格としてJIS-C-5401があります。
コネクタを選ぶ際は使用する配線に合うものを選びましょう。使用する電圧や電流値から配線径を決めて、配線径に対応するコネクタをメーカーのカタログから探します。
一般的にはコンタクトと呼ばれる端子を配線に圧着した後、コネクタに挿入します。コンタクトは同じメーカーのどのコネクタに対応するものか決まっています。メーカーのカタログを見てコネクタに対応する端子を選びましょう。
コネクタ同士の着脱は作業者の手で容易にできますが、メンテナンスや改修でコネクタの配線を交換する場合は、交換方法を知らないと作業ができないこともあります。作業する前に各メーカーの取扱説明書や技術資料を確認しましょう。盤の内部で使用するJST(日本圧着端子製造株式会社)の端子を例にコネクタの取り付け方と外し方を紹介します。
配線をコネクタに差し込む前には、まず専用工具を使ってコネクタに接続する端子(コンタクト)を配線に圧着する必要があります。
JSTの型式VHタイプのコネクタでは、片方を基板、片方を配線に接続します。コネクタは基板側に取り付ける「ポスト」と配線側に取り付ける「ハウジング」があります。ハウジングの内部に「コンタクト」という部品があります。コンタクトがポスト側のピンに刺さることで配線の導電性を確保します。
ハウジングから配線を外しますが、コンタクトがハウジングに固定されているので、そのまま配線を引っ張っても外れません。ハウジングから見えるコンタクトの部分を細いマイナスドライバーなどで押しながら配線を引っ張って外します。
続いて、新しい配線をハウジングに取り付けますが、先にコンタクトを配線に圧着します。配線の先端はワイヤーストリッパーなどで被膜を剥いておきます。ワイヤーストリッパーは配線径に対応できるものを準備しましょう。
コンタクトは、被膜を固定する部分と銅線を固定する部分があります。それぞれの箇所に圧着工具を使用して圧着します。メーカー専用の工具が推奨されますが、別メーカーの圧着ペンチを使う場合もあります。被膜を剥がす長さの目安は各メーカーで決められている場合がありますので、メーカーの技術資料などを確認しましょう。
コネクタには爪をひっかけるタイプやそのまま差し込むだけのタイプがあります。爪がないと思ってそのまま引いてしまうと配線が切れる恐れがあるので、着脱の際はコネクタの接続方法を確認しながら作業しましょう。
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