環境への影響が少ない再生可能エネルギーに、近年注目が集まっていますが、安定供給にはまだ至っていません。そこで、石油や石炭より環境への負担が少なく、再生可能エネルギーより安定供給が見込めるエネルギーとして「液化天然ガス」が注目されています。本稿では液化天然ガスとはどのようなものか、基本的な知識をご紹介します。
液化天然ガスとは、メタンを主成分とした天然ガスを-162度まで冷却し、液化した無色透明の液体です。英語でLiquified Natural Gasと表記し、Liquified、Natural、Gasの頭文字をとってLNGともいいます。
液化することで体積が気体のときの600分の1にまで減るため大量輸送や貯蔵がしやすく、主に火力発電の燃焼や都市ガスの原料として使われています。
天然ガスは石油や石炭と比べると、燃焼時の二酸化炭素排出量が少なくなります。また、冷却して液化する際に不純物が除去されるため、硫黄硫化物やばい煙も排出しません。利用する際には海水シャワーをかけて液体から気体に戻しますが、その過程でも環境を汚染する心配がないと言われており、その際に生じる冷熱は発電に利用されます。以上のことから、まさにクリーンエネルギーといえます。
クリーンエネルギーと言われるものには再生可能エネルギーもありますが、まだ安定供給が見込めないため、液化天然ガスはそういった意味でも非常に期待されている存在です。
前述のように、天然ガスの多くは火力発電で使われていますが、その際の発電のしくみは次の3種類になります。
蒸気の力で発電させる、現在の主流の方式。液化天然ガスを燃やして蒸気をつくり、その蒸気の膨張力を利用して蒸気タービンの羽根車を回します。その力でタービンにつないだ発動機を動かして発電するしくみです。
燃焼ガスの力で発電させる方式。液化天然ガスを燃焼した燃焼ガスでガスタービンの羽根車を回し、発電します。高出力のため、電力需要のピーク時などに使われます。
汽力発電とガスタービン発電を併用した方式です。まずは液化天然ガスを燃焼した燃焼ガスでガスタービンを回して発電します。その後、ガスタービンを回した際の排ガスの余熱で水を沸騰させて蒸気をつくり、蒸気タービンによって発電します。熱効率が良く、他の方式より多くの電力をつくることができます。
最後に液化天然ガスの輸入先と価格における日本の現状についてご紹介します。
日本における液化天然ガスの輸入は1969年から始まっており、当初は国内のエネルギー供給に占める割合はわずかでした。しかし、東日本大震災の影響で原子力発電の多くが停止したことから、その重要性が高まり、今では石油、石炭と並ぶ主要なエネルギーとなりました。
その大部分はやはり海外からの輸入で、主な輸入先はオーストラリア、カタール、マレーシア、ロシア、ブルネイ、インドネシア、オマーンなどとなっています。
日本向け液化天然ガスの輸入価格は原油価格に連動しています。しかし価格フォーミュラによって原油価格変動の影響を緩和されるため、原油に比べれば変動は緩やかです。液化天然ガスの価格は、原油つまり石油とは同じくらいか年によって若干上下が変わってくる価格水準ですが、石炭よりは高くなります。
また、パイプライン経由での供給が可能なアメリカやヨーロッパ諸国などと異なり、日本では気体である天然ガスを液化させてタンカーで輸送する必要があるため、価格が高くなります。
2020年10月時点の価格は、アメリカは2.17$/mmbtu、ヨーロッパは4.89$/mmbtu。日本は5.98$/mmbtuと、アメリカと比べると2倍以上になっています。
石油や石炭よりクリーンで、再生可能エネルギーより安定供給が煮込めるエネルギー源として期待される「液化天然ガス」。しかし、石油や石炭に比べて二酸化炭素排出量が少ないとはいえ、ゼロではありません。また、そのほとんどを輸入に頼る日本においては、他国に比べてコストがかかります。そのような課題をどのように解決していくか、さらなる技術開発が求められます。
関連ブログ:エネルギーミックスとは何か?日本と世界のエネルギー問題
参考:
リタールの技術ライブラリ
「規格に適合したスイッチギア及びコントロールギアの製作IEC 61439適用」
本冊子は、新規格IEC 61439 準拠に必要な様々な対策を講じる上でのお手伝いをするために作成しました。リタール製規格適合システム製品の利用に関するご相談から貴社機器の要求設計や日常検査のご提案まで、幅広くご利用ください。
※新規格IEC 61439における変更点の他、「設計検証報告書」の作成方法などについて、85ページにわたって解説しています。