半導体のなかでも大きな電力を扱うことのできるパワー半導体について解説します。パワー半導体はどういった目的のために使われ、どのような種類があるのでしょうか。パワー半導体の特徴と、さらに進化するパワー半導体の新素材についてもご紹介します。
パワー半導体とはどういったもので、どのような働きをするのか、パワー半導体の特徴から見てみましょう。
パワー半導体は、電源から供給される電力の制御を行うために使われる半導体です。
半導体デバイスのなかにはCPUやメモリなどがありますが、これらは電力を制御することを目的としているわけではなく、演算処理や大容量記憶を得意としています。また、実際に使われる電力も比較的小さいものです。
一方、パワー半導体は電力を使いやすい形にコントロールすることを目的とし、高い電圧や大きな電流を扱うことを得意としています。
パワー半導体と呼ばれる範囲の明確な定義はありませんが、1A以上の定格電流を持つものをパワー半導体と呼ぶ傾向にあります。
電力を制御することを目的として使われるパワー半導体は、次のようなことができます。
こういったパワー半導体の役割は、どのような種類の半導体によって可能になっているのでしょうか。パワー半導体を種類ごとに大きく分けると次のようになります。
電気を一方向にしか流さないように制御する働きを持つ半導体です。主に整流に使われ、交流を直流に変換し電子機器の回路を動作させるための電気を作る役割をします。
一般整流ダイオード・ファストリカバリダイオード・ショットキーバリアダイオード・ツェナーダイオードなどがあります。
トランジスタは増幅とスイッチングを行います。小さな電気を大きな電気に変える増幅、この働きを利用して小さな電気によって大きな電流・電圧をオンオフするスイッチングの役割を持っています。
バイポーラトランジスタ・MOSFET・IGBTなどが代表的です。
スイッチングを行うときに使われます。電極に印加する電圧を変えることで電流を制御します。
SCR・シリコンサージ防護素子・TVSなどがあります。
複数のダイオードやトランジスタを、1つのシリコンチップ上に集積したものをICと呼びます。そのなかでも大きな電流を扱うものはパワー系ICと呼ばれます。
さらに多くの素子を修正したものはLSI(大規模集積回路)と呼ばれ、より複雑な機能を実現します。
太陽光発電のような小規模発電施設の普及、産業ロボットの導入増加に伴い、パワー半導体の需要も増加しさらに高効率のものが求められるようになっています。また、より効率の高い電気自動車の開発においても、パワー半導体の進化が求められます。
そこで注目されているのが、パワー半導体に使われている材料です。現在シリコン素材が主流ですが、高電圧でもより電力損失の少ない新素材の開発も進んでいます。
次世代のパワー半導体材料として期待が大きいのは、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)です。SiCは高耐圧で高容量、GaNは高速動作と特徴が分かれているため、要件に合わせて使い分けられています。
また、第3の次世代材料として登場したのが酸化ガリウム(Ga2O3)です。SiCやGaNを上回る高効率・低損失が期待できるとされ研究が進んでいます。
これからさらに需要が高まると予想されるパワー半導体について、その役割や種類、開発の進む次世代の材料などをご紹介しました。
多くの電子機器にはパワー半導体が内蔵され、電力の制御を行っています。また、産業に不可欠なモーターの制御、これからさらに普及すると考えられる太陽光発電や風力発電の施設においてもパワー半導体は活用されています。今後、電気自動車の実用化が加速し普及が広がった場合、そこに使われるパワー半導体の需要は爆発的に高まると思われます。
スイッチングという役割において数千V、数千Aの電気を扱うことも可能なパワー半導体は、これからの制御に欠かせないものとなり、さらに高効率なものが研究開発されていくのではないでしょうか。
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参考:
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