電気設計をしていると、パルス信号という言葉をよく目にします。私たちの周りで動く電気機器や電子機器の多くがパルス信号で電気が供給されており、当然電気設計者はそれについて理解しておかなければいけません。そこで本稿では、パルス信号の意味や用途、また問題として取り上げられることの多いノイズとの関係性についてご紹介します。
パルス(pulse)とは、英語で脈拍や鼓動などを意味する言葉で、電気設計で使われるパルス信号とは、電気信号に一定の幅を持った波(通常矩形波)のことを指します。パルス信号で電気を供給する際は、電圧がかかったり電流が流れたりする時間や、電源のオン・オフの間隔から、情報を伝えていきます。
なお、パルス信号は、主に発生する回数や継続時間(パルス幅)、パルスがオン・オフされる時間間隔、そして規則性といった指標により分類されます。
では、パルス信号はどのような場面でどのように使われているのでしょうか。いくつかの例をご紹介します。
ステッピングモーター(パルスモーター)やサーボモーターなどモーター類の制御によく利用される制御方法としては、パルス幅変調方式(PWM : Pulse Width Modulation)とパルス振幅変調方式(PAM : Pulse Amplitude Modulation)の二種類があります。
パルス幅変調方式とは、パルス信号における継続時間(パルス幅)やオン・オフされる時間間隔で、パルス振幅変調方式とは、振幅、すなわちパルスの強さで、それぞれ電圧や電流の制御をします。
CDやBlu-rayなどは、音というアナログ信号を制御用のデジタル信号に変換しています。このような場合にはパルス符号変調方式(PCM : Pulse Code Modulation)が採用されています。
照明器具の調光や熱源の温度調節には、主にパルス位置変調方式(PPM : Pulse Position Modulation)が採用されています。パルスの位置を変化させることで情報を伝達するもので、ノイズの影響が少ない特徴があります。
次に、パルス信号とノイズの関係性について見ていきましょう。
ノイズとは電流や電圧、または信号などに入る不必要な成分のことを指します。蛍光灯の放電や電源のスイッチングノイズなどの「人工ノイズ」と、落雷や静電気などの「自然ノイズ」と、発生源から見て二種類のノイズがあります。
ノイズは意図せぬ制御や正確な検出の妨げになることが多く、ノイズのレベルや伝達を低減する対策が必要となります。
ノイズの種類には高周波ノイズやサージ性ノイズ、そしてパルス性ノイズの三種類があります。パルス信号は、本来一定幅の電圧で波を形成します。しかし、パルス性ノイズの影響を受けると、リレーやモーターの駆動時の瞬間に電圧が極端に大きくなることがあり、時には数千ボルトまで高くなることもあります。このように発生した高電圧は機器の故障につながるため、ノイズレベルを下げたり伝達しにくくしたりするような、ノイズの影響を抑える対策をとらなくてはいけません。
パルス信号は、私たちの周りにある多くの電気機器の制御に利用されており、それについての知識は電気設計者にとって不可欠です。実際は、頻繁に使われる言葉であるため改めて勉強する電気設計者は少ないかもしれませんが、正しく理解しておくことが大切です。
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参考:
総合カタログ 35
世界中で幅広く使用されている産業用キャビネット・ボックス、分電・配電システム、温度管理システム、ITインフラストラクチャ製品ラインアップの詳細情報を、936ページにわたって掲載しています。