保護リレーはどういった機能を持つ機器なのでしょうか。保護リレーの役割と種類、保護リレーに関する規格をご紹介します。
保護リレーは、保護継電器とも呼ばれる電気回路で使う機器の一つです。電力系統や電力設備において、電力または電圧の急激な変化のような異常状態を検出すると、その箇所を切り離して影響を最小限にとどめる働きをします。
こういった電圧の急変といった異常は、主に短絡や地絡によって引き起こされます。保護リレーはそれを数十ミリ秒という短時間で検出し、遮断器・開閉器へと制御信号を送り、異常箇所を切り離します。これにより他の健全部を保護するのが保護リレーの役割です。
保護リレーは、発電や送電など電力系統インフラにおいても活躍しています。そういった大規模設備で使われるのは、保護リレーとマイクロプロセッサを組み合わせた保護制御システムと呼ばれる装置です。落雷や暴風雪など自然の脅威によって引き起こされる事故を最小限に留め、私たちの暮らしの基盤を守るという重用な役割も担っているのです。
保護リレーには、その仕組みや作動原理によっていくつかの種類があります。
過電流保護リレー(過電流保護継電器)は、変流器によって電路の短絡や過負荷状態を検出し、一定以上の電流が流れた際に作動する保護リレーです。瞬間的に大電流を検出した際に作動する瞬時要素と、徐々に電流値が増大した際に一定値で作動する現時要素の二つの動作要素を持ち、短絡や過負荷どちらの異常にも対応できるようになっています。動作表示器のあるものであれば、どちらの要素によって保護リレーが働いたか表示されるようになっているため、原因究明に役立ちます。
変圧器によって電圧の急上昇や電圧低下を検出して作動するのが電圧保護リレー(電圧保護継電器)です。電圧が設定値を超えたときに作動するものは過電圧保護リレー(過電圧保護継電器)と呼ばれます。一方、電圧が設定値以下になったときに作動するものは不足電圧保護リレー(不足電圧保護継電器)です。
ケーブルの被覆が劣化したり電気機器に絶縁破壊が起こったりといったとき、地絡が発生する場合があります。こういった地絡事故を検出し作動するのが地絡保護リレー(地絡保護継電器)です。
特に指定がなく地絡保護リレー(地絡保護継電器)という場合には、零相変流器によって検出する電流の大きさのみで作動するものを指します。一方、零相変流器と零相電圧検出装置の組み合わせによって電流の大きさと位相差を検出し動作するものは地絡方向保護リレー(地絡方向保護継電器)と呼ばれています。
衝撃圧力保護リレー(衝撃圧力保護継電器)は、絶縁に使用される油やガスの圧力が異常上昇した際にそれを検出し作動する、機械的な作動原理を持つ保護リレーです。それぞれ衝撃ガス圧保護リレー(衝撃ガス圧保護継電器)、衝撃油圧保護リレー(衝撃油圧保護継電器)と呼ばれています。
温度保護リレー(温度保護継電器)は、過負荷の発生により変圧器の温度が上昇するのを検出して作動する保護リレーです。
ピトー保護リレー(ピトー保護継電器)は、流体の流速を計測するピトー管の働きを作動原理とした保護リレーです。タンク内の油圧やガス圧の急激な変化を検出して作動します。
放圧装置は、正確には保護継電器の補器といった位置づけにある装置です。変圧器の内部短絡によってタンク内の圧力が急上昇した際、ガスや油を放出しタンクの変形や破壊を防ぐ役割を持っています。
保護リレーについての規格は、JIS・JEC・B401・JEM・JCS・NECA・NKなどの国内規格で規定されています。例えば、JEC-2500にあるのは電力用保護継電器についての規格、JEM1356では三相誘導電動機用熱動形保護継電器についての規格があります。
また、IECやVDEといった国外規格でも規定されていて、国際標準化も進んでいます。
国内規格であるJEM1093には、交流変電所用制御機器具について規格しており、それぞれの器具に番号が割り振られています。この中で、保護リレーについても器具番号が設定されています。「4」は主制御回路用の保護リレー、「26LR」は負荷時電圧調整器用に使われる温度保護リレー、「76」は直流過電流保護リレーなどのように決められています。
こういった制御器具番号は、保護リレーの正面に白い文字で刻印され、すぐに何のための装置かが判別できるように表示されることもあります。
保護リレーの役割や種類、規格についてご紹介しました。
保護リレーは短絡や地絡といった異常状態があると、事故発生箇所を瞬時に切り離すことで、系統事故の影響を最小限に抑える役割を持っています。また、電力系統の監視をしながら、消費電力を把握して省エネ対策に役立てる機能を持つものも普及しています。保護リレーは、回路の保護だけでなく、環境対策としての役割も担うようになっています。
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参考: