自動車産業の分野で使われることの多いワイヤーハーネス。しかし今、制御盤を含む生産設備にもワイヤーハーネスの使用が増えています。ワイヤーハーネスを使うことで、どのようなメリットがもたらされるのでしょうか? 制御盤とワイヤーハーネスの関係、ワイヤーハーネス加工の進化について紹介します。
電気を伝えるための電線、電線を別の電線や機器へと接続して電気を通すための端子やコネクタ、これらは単品でも活躍します。単品で使用する場合、仕様や状況に応じた配線が可能になる一方で、部品点数・工数が増大し、調達から加工・組み立ての手間と時間もかかるようになります。
そこで、複数系統の電力や電気信号を伝えることを目的として、電線や端子・コネクタなどを組み合わせた集合部品が、ワイヤーハーネスです。
ワイヤーハーネスはどのようにつくられ、どういった分野でよく使われているのかを見てみましょう。
ワイヤーハーネスの加工は、一般的に次のような工程で進みます。
加工を行う環境・作業人員数・入出荷の影響で工程が入れ替わったり、各工程の合間に細かい作業が追加されたりといった変更はあるものの、大まかな流れは上記のとおりです。これらの加工は、近年まで主に手作業で行われてきました。しかし、自動化・効率化を図れる機器の登場によって、ワイヤーハーネスの加工と用途に変化が訪れつつあります。ワイヤーハーネスがどういった分野、場所で使われているのかを紹介します。
ワイヤーハーネスが使われることの多い場所として、次のような分野があります。
ワイヤーハーネスは自動車産業を中心に発展してきました。大量に同一仕様のものを流れ作業で組み立てるという製造方法に、ワイヤーハーネスが非常に適していたからです。また、家電も同様に大量生産するため、ワイヤーハーネスが多く使われます。
一方で、生産設備、特に制御盤のように、同じ仕様のものを大量生産することが少なく、個別の仕様が求められるものではあまり使用されてきませんでした。しかし近年、制御盤においても、ワイヤーハーネスを使って組み立てられることが増えています。
その理由として、次の4点が考えられます。
これらの理由から、生産設備の本体と制御盤の接続、制御盤内の配線においてもワイヤーハーネスによる機器の接続にメリットが生まれるようになっているのです。
制御盤の配線にワイヤーハーネスを使うと、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。
制御盤の配線では、一部分のみにワイヤーハーネスを使用する手法も、よく行われます。その場合、ワイヤーハーネス単品での製作発注や既成品の選択が必要になります。ワイヤーハーネスを発注または選ぶ際のポイントを見てみましょう。
PLCを接続するワイヤーハーネスの製作を発注する際は、次の順で仕様を決めると効率的です。
1. PLCに適合するコネクタ形状を調べる
2. 反対側の機器のコネクタ形状を調べる
3. 配線ルートの長さを決める
複数の機器をそれぞれ接続するワイヤーハーネスでは、次の順で仕様を決めるといいでしょう。
1. 接続する機器の数から芯数を決める
2. 使用する各機器の定格電圧を調べる
3. 断面積またはAWGを決める
4. 端子の種類・サイズを決める
ワイヤーハーネスの特徴と、制御盤に使われることが増えている理由について紹介しました。
制御盤製作の短納期化が求められる昨今、制御盤内の配線にワイヤーハーネスを使うメリットが注目されるようになっています。ワイヤーハーネス加工そのものも加工技術の進化によって効率化され、個別の使用に対応しやすくなり、自動化も進んでいます。これからの制御盤製作がどのように効率化されていくかは、ワイヤーハーネス加工の進化に影響を受ける部分も大きいかもしれません。
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参考:
総合カタログ35
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