リレーを多用する制御回路では、サージ電圧と呼ばれる、電源電圧と反対方向の大きな電圧が発生することがあります。このサージとはどのようなもので、どういった原因で起こる現象なのでしょうか。サージの意味と要因、サージが回路におよぼす影響、サージによる回路損傷を防止する手段を紹介します。
サージとはどのようなものか、何が原因で発生するのかを見てみましょう。
異常な大きさの電流または電圧が瞬間的に発生することを、サージといいます。このとき流れる電流がサージ電流、電圧がサージ電圧です。 短時間に定格以上の電圧がかかることを全般的に過電圧と呼びますが、サージ電圧もこのひとつといえます。またそのなかで持続時間がナノ秒~マイクロナノ秒のものはスパイクと表現され、ミリ秒単位のものがサージと呼ばれています。
サージはどういった要因から引き起こされるのでしょうか。
一般的にサージという言葉をよく聞くのは、IT機器やその関連商品についてかもしれません。IT機器の場合では、落雷が原因で発生する雷サージのことを指す場合が多いです。雷サージには機器やデータの破損といった問題につながる大きなリスクがあるため、雷サージ対策が施された機器や用品が数多く販売されています。
またIT機器や電子機器においては、サージ発生の原因のひとつに静電気の放電があります。これは人体によって引き起こされる場合が多いといわれており、数千ボルトの高電圧に達することもあります。
制御回路においては、上記のような雷や静電気によるサージも起こりますが、最も問題となるのは逆起電圧と呼ばれるものです。
コイルを使った回路やリレー内部では、電磁誘導により電極の接触と遮断を行っています。コイルに流れる電気が遮断されると、コイルの作用により大きな電圧が生じます。この誘導負荷を遮断した際に発生するものが逆起電圧です。
サージが発生し、その電圧がそのまま機器や制御回路にかかってしまうとどのようなことが起こるのでしょうか。代表的な例として次のような影響が考えられます。
サージとそれによる影響から機器や回路を保護するためには、どのような手段があるのでしょうか。
その対策として使われるのが、サージアブソーバーです。制御盤内で発生するサージに対して使われるものはサージキラーとも呼ばれ、シーケンサ出力側のような誘導負荷のある箇所に使われています。
サージキラーの回路接続には次のような方式があります。
このなかで、DC(直流)誘導負荷の場合はダイオード方式、AC(交流)誘導負荷の場合はCR方式が一般的に使われています。
サージの発生原因と影響、およびサージから機器を守る保護対策を紹介しました。
サージは回路の電子部品や接続されている機器を破損させる危険を持ちます。その結果、ソフトウェアに影響をおよぼし、システム全体の障害につながる可能性も考えられます。大きな損害に発展する危険性もあるため、適切なサージキラーを設け回路を保護しましょう。
参考:
規格の企画_海外向け制御盤製作に役立つIEC 61439とULの基礎知識
海外向け制御盤製作に役立つIEC 61439とUL規格の情報を分かり易くまとめました。
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