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配線用遮断器の役割と選定方法―過電流から回路を守る

作成者: admin|Mar 8, 2021 12:00:00 AM

配線用遮断器の役割を「大きな電流が発生したときに、そこで電気の流れを止める装置」ととらえている人もいるかもしれません。もちろんそれも一つの役割ですが、配線用遮断器の役割や特性についてもう少し詳しく解説し、回路の条件によってどのような基準で選定すべきかを紹介します。

配線用遮断器の役割

配線用遮断器の役割や特性について、ここで一度振り返ってみましょう。

配線用遮断器とは

配線用遮断器が「電路を遮断する装置」であることは知られています。しかしその役割は、単純にそれだけではありません。

日本電気技術者協会では、配線用遮断器について次のように定義しています。
「配線用遮断器は取扱いが容易で、操作ハンドルによって安全に電気回路の開閉が行え、規定以上の過電流で自動的に電路を開路するように設計製作された低圧電路用保護機器である。」(出典:公益社団法人 日本電気技術者協会

規定を超える過電流が生じたときに電路を自動的に遮断するための保護装置、それが配線用遮断器です。

この役割を果たすために、配線用遮断器は複数の部品から構成されています。開閉機構とそれを作動させるための引外し装置、アーク放電を消滅させるための消弧(しょうこ)装置、電路を開閉する接触子などです。これらの部品が、絶縁性の高いモールドケースに収められた構造となっています。

配線用遮断器の特性

配線用遮断器は反限時特性と呼ばれる特性を持ちます。これは、定格を超える電気が流れたときにその電流の大きさによって遮断動作時間が変わる特性です。

この特性により、生じる電流が大きければ大きいほど、瞬間的に配線用遮断器は動作します。

ただし、負荷の抵抗が変動したときや、電動機の始動時には、定格を超える電流が発生することがあります。このような短時間の過負荷電流では、不用意に遮断しないことも考慮された機能となっています。

配線用遮断器と漏電遮断器の違い

IEC(国際電気標準会議)規格では、配線用遮断器はMolded Case Circuit Breakerと表現されており、これを略してMCCBまたはMCBと表記されることがあります。

ただし、MCBは「ミニチュアサーキットブレーカ」を意味する場合もあり、一般的に配線用遮断器にはMCCBが用いられます。

配線用遮断器が動作するのは、次のような場合です。

  • 限度を超えて負荷機器を接続したことによる過負荷
  • 短絡(ショート)による大きな電流の発生

こうした状態が続けば電路が過熱し、電気機器の焼損、電線の発火などの可能性が高まります。これらの危険を防ぐため、自動で電路を遮断するのが配線用遮断器の役割なのです。

遮断器にはほかに、IEC規格でEarth Leakage Circuit Breaker(略称ELCB)と表現される漏電遮断器があります。
漏電遮断器は、電気が電路の外に漏れ出てしまう現象(漏電)を検知して遮断することで感電や火災、機器の損傷を防ぎます。

配線用遮断器と漏電遮断器は、電路を遮断し事故を防ぐことは共通しています。しかし、検知する電気的異常の種類が違うのです。

配線用遮断器の選定方法

次に、配線用遮断器の選定方法について紹介します。

幹線の配線用遮断器は、以下の計算によって求められる容量の機器を選定するのが一般的です。

  • 遮断器定格電流 ≦(電動機定格電流の合計×3)+ 他の機器の定格電流の合計

分岐回路の場合は、上記の計算に加え、次の条件を満たすよう選定します。

  • 配線用遮断器は 40℃の周囲温度を基準として調整されているので、盤内の最高温度が 40℃を1℃越えるごとに 1%ずつ負荷を軽減させる。
また、これらの条件を満たしたうえで、電圧の変動、周波数の変動、連続使用や機器劣化による負荷増大などを考慮して10~15%の裕度(許容できる範囲)を設けるのが一般的です。

配線用遮断器を使用するときの注意点

配線用遮断器を使用する際には、次のような点に注意しましょう。

  • 取り付けと接続の向き
    配線用遮断器は、縦向きに設置・取り付けするのが一般的です。その際、上部から電源を接続、下部から負荷へと接続するようにします。一部には、横向きで取り付けできるように設計されている配線用遮断器もあります。こういった機種を選定することで、分電盤内部のレイアウト設計に自由度が増し、盤を小型化することが可能です。
    配線用遮断器は標準取り付け方向での使用を基準に設計されています。横向き使用可のもの以外は、角度を変えて使用することはできません。標準取り付け方向以外の角度で使用すると、作動する電流値が変化するおそれがあります。
  • 周囲温度による作動特性の変化
    配線用遮断器は周囲の温度により作動特性が変化します。40℃を基準として-10℃~60℃が使用可能範囲です。40℃以下の場合は、定格電流に対し負荷電流が90%以下として計算します。40℃~50℃の場合は80%以下、50℃~60℃の場合は70%と、対応できる負荷電流値が変化します。
  • 定格電流の範囲外での使用禁止
    接続される機器に対して、その定格電流の範囲外となる配線用遮断器を使用してはいけません。
    例えば、定格電流15Aの機器を20Aの配線用遮断器に接続した場合を考えてみます。このとき、15A超20A未満の電気が流れた続けた場合でも、配線用遮断器は遮断しません。その結果、機器の損傷、コードやケーブルの異常発熱による発火などの危険性があります。

配線用遮断器の持つ重要な役割に再認識を

配線用遮断器の役割と特性、選定方法と使用上の注意点について紹介しました。

配線用遮断器には、過負荷や短絡による過電流から回路を守る重要な役割があります。配線用遮断器の特性や使用の際の注意点を再確認し、使用中の機器が条件に適合しているか、今一度確認してみてはいかがでしょうか。

 

参考:


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