配線用遮断器の役割を「大きな電流が発生したときに、そこで電気の流れを止める装置」ととらえている人もいるかもしれません。もちろんそれも一つの役割ですが、配線用遮断器の役割や特性についてもう少し詳しく解説し、回路の条件によってどのような基準で選定すべきかを紹介します。
配線用遮断器の役割や特性について、ここで一度振り返ってみましょう。
配線用遮断器が「電路を遮断する装置」であることは知られています。しかしその役割は、単純にそれだけではありません。
日本電気技術者協会では、配線用遮断器について次のように定義しています。
「配線用遮断器は取扱いが容易で、操作ハンドルによって安全に電気回路の開閉が行え、規定以上の過電流で自動的に電路を開路するように設計製作された低圧電路用保護機器である。」(出典:公益社団法人 日本電気技術者協会)
規定を超える過電流が生じたときに電路を自動的に遮断するための保護装置、それが配線用遮断器です。
この役割を果たすために、配線用遮断器は複数の部品から構成されています。開閉機構とそれを作動させるための引外し装置、アーク放電を消滅させるための消弧(しょうこ)装置、電路を開閉する接触子などです。これらの部品が、絶縁性の高いモールドケースに収められた構造となっています。
配線用遮断器は反限時特性と呼ばれる特性を持ちます。これは、定格を超える電気が流れたときにその電流の大きさによって遮断動作時間が変わる特性です。
この特性により、生じる電流が大きければ大きいほど、瞬間的に配線用遮断器は動作します。
ただし、負荷の抵抗が変動したときや、電動機の始動時には、定格を超える電流が発生することがあります。このような短時間の過負荷電流では、不用意に遮断しないことも考慮された機能となっています。
IEC(国際電気標準会議)規格では、配線用遮断器はMolded Case Circuit Breakerと表現されており、これを略してMCCBまたはMCBと表記されることがあります。
ただし、MCBは「ミニチュアサーキットブレーカ」を意味する場合もあり、一般的に配線用遮断器にはMCCBが用いられます。
配線用遮断器が動作するのは、次のような場合です。
こうした状態が続けば電路が過熱し、電気機器の焼損、電線の発火などの可能性が高まります。これらの危険を防ぐため、自動で電路を遮断するのが配線用遮断器の役割なのです。
遮断器にはほかに、IEC規格でEarth Leakage Circuit Breaker(略称ELCB)と表現される漏電遮断器があります。
漏電遮断器は、電気が電路の外に漏れ出てしまう現象(漏電)を検知して遮断することで感電や火災、機器の損傷を防ぎます。
配線用遮断器と漏電遮断器は、電路を遮断し事故を防ぐことは共通しています。しかし、検知する電気的異常の種類が違うのです。
次に、配線用遮断器の選定方法について紹介します。
幹線の配線用遮断器は、以下の計算によって求められる容量の機器を選定するのが一般的です。
分岐回路の場合は、上記の計算に加え、次の条件を満たすよう選定します。
配線用遮断器を使用する際には、次のような点に注意しましょう。
配線用遮断器の役割と特性、選定方法と使用上の注意点について紹介しました。
配線用遮断器には、過負荷や短絡による過電流から回路を守る重要な役割があります。配線用遮断器の特性や使用の際の注意点を再確認し、使用中の機器が条件に適合しているか、今一度確認してみてはいかがでしょうか。
参考:
総合カタログ35
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